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第7章 聖魔大戦編

第83話 新魔王城の発展

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 俺は新しい魔王城を見下ろせる高台に、足を下ろした。

 最後に魔界を去ってからまだ一年も経過していない。

「ん? な、なんだ。ありゃ?」

 だが、目の前の光景は俺を大いに驚かせた。

 俺と魔神の闘いで破壊された元魔王城の代わりに、辺境の村だった所が新魔王城として使わ始めたれのだが……。

 新魔王城は凄まじい高さまでそびえ立つ城塞となっていた。高い塀に囲まれた中にはところ狭しと町が並んでいる。

 そして、城の外はのどかに畑や牧場がどこまでも続いており、巨大な都市の食料を担っているのだろう。

 正直、これほどの美しい都市は見たことがない。

 畑の中にある街道を歩いていると、農夫や、牧人の笑顔が見える。

「これほどの町造り。さぞや大変だったろうな」

 じぶんが関わった町が発展するのはなんとも気持ちがいいものだ。

 ところがだ。

 城の門から入る列に並び、順番を待っていたのだが……。

「え? お金持ってないの? それじゃここは通れないよ?」

 城下町へ入るには、通行料が必要らしい。なんでも銅貨三枚ということなんだが、俺がそんなお金を持っているわけがない。

「なんとかならないかな? 魔王か村長に話しを通して貰えれば分かってくれるはずなんだ」

「おいおい! ま、魔王様をそんな呼び方するんじゃない! 不敬罪で捕まりかねんぞ? それに村長ってなんだ? この魔王城にそんな田舎者がいるわけないだろう」

 なんとも至極まっとうな返答とともに追い返されてしまった。

「まいったな」

 城の門番にも見覚えのある者はいない。

 こりゃ忍び込むしかないか。

 俺は正面から入るのを諦め、城を見学するフリをして歩いて回ってみる。

「うーむ、どこか警備が薄そうな所はないかな……、お? あそこなら誰も見張りがいないな!」

塀が一番高くなっている所があり、塀に弓を放つ窓が並んでいる所には見張りが見当たらない。

 俺はここだとばかりにジャンプし、塀の上に降りようとすると、何やら白い膜があった。

 ぬ? これは俺が教えたバリヤーか? 仕方ない、少しばかりこじ開けて、と……、

 その瞬間である。

「ピィーーーッ! ピィーーーッ! 侵入者アリ! 侵入者アリ! 迎撃セヨ!」

 けたたましく鳴り響く警報音。瞬く間に集まる警備員達。俺が塀に降り立つ頃には数十人の警備員に囲まれ、動けなくなってしまった。

「あちゃ~、失敗したな」

 諦めてうなだれていると、警備兵に手錠までかけられてしまい、俺は地下の牢屋に繋がれてしまうのであった。



   *



 ふぅ、どうしたものかねぇ。

 手に付けられた手錠は何時でも破壊することが出来る。しかし、この魔界は魔王であるレイと村長達が作った町だ。なるべく騒ぎを起こしたくなかったのだ。

「せめて取り調べで、知ってる人がいればいいのだけどな……」

そんな期待を裏切るように、毛深いおっさんの魔族がやってくる。

「貴様か、我が城の結界を破るとは、全く面倒なことをしてくれる。しかも人間となれば生かしてはおけん。すぐに刑の執行がなされるだろう」

「人間だとまずいのか?」

「おいおい、とぼけるのもいい加減にしろよ? 攻めてきたのはそっちじゃねぇか! 全く人間ってのは欲深い」

 おっさん警備員が舌打ちをする。

「すまんが、ここに来たばかりでね。最近の事情は知らないんだ。詳しく教えてくれないかな?」

「あぁん? こんな大事になってるってのに知らねぇだと? お前ら人間が、俺達の土地が豊かだからって奪いに来てるんだぞ? 始めの頃は貿易とか言ってたが、それはこちらを偵察するだけの口実だったってわけだ」

「そんなことが? 魔界に被害はでたのか?」

「いや、今のところは魔王様とその騎士団が抑えてる。だが、奴らは勇者なんて奴を投入してきやがった」

「勇者……か」

「あぁ、最初はてんで弱かったみたいだが、何度か闘ってるうちにメキメキ強くなってきやがっらしい。化け物め」

「そうだったのか」

「だからオメェにかまってるヒマなんてねぇのさ。だから裁判もない。すぐに死刑ってことだ。運がなかったと思って諦めるんだな」

 警備員は警棒を手にバチンと当て、刑の執行を待っているようだった。

「すまないが、その魔王に用があってね。今はどこにいるんだい?」

「あぁん? それを知ってどうする? まさか会いに行くとか思ってんのか? 魔王様はこの城を留守にしていらっしゃる。勇者を迎え撃つためにな。だからオメェは会うことなんて出来ねぇよ!」

「そうか、それだけ聞ければ充分だ。ありがとう」

 目の前にある図太い鉄の棒を持った。

「あぁ? 何してやがる。その魔鉄製の金棒は普通の金属じゃねぇ。壊すにはレベル7000は必要な代物だ。オメェさんが壊すにゃ無理ってもんだ」

 警備員はニヤリと笑う。

「生憎だか……、俺はレベルがカンストしてるんだ。こんなもので俺を止めることなんて出来ないのさ」

 一気に鉄棒を広げると、グニャリと曲がり、手錠も弾け飛んだ。

「う……、うそ……だろ……?」

 警備員はベタンとその場に腰が砕けるように転んだ。

「情報ありがとう。大丈夫、俺は魔王の味方なんだ。つまり、君の味方でもある。悪いことはしないから安心してくれ」

俺は腰を抜かした警備員をそのままに、城の外、魔王のいる場所を目指すのだった。


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