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第7章 聖魔大戦編
第84話 勇者との闘い
しおりを挟む魔王城の屋根に登り、周りを見渡す。
「ん~、どこに魔王軍が駐留してるんだ?」
目を凝らし、じっくりと観察していると、東の方向に光が見えた。
「ん? あれは、もしかして……」
東をよ~く見るといくつもの光がチラチラと輝く。
あれか! いそげ、もう、戦闘が始まってるんだ!
俺は屋根を飛び跳ねながら全力疾走で東を目指すのだった。
*
「くらえっ! フレアー!」
魔王の放つ上位火炎魔法は辺りの木々を巻き込み、燃やし尽くしていく。
しかし、黒いオーラは消えることがなかった。
「ふん、なかなかやる。お礼に真の炎を見せてやろう。黒き龍よ、燃え上がれ! 黒龍炎激波!」
金色に輝く鎧を身に纏った男は両腕を前にだすと、二匹の魔法の龍が形作られていく。黒い龍が口を大きく開けると、飛びかかってくるように腕から放たれた。
「くっ、なんて魔力だ!」
魔王は度重なる戦闘でMPの底が尽きそうになっていた。この黒龍炎激波を防ぐ余力がない。
「いかん、魔王様をお守りするのだ!」
魔王の周りに控えていた者達が一斉に前に出た。
「「「バリヤー!!!」」」
二十人を超える人数によるバリヤーはこれまで、誰にも破られることはなく、強大なドラゴンのブレスにすら耐えきった代物だった。
「フハハハハハ! その技はすでに見切っておる! 魔王共々、地獄へ行くかいい!」
金色鎧の男が放った黒龍二匹が絡み合っていく。そして、一匹の龍になり、その先端が限りなく細くなって、バリヤーに激突した。
ズガアアアアアアッッッ!!!
バリヤーがあっという間に十枚も砕かれ、残りのバリヤーもバリン! バリン! と音を立てながら一枚、また一枚と割れていく。
「まずいですじゃ、これ程にバワーアップしてきたとは!」
初老のガタイの良い男が目を見開く。
魔王は既に戦えず、部下の力を総動員したバリヤーも今、まさに砕けちろうとしている。
「くっ、せめて魔王様だけでもこの場から逃げてもらわねばならぬ!」
初老の男は魔王の前に立ち両腕を広げた。
「逃げるのじゃ! 市長!」
「魔王様、後をお願いしますぞ?」
「市長! ならん! そこをどくのじゃ! バリヤーがもう破られる!」
バリン! バリン!
バリヤーの砕ける音がもうすぐそこまでせまっている。
「クッヒャッヒャッヒャッヒャ! 二人まとめて黒焦げにしてやるぜ! フルパワーだ!」
金色鎧の男から黒く太いエネルギーが黒龍に注ぎ込まれる。龍が吠えた。
「キョエエエエエッッッ!!!」
より強大な力を得た龍はついに最後のバリヤーを突き抜けた。
「さらばですじゃ、魔王様」
「キャアアアアア!!! お願い! 旦那様~~~!!!」
黒い龍が市長を貫く直前、市長は白いオーラの塊に横から突き飛ばされた。
ズガガガガガッッッ!!!
爆音が轟き、爆風が吹き荒れ、爆炎が空高くまで燃え上がった。
「やった! ついに憎き魔王をこの手で葬り去ったのだ! クッヒャッヒャッヒャッ!」
勝利を確信し、高笑いをする金色鎧の男。
爆発の煙が晴れていく。
「骨も残ってねぇだろうが、一応、確認しておくか……、あんっ?」
晴れていく煙の中、市長と魔王の姿が見える。
「なんだと?! ばかな!俺の黒龍炎激波を喰らって生きてやがるだと? それに、てめぇは誰だ!!」
市長と魔王の前にはスーツを着た日本人らしき男が立ちはだかっているのだった。
*
「だ……、旦那さま?」
「レイ、それに村長。待たせたね」
「全く、驚きましたワイ! ソウ様っ! 来てくださったとは!」
村長の目には涙が浮かんでいた。
「すまない、話はあとだ。あの金色の奴が、勇者、なのか?」
「あぁ! そうじゃ! 妾たちの魔界にいきなり攻め込んできよった、略奪者よ!」
「村長、レイと皆を安全な所へ」
「ですが、ソウ様! 我々も……」
「すまないが、奴は俺に譲ってくれ。なぁに、大丈夫。俺はあの魔神にも勝利した男なんだぜ? 心配はいらないさ」
村長は頷き、レイを背負ってこの場を離脱した。
さて、勇者とやらの実力、拝ませてもらおうか!
