57 / 219
第5章 巨獣人の里編
第56話 リーダー
しおりを挟む「いいかっ、リドリー共! 大人しく出てこい! さもなくば、こいつらを一人ずつ喰い殺してやるわ!」
やれやれ、なんて奴だ。品性の欠片もない。
洞窟から歩いて出る。奴は当然、見逃すはずがない。
そうだ、俺に注目しろ。わかりやすく出てきてやったんだ。
「き、貴様はさっきの! ぬうぅぅぅ、今度こそ踏み潰してやるわ!」
巨獣人は足を挙げて降ろしてくる。
まったく、これしか出来ないのか? 芸のない奴だ。
”俺の姿”を奴は踏み潰した。そして執拗に足をグリグリと左右に振る。念入りに潰すように。
「ギャーハハハ!! ざまぁみやがれ! この俺様に逆らった奴はみんなこうなるんだよ! ギャーハハハハ!」
「やれやれ、知能がかなり低いようだな。話にならん」
「むうぅ!?」
奴が踏み潰したのは俺の残像。本体は木の枝の上だ。
「全く見苦しい。俺の残像を踏んで喜ぶ様なんか滑稽もいいところだ」
「な、なにをう! いいか、動くなよ? 少しでも変な動きをしたらこのリドリーを握り潰してやる!」
「はぁ~~~、こんな奴と会話しようと思った俺がバカだった。いいか? 今すぐその人を下に置け! そうすればこの場は見逃してやろう。だが、俺の言うことを聞かないならば地獄を味わわせてやる!」
「ギャーハハハハ! 面白いギャグだ! お前等リドリーに何が出来る! 俺様に命令など百万年早いわ!」
ふぅ、言ってわからん奴には実行あるのみ。
「そうか、では楽には死ねんぞ!」
奴の首へ一直線に飛び、ホーリーソードを一閃した。
「あん? どこへ行った? 後ろか?」
奴の体が後ろを向こうとした。だが首から上だけはそのままで体だけが後ろを向いた。
「あぁ? どうなってやがる。後ろを向けねぇじゃねぇか?」
そして奴が頭に手を当てると……
頭部だけが押されたようにズレていく。
「あぁーーーっ! どうなってやがんだーーー!」
ズズゥンと音を立てて奴の頭が落ちた。そして、奴の体は立ったまま硬直していた。
悠々と奴の腕に飛び乗り、握られていた男を救出する。
「ああっ、アンタ! 無事だったんだね!」
「おお、エリザ。すまなかった。心配させてしまって」
二人は涙を流しながら抱き合う。
「本当になんとお礼をしたらよいものか……」
「本当に、本当にありがとう。君のお陰で命を救われた! この礼は必ず、一生かけても返すよ!」
二人からお礼を言われる。だが、俺にはまだやることが残っているのだ。
「すまないが、すぐに洞窟へ避難していてくれ」
「うん? 巨獣人はもう倒したじゃないか。まだ危険なのかい?」
「あぁ、ちょっと実験したくてね」
二人は去った。
さぁ、実験だ! これだけ大きな獣人だ。経験値もそれなりに入るはずだ!
「リザレクション!」
時が巻き戻るかのように巨獣人は生き返った。
「あ? あで? 俺は……一体」
「俺が生き返らせたんだ」
「お、おめぇは! やろぉ! 今度こそ叩き潰して……ぶへっ!」
あんまり五月蠅いから奴の顔にヘルファイアーを放つ。
「ギャアアアアッッッ!!!」
あ、ヘルファイアーだけで燃え尽きた。なんて脆い奴だ。
レベルはと……、
ふーむ、お? 闇魔法が1上がってる! 闇魔法が7128だ!
こりゃいいぞ。コイツ、弱いくせに経験値いっぱい持ってるんだ!
体の底からクツクツと笑いがこみ上げ、体が上下に揺れる。
「ツイてる。めちゃくちゃツイてる! こんなラッキーもうないかも知れん! やったー! 今日から目一杯レベル上げだ!!! ヒャッハー!!!」
「リザレクション!」
あ、奴は起きると五月蠅いから頭部をバリヤーで囲んで防音仕立てにしてみた。
「もがっ、もがもがっ!」
頭部を薄くバリヤーで覆い、空気の流れを遮断したのだ。これで奴の鬱陶しい声も聞こえない!
後は、邁進するのみ!!
俺の闘いが始まった。そう! レベル上げ周回だ! 一体、何周するのか、想像もつかない。この千載一遇のチャンス、モノにしてみせる!
ひたすらに続く作業。もう三時間は繰り返しただろうか。俺のことを心配した人達が、目を丸くして様子を見ている。リザレクションから倒すまで五分とかからない。だが、俺の頭はすでにぼーっとしてきた。ここからだ! ここからがキツくなってくる。ここを乗り越えれば、精神的にハイになってまだ続けていけるんだ!
十時間が経過した。もう辺りは暗くなっている。周りには人だかりも出来て、俺について話しているようだ。だが、俺には関係ない。レベルは順調に上がっているのだ!
それから二日が経過した。俺はレベルの上がりにくくなった闇魔法から風魔法へ切り替えた。闇魔法は8300となった。まぁまぁだな。
そして始めてから一週間が過ぎた。風魔法も8350。調子が乗ったので少しやり過ぎただろうか? うぅむ、これ以上は千回倒しても1すら上がらなさそうだ。事実上の打ち止めだろう。
ならば! 闇魔法も8350まであげておこう! うむうむ、そうだ。この調子だぞ!
レベル上げを始めてから十日が経過した。今では洞窟の人々と気楽に挨拶をしながらレベル上げをするようになっていた。
そしてついに! 闇魔法も8350まで上がったのだ!
やった、やったぞ! こいつを倒すこと十日間。目標コンプリートだ!
「やれやれ、やっと終わったかい?」
聞き慣れない女性の声だ。誰だろう?
振り返ると金髪ツインテールの美少女が立っていた。
「ボクはリズ。この洞窟のリーダーさ」
「え?! 君がここのリーダーなの?」
見た目は幼さの残る女学生といったところ。どう見ても十代後半くらい。そんな彼女がここのリーダーなのか? あの刀すら創ったっていうのか?
頭がこんがらがる。あんな女の娘が一体どうやってあれほどの知識と技術を……。
あまりの不思議さに頭を捻ってしまうのだった。
10
お気に入りに追加
243
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
異世界転生チート貴族~転生したので貰った領地を召喚したクラスメイトと共に営んでいこうと思う~
コンリ
ファンタジー
何も代わり映えのない日常を過ごしていた神谷晴翔。ある日信号を無視した中学生を助けた代わりに死んでしまい神様からチート能力を貰って貴族の家に産まれる。すると10年後自身が貴族になり仲間と共に領地を経営することになる。2話目までは説明的なのですが3話目から本編です。題名は変わるかもしれませんがこれでできるだけ固定します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる