上 下
84 / 219
第7章 聖魔大戦編

第83話 新魔王城の発展

しおりを挟む


 俺は新しい魔王城を見下ろせる高台に、足を下ろした。

 最後に魔界を去ってからまだ一年も経過していない。

「ん? な、なんだ。ありゃ?」

 だが、目の前の光景は俺を大いに驚かせた。

 俺と魔神の闘いで破壊された元魔王城の代わりに、辺境の村だった所が新魔王城として使わ始めたれのだが……。

 新魔王城は凄まじい高さまでそびえ立つ城塞となっていた。高い塀に囲まれた中にはところ狭しと町が並んでいる。

 そして、城の外はのどかに畑や牧場がどこまでも続いており、巨大な都市の食料を担っているのだろう。

 正直、これほどの美しい都市は見たことがない。

 畑の中にある街道を歩いていると、農夫や、牧人の笑顔が見える。

「これほどの町造り。さぞや大変だったろうな」

 じぶんが関わった町が発展するのはなんとも気持ちがいいものだ。

 ところがだ。

 城の門から入る列に並び、順番を待っていたのだが……。

「え? お金持ってないの? それじゃここは通れないよ?」

 城下町へ入るには、通行料が必要らしい。なんでも銅貨三枚ということなんだが、俺がそんなお金を持っているわけがない。

「なんとかならないかな? 魔王か村長に話しを通して貰えれば分かってくれるはずなんだ」

「おいおい! ま、魔王様をそんな呼び方するんじゃない! 不敬罪で捕まりかねんぞ? それに村長ってなんだ? この魔王城にそんな田舎者がいるわけないだろう」

 なんとも至極まっとうな返答とともに追い返されてしまった。

「まいったな」

 城の門番にも見覚えのある者はいない。

 こりゃ忍び込むしかないか。

 俺は正面から入るのを諦め、城を見学するフリをして歩いて回ってみる。

「うーむ、どこか警備が薄そうな所はないかな……、お? あそこなら誰も見張りがいないな!」

塀が一番高くなっている所があり、塀に弓を放つ窓が並んでいる所には見張りが見当たらない。

 俺はここだとばかりにジャンプし、塀の上に降りようとすると、何やら白い膜があった。

 ぬ? これは俺が教えたバリヤーか? 仕方ない、少しばかりこじ開けて、と……、

 その瞬間である。

「ピィーーーッ! ピィーーーッ! 侵入者アリ! 侵入者アリ! 迎撃セヨ!」

 けたたましく鳴り響く警報音。瞬く間に集まる警備員達。俺が塀に降り立つ頃には数十人の警備員に囲まれ、動けなくなってしまった。

「あちゃ~、失敗したな」

 諦めてうなだれていると、警備兵に手錠までかけられてしまい、俺は地下の牢屋に繋がれてしまうのであった。



   *



 ふぅ、どうしたものかねぇ。

 手に付けられた手錠は何時でも破壊することが出来る。しかし、この魔界は魔王であるレイと村長達が作った町だ。なるべく騒ぎを起こしたくなかったのだ。

「せめて取り調べで、知ってる人がいればいいのだけどな……」

そんな期待を裏切るように、毛深いおっさんの魔族がやってくる。

「貴様か、我が城の結界を破るとは、全く面倒なことをしてくれる。しかも人間となれば生かしてはおけん。すぐに刑の執行がなされるだろう」

「人間だとまずいのか?」

「おいおい、とぼけるのもいい加減にしろよ? 攻めてきたのはそっちじゃねぇか! 全く人間ってのは欲深い」

 おっさん警備員が舌打ちをする。

「すまんが、ここに来たばかりでね。最近の事情は知らないんだ。詳しく教えてくれないかな?」

「あぁん? こんな大事になってるってのに知らねぇだと? お前ら人間が、俺達の土地が豊かだからって奪いに来てるんだぞ? 始めの頃は貿易とか言ってたが、それはこちらを偵察するだけの口実だったってわけだ」

「そんなことが? 魔界に被害はでたのか?」

「いや、今のところは魔王様とその騎士団が抑えてる。だが、奴らは勇者なんて奴を投入してきやがった」

「勇者……か」

「あぁ、最初はてんで弱かったみたいだが、何度か闘ってるうちにメキメキ強くなってきやがっらしい。化け物め」

「そうだったのか」

「だからオメェにかまってるヒマなんてねぇのさ。だから裁判もない。すぐに死刑ってことだ。運がなかったと思って諦めるんだな」

 警備員は警棒を手にバチンと当て、刑の執行を待っているようだった。

「すまないが、その魔王に用があってね。今はどこにいるんだい?」

「あぁん? それを知ってどうする? まさか会いに行くとか思ってんのか? 魔王様はこの城を留守にしていらっしゃる。勇者を迎え撃つためにな。だからオメェは会うことなんて出来ねぇよ!」

「そうか、それだけ聞ければ充分だ。ありがとう」

 目の前にある図太い鉄の棒を持った。

「あぁ? 何してやがる。その魔鉄製の金棒は普通の金属じゃねぇ。壊すにはレベル7000は必要な代物だ。オメェさんが壊すにゃ無理ってもんだ」

 警備員はニヤリと笑う。

「生憎だか……、俺はレベルがカンストしてるんだ。こんなもので俺を止めることなんて出来ないのさ」

 一気に鉄棒を広げると、グニャリと曲がり、手錠も弾け飛んだ。

「う……、うそ……だろ……?」

 警備員はベタンとその場に腰が砕けるように転んだ。

「情報ありがとう。大丈夫、俺は魔王の味方なんだ。つまり、君の味方でもある。悪いことはしないから安心してくれ」

俺は腰を抜かした警備員をそのままに、城の外、魔王のいる場所を目指すのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜

福寿草真
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】 何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。 魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!? これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。 スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素
ファンタジー
 アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。  これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。  そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。  のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。  第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。  第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。  第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。  第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。  1章20話(除く閑話)予定です。 ------------------------------------------------------------- 書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。 全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。 下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

処理中です...