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第2章 更なるレベルアップへの道のり
第14話 オーク掃討戦
しおりを挟む「あっ、あった。これよ!」
森に入ってからというものの人が変わったように笑顔で歩き回っている。
「このローグ草はね、根にも薬効があるのよ! ちょっと苦いんだけどね」
ウットリした表情で草の根を優しく持ち、愛おしそうに袋へしまっていくミーナ。
な、なんだ? いったい目の前のはさっきの機嫌の悪いエルフと同一人物なのか?
「あっ、あっちにもあったわ!」
嬉しそうに駆けていって、丁寧に一本ずつ手折っていく姿はまるで森の妖精。なびく金色に輝く髪は森の中に差し込む光りに当たるとキラキラと輝き、肌はすきとおるような白さは神秘的に見えてくる。
「でねっ! このラウル草はね、沸騰しないように丁寧に煮出すと毒消しに使えるのよ!」
ずっとこんな感じだったらいいのに。もったいないな。
「ねぇ、聞いてるの? 説明してあげてるんだからっ! しっかりしてよね」
はっ、いかん。エリザさんのためにも仕事をせねば。
「すまんすまん、でもどうやって見つけてるんだ? こんなに草が生い茂ってるのに、薬草を見分けるのって大変じゃないか」
「あぁ、私達エルフはね、精霊とお話が出来るんだけど、その精霊さんが大体の場所を教えてくれるの!」
「精霊?」
「えぇ、そうよ。フフフッ。凄腕の魔法使いさんでも知らないことがあるのね?」
「あぁ、人と話すの久しぶりなんだよね。少しばかり遺跡に籠もってたものだから」
「遺跡? あなた学者さんなの?」
「まさか。俺はただ色々知りたかっただけだよ」
「ふーん、でもあの魔法は一体何なの? あんな黒いオーラを纏った魔法なんて見たことないわ」
「あ、ダークファイアーのことかな? ハーデスからもらったんだ」
「?? ハーデス? 誰のことかしら? まさか冥王にしてアンデッドの神であるハーデスじゃないわよね?」
「あぁ、そのハーデスだよ」
「やだもう、私をからかおうとしてるんでしょ? フフッ、アナタ冗談がうまいのね」
まいったな。本当のことを言ったのだが全く信じてもらえないとは……。ま、信用がないとはこのことだ。俺ももっと精進しないとな。
「むっ! なんだこれは……?」
「えっ、どうしたの?」
その時、俺のマッピング魔法に異様な数の敵影を捉えた。
「薬草を集めている所すまないが緊急事態だ。すぐに向かおう!」
「え? ちょ、何言ってる……へっ?」
ミーナをお姫様だっこに抱え、俺は森の高い木に向かってジャンプした。
「ひっ! いきなり飛ばないでっ、怖いんだから!」
「舌を噛むなよ。少し我慢しててくれ」
「人の言うこと聞きなさいよっ!」
「スマンが今は時間がなさそうなんだ。文句なら後でいくらでも聞く。だから行くぞっ」
木の枝から枝へ次々と飛び移りながら疾風の速度で現場へ向かった。ミーナは俺の体をガッチリ掴み、落とされないようにしてくれている。
そして、森の中を突き進むオークの集団が目に入ってきたのであった。
「むぅっ、やはりか……」
「そ、そんな。……オークがこんなに」
草を踏み荒らし、森の木すら一撃で打倒しながら突き進むオークの集団があった。
一体どれくらいの数がいるのかわからないほどの数で、俺のマッピングのセンサーは一部が真っ赤になってしまっている。
ミーナの体がブルブルと震え、俺の服を掴む力が一層強くなった。
「ねっ! 早く逃げよ? こんなの無理よっ! 勝てっこない!」
顔を真っ青にしてミーナは声を絞り出した。
「んー、さすがにさ、これだけの数がいて、街に押しかけられるとせっかく張った結界が壊されるともったいないんだよな」
