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第7章 聖魔大戦編
第103話 創造神との再会
しおりを挟む「さ、ここが僕の家なんだ。入ってくれ」
創造神は俺をとある家に案内してくれた。
その家はお世辞にも綺麗とはいえない見た目をしている。白い漆喰は所々はがれ落ち、苔が分厚く堆積している。ドアは年期が入っているのか、日焼けして真っ黒に変色している。
俺はなぜだか、創造神と話しをするため、招かれた。
因みにイクスの体は消滅し、人々の魂が全て解放された。これで、魔界の人達がリザレクションを使ってくれれば一度は死んだ兵士たちも息を吹き返すことだろう。
創造神の家はかなり質素なものだった。ビジネスホテル並みにものが少ないのだ。
部屋にはテーブルにイスが二脚。後はベッドが部屋の大部分を占めている。本当に必要最低限のものしかない。
「お茶でも飲むかい?」
創造神は気軽に声をかけながら、ティーカップを用意し、指をパチンと鳴らすと湯気を立てたお茶が空中から現れるのだった。
「それで、俺に話しというのは……」
「あぁ、そのことなんだがね? 最近は物騒になったと思わないかい?」
創造神は注がれたお茶を俺の前に出した。
「えぇ、確かに。俺がこの世界に招かれてからというもの、戦いの連続で……、正直に言うと、もう少しユックリしたいかな、とは思ってます」
「ふむ、実は僕はね、神達が簡単には地上に手を出せないように見張る役目を負っていたんだ。そのせいで他の神々は僕の事を調停の神と呼んでいるんだけどね」
「調停の神……、そんな神様がいるんなら俺は戦わなくてよかったってことですか?」
自分のやってきた事が無駄だった、なんて思いたくもないぞ?
「まぁまぁ、焦らないでくれ。実は僕の力が年々弱くなってしまってね。残念ながら神にだって寿命があるんだ」
創造神は目を伏せながら言った。
「創造神さまが調停しきれずに俺が戦っていたってこと?」
だとしたら結構この世界はやばいんじゃないだろうか? 色んな世界で神たちが暴走し始めたらとんでもないことになるのは目に見えている……。
「あぁ、それで僕は考えた。僕の最大の力を見込みのある者に譲ってから死のうとね。それが君だったんだ」
ん? 今なんて言ったんだ? 力を……譲る?
「え? ……力って? もしかして……」
「そりゃもちろん、神聖魔法のことさ。役にたっただろう? 実際にソウ君は生きてここまで来れたじゃないか!」
「えぇ、それは……まぁ、頑張りましたからね」
「そうなんだよ! この神聖魔法はね、死なないようになんとか出来るってのが一番の特徴でね! 勝つことは出来なくても負けることもないのさ! ちなみに、僕は他の神に勝ったことなんてほとんど無いんだけどね!」
創造神はウィンクしながら得意そうに宣った。
「いや、そんな自慢されても……って! 勝ったことないのかよ! それでどうやって調停なんてしてたのさ?」
「簡単さ! ずっと自分にヒールを掛け続ける。そして!」
お? 続きがあるのか?
「相手が諦めるのを待つ!」
「おいっ! それじゃただ痛いだけじゃないか!」
創造神さまに遠慮なく突っ込んでしまう。
「うむ、とっても痛いんだよ! だけどね、僕はこの数十億年もの間、こうして世界を保ってきたんだ! そして今、君という逸材を後継者として発見した。もう心残りはないんだよ」
な、なんて神だ。神なのにドMなのか?
「あ、そうだ。僕から最後のプレゼントだ。これを受け取ってくれたまえ!」
創造神が俺に手をかざした。俺の体が真っ白に光り輝き、新たな力が加わったような実感が湧き起こる。
「ふぅ、これで……全て終わったよ。そろそろ僕にもお迎えが来たようだ」
「えっ! 急すぎません?」
「いや、こうなる運命だったんだ。僕に後悔はないよ」
創造神の声はトーンが低くなり、俺まで暗い気持ちになってきてしまう。
「運命って、そんな!」
「いいかい? 僕の力はこれで全て君に譲ったことになる。では、僕はこれで……」
創造神は視線を伏せ、力なく言った。
「そんな、俺はこれからどうすれば?」
「君は今のままでいい。この世界の紛争を君が思うままに解決してくれれば、それで……。さ、時間だ。僕は行くよ」
創造神は家のドアを開けた。そこに待ち受けていたのは……、
「あら? 創造神さま。お待ちしてましたよ! さ、行きましょう?」
「きゃー! 創造神様! 早く早く~!」
黄色い声援が飛び交い、見目麗しい人たちが目に写る。
大きなバスが家の前に停まっており、その中からボインな天使たちがそうに向かって手を振っているのだ。しかもバスの前にはご丁寧に行き先まで書いてある。
「天使たちと行く神界温泉ツアー」
「え? 迎えが来たって、温泉行くの?」
驚きの光景に我が目を疑ってしまう。
「あれ? 言ってなかったっけ? 僕の寿命もあと一億年しか残っていなくてね。最後くらいユックリしたいのさ! あ、この家もあげるから好きに使ってくれたまえ! じゃ、後はたのんだよ!」
創造神は俺の肩をポンポンと叩き、ぐっと親指を立てるジェスチャー。
「ふ、ふ、ふざけるなぁ!!!」
俺の絶叫も虚しく、創造神はすぐにバスに乗り込んだ。バスはあっという間に消え去ってしまい、俺の視界にはもう何も残っていない。
「あ、あの野郎! 面倒くさい仕事を俺に押し付けて、天使たちと温泉旅行だと!……なんて羨ましいんだ!」
俺は誰もいない所に向かって、本心ダダ漏れに叫ぶことしか出来ないのであった。
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