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第7章 聖魔大戦編
第88話 エルガの実力
しおりを挟む「ふーん、ソイツが魔族で一番強いって奴か!」
リーダーはエルガを見るなり、実力を把握するべくジロジロと体つきを眺める。
「よかったら僕とも手合わせしてみないか?」
あ、バトル脳のエルガにそんなこと言ったら……、
「ふっ、いつでも相手になろう。今でも構わんぞ?」
「待て待て待て待て! 今はそんなことをしてる暇なんてないんだ! リーダーも煽らないでくださいよ!」
あわてて二人の間に入り、止めに入る。
「冗談だよ、ソウ君と霞が認めてる時点で強さは保証されてるしね。では改めて。アルティメットハンターズのリーダー、リズだ。よろしく」
「お主がリーダー?」
エルガは片目を見開いて聞き返す。
「あ、ほら、見なよ? ソウ君! これだから最初に力を見せたほうが早いのに。なんなら今からでも構わないよ?」
リーダーの体から魔力が溢れ出す。
エルガはその魔力を見ると口角を上げた。
「……クックック。面白い!」
「ちょっと待って、二人とも魔力を出すのはやめ……」
「いいじゃない、ソウ。やらせたほうが早いわ。ほら二人とも結界張るからその中で暴れてらっしゃい」
出てきたのは霞さんだった。せっかく二人を止めようとしたのに、暴れる場所まで作っちゃったらもう……。
二人は意気揚々と結界の中へ入っていく。
やむを得ないか……。時間が少しでも惜しいが、お互いの実力を知っておくのも重要だ。ここは目を瞑るしかないな。
「二人とも、回復魔法は無しで、制限時間一時間でどうだ?」
俺は闘いを止めるのを諦め、二人に声をかけた。
「それでいいよ! この筋肉ゴリを倒すには充分だからね!」
「胡散臭い子供だ。俺の力、思い知らせてやろう!」
リーダーはアイテム袋から引き締まった木刀をだした。
一方、エルガは拳に闘気を纏わせ、顔の前に拳を構える。
「姉さんとエルガ。剣と拳。果たしてどちらが勝つと思う?」
霞さんはにこやかに笑いながら俺に聞いてくる。
「それは意地悪な質問だな。以前のエルガだったらリーダーが勝つのは間違いなかっただろう。けれど、今のエルガからは強者の闘気が感じられる。俺には想像がつかないよ」
「あら、そう? 私は姉さんかな。一目見たときに確信したわ。あの人負けず嫌いだから、ソウ君に負けまいと相当な訓練したらしいわよ?」
「リーダーもさらに強くなってるんですか!」
そうこう言っている内に二人は激突した!
ズバァァァン!!!
耳をつんざくような轟音が辺りに轟いた。
リーダーは素早い動きで回り込みながら剣を打ち込んでいく。
エルガは対照的にあまりその場を動かない。だが、確実にリーダーの剣を拳で弾くように受けている。
リーダーは連撃を放った。エルガはその場を動かず、その全てを受けきっていく。
「エルガはリーダーの剣がよく見えてる。最小限の動きだけであの猛攻を弾くとは……」
「ほらっ、まだまだ行くよっ!」
リーダーは容赦なく剣戟を浴びせていく。まともに入れば一発で戦闘不能になってもおかしくない程の攻撃だ。
一方で、エルガにも変化があった。受けだけでなく、受けながら攻撃を仕掛ける。エルガの攻撃は離れていても関係ない。拳自体が当たらなくとも、拳に纏った闘気を放つことで、射程の長い攻撃が可能となっている。リーダーが躱した後には地面がベッコリと凹みを作っていた。
「エルガの動き、さすがだな。攻撃を受けつつ、その動作が攻撃の初動も兼ねている。
超一流の武道家の攻撃はどこから打たれたのか分からないほど巧妙にしかけるものだが、エルガの攻撃がまさにそれだ。
リーダーの放った剣の陰から拳がすり抜けるように攻撃しているな」
俺が感心していると、エルガの攻撃がリーダーに襲いかかる。リーダーはかろうじて顔を避け、エルガの闘気が肩に刺さった。
「むっ? 肩に入ったか! リーダーの剣に影響がでるぞ!」
「それはお互い様のようよ。姉さんの攻撃もエルガに刺さってるわ!」
俺は目を疑った。リーダーはエルガの攻撃を喰らい、肩にダメージを負った。が、エルガもリーダーの攻撃で肩を抉られていたのだ。
「リーダー、いつの間に攻撃を当てたんだ?」
「カウンターよ。エルガの拳に合わせてね」
霞さんは簡単に説明するが、事は単純ではない。エルガはカウンターを取るように動いている。リーダーがやったのはカウンターのカウンターだ。
リーダーのことだ。エルガがやっていることは自分も出来るとアピールしたのだろう。
二人はさらに打ち合っていく。
俺は握りこぶしを作りながら、そのファイトに目が離せなくなっていた。
ようやく、激しい打ち合いが終わる頃には、二人の体はアザだらけになっているのだった。
「そろそろ、1時間よ!」
ただ一人、冷静だった霞さんが告げる。
「ふぅ、結構きたえたつもりだったんだけどな。倒しきれないなんて……、やるじゃないか!」
「まさか、俺のカウンターを見ただけでマネされるとは思わなかった。ただの木刀でこの威力、その素質……認めよう」
お互いが認め合うように握手し、健闘を称え合った。
「さて、それじゃ作戦会議でもしましょうか? ソウ、二人にヒールをかけてあげてね」
「えぇ、もちろん!」
俺は二人を癒やし、四人で作戦を練るべく、会議を始めるのであった。
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