「結界なんていいじゃないっ! 早く街の人たちに伝えて避難させるべきよ!」
「避難なんてしたところで、すぐにオークに捕まるだろ? この数だぞ?」
「そんなこと言ったって、いくらアナタが強くたって倒しきれるわけないじゃない!」
眼前には森を埋め尽くすほどのオークがひしめき合っている。数百匹はくらだない数で街の方角へ向かって進行しているのだ。
ミーナは目に涙を浮かべながら、俺の胸に頭をつけてきた。
「お願いっ、エリザと私がアナタを森に連れてきちゃったから、今はこんなに危険な場所だってわからなくてっ」
「危険?」
「アナタには感謝してるのっ! でもこんな数のオーク倒せっこないわ! お願いよっ、すぐに逃げましょう?」
「そうか、お前は勘違いしてるんだな?」
「わっ、私が何を勘違いしてるっていうのよっ!! アナタを心配して悪いの? 私だってアナタに感謝してるのよっ! アナタに死んでほしくないのよっ!」
ミーナは頬を濡らしながら俺に抱きついてきた。
驚いたな! 俺に感謝してたなんて……。しかし、彼女達を助けるときに闇魔法だけで倒すっていう縛りプレイしたもんだから、俺がこいつらに負けると思ってたのか……。ん~、ホントは闇魔法の経験値にしたかったけれど、少しだけ本気でも見せてやるか。
「ミーナ。すまなかった。どうやら俺の実力を勘違いさせてしまったみたいだな」
「へ?」
「あの時のは、いわゆる縛りプレイってやつでさ」
「縛りプレイって何よ! あっ! アナタ、変態さんなのね?! 私をこんな所で縛ろうっていうの?」
「そんなわけないだろ! 縛りプレイってのはな、簡単に言うと本気の攻撃をしないってことさ」
「だってアナタ、あんなに強かったじゃない!」
「まぁ、一回見せたほうが早いか。俺の背中にしがみついててくれ。ちょっとだけ本気だすから」
ミーナを腕から降ろし、手を引っ張って強引に背中に移動させた。
「え、ちょ、ちょっと」
「そうれ、行くぞっ!」
「ちょっと待ってよ! まだ心の準備がって、ソウっ! ちょっとは話を聞きなさいよあっ! あああああぁぁぁぁぁっっっ!!」
ミーナの温もりを背に感じるまま、オークの群れの中に落下する。
もちろんバリヤーを張っているので奴らの攻撃なんて喰らうはずもない。
ホーリーソードを両手に持ち、どんどん振り回していくだけの単純作業だ。
一凪《ひとなぎ》ごとに十数匹のブタ達が真っ二つになり、その死体がみるみるうちに積み重なっていく。
オーク達も黙ってはいなかった。雄叫びを上げつつ俺に向かって数十匹が突撃をしてくる。
ただでさえ、士気が上がっており、後退など頭から飛んでいる状態なんだろう。現に目は赤く血走っており、侵略する気マンマンといった感じだ。鼻息もすこぶる荒くなっている。どれだけ仲間が死んだ所で止まるとは到底思えない。
「あぁ、もう面倒だな。木を傷つけないようにしてたけど、オークが突っ込んできちゃったら余計に木を倒されちゃうし、やっちゃうか」
この森を維持するためにわざわざ封印していたのになぁ。
俺は突進してくるオーク目がけて衝撃波を放った。ぶ厚い光りの刃がオーク達を貫いて、遥か遠くまで飛んでいく。
そして数キロ先にある巨大な岩を真っ二つに割って、衝撃波は止まった。
目の前にいたオーク達は全て片付いてしまった。問題は逃げ出す奴がいるのでそいつを逃さないようにするくらいだろう。
「よし、広範囲にバリヤーだな」
俺を中心に十キロメートル以上もの結界を張り、せっかく集まったオークを一匹残らずやっつけるためだ。
そして、結界の中にいるオークの掃討が始まるのであった。
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