勇者は素早い動きで斬りかかってきた。ジャンプしながらの上段斬りだ。
ふむ、太刀筋はが鋭いな。よほど剣の扱いに長けた者なのだろう。
ホーリーソードで受け止めると、鍔迫り合いの形になった。
勇者の剣は相当な業物であることは間違いないな。神聖魔法のレベルがカンストしている俺とやり合うことが出来るとは……!
だが、これだけではまだ情報が足りないな。
残像を残し、その場を離脱。勇者の後ろから切りかかっていくが、勇者は振り向きもしなかった。俺のホーリーソードを後ろを向いたまま上段に受け、そして、横に反らした。
「そこだっ!」
勇者はここぞとばかりに連撃を放ってきた。
初撃をいなされ、体制を崩されたが、なんとか持ちこたえ、勇者の連撃を受けていく。
「な、なんだ? このやりづらさは……」
正直なところ、勇者とはいえ、まだレベルは5000前後かと思われた。だが……とにかくやりづらいのだ。
なんだ? この違和感は……。
「クヒヒッ! オメェの動き、見切ったぜ。今度は外さねえ!」
勇者が魔力を練り、オーラのように体に纏った。
あれは……、身体強化魔法か!
その瞬間、勇者の姿が消える。
「くっ! 速い!」
勇者の動きからかろうじて動作を予測し、動くことによって受けが間に合った。
ギィィィィィン!!
「へぇ、やるじゃねえか! もっと楽しませろ!」
勇者の猛攻が続く。俺はバリヤーを多重に張り巡らせ、なんとか防いでいく。
だが、違和感がずっと消えない。なぜだ? 俺の動く先がわかっているかのように攻撃をしてくる勇者。なぜ、勇者は俺の動く先を攻撃してくるのだ?
俺の動く先がわかっているとでも言うのか?
まずは距離を取らねば! ヘルファイアー!
巨大な黒い炎の炎柱が立ち上り、勇者を中心に辺りが燃え上がる。もちろん、こんな攻撃で勇者を倒せるだなんて思っちゃいない。この隙に大きく後退した。
鑑定!!!
勇者のステータス。見せてもらおうか……。
名前 REN
職業 勇者(洗脳、混乱状態)
レベル 4800
むぅ!!! REN? RENだと? 俺の知っているRENだとでもいうのか?
俺にはかつてライバルと呼べる存在がいたのだ。そのプレイヤーは後にプロゲーマーとして活躍した男、RENと名乗っていた。
ファンタズムスターズの運営後期にはチームメイトとして行動を共にしたこともある男。
そして、俺とは最後の最後まで1体1のバトルモードで覇権を争い続けた男でもあった。
「RENという名前、俺の知っているRENなのか? おまえは?」
黒い炎の中を平然と歩み寄ってくる金色鎧の男。そして、奴は兜を脱ぎ、目を覆い隠していた仮面を外す。
俺はバケモノじみた強さに納得がいった。仮面の下に現れたその顔。忘れるはずがない。RENの顔だったのだ。
彼に直接会ったことはない。だが、彼はプロゲーマーとして活躍したため、ネットに顔が出ることが多かったのだ。
RENの目は赤く光り、口からは黒い瘴気のようなものを吐き出す。
「ううぅ……、もっとだ。もっと俺を楽しませろ! この世界に強者はいないのか! 俺はこの世界で最も強い男になるのだ!」
REN……。
「すっかり正気を失いやがって……」
俺はアイテム袋からリーダー謹製の刀を抜いた。
本気でぶつからなければ、あの勇者RENを倒すことなど出来るわけがない。
俺は刀に魔力を込め、勇者に相対するのであった。
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書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。
全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。
下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
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