上 下
10 / 219
第1章 初の異世界!

第10話 そして戦いへ

しおりを挟む


「なるほど、ここのボスってわけか。こいつは強そうだ」

 ボススケルトンは突然、雷撃の魔法を放ってきた。無詠唱はもちろん、その素振りすら見せない。

 さすがボスだな。ま、これくらいやってもらわなければ困る。

 ボスが放った魔法は俺の残した残像に容赦なく降り注いでいく。

 雷、炎、氷、防風、岩、毒、と次々に魔法を使用し、俺の残像をひたすらに打ち続けた。

「ふぅ、こいつも残像と本物の区別がつかないのか。ボスだと思って期待したんだが……」

 ボススケルトンの手足に向かってホーリーソードを振ると、衝撃波がボスの手足を切断した。

 支えを失ったボスはうつ伏せに倒れる。

「ここまでか。期待したほどでもなかったな。ん?……これは……」

 ボスの手足はいつの間にか元に戻っており、俺に向かって詠唱からの魔法を使用した。

 俺の周りに大きな魔法陣が現れたかと思うと、マグマのように真っ赤な火柱が燃え上がった。直径十メートルはある凄まじい炎は天井をも溶かし、崩れた天井がその場に落ちた。ズゥンと重い響きがフロアーに凄まじい振動と供に伝わってくる。

「なるほど、これが本気ってわけか。ならば、俺も本気でいくぞ」

 ボスの周りに残像を残しながら移動していく。今や残像は百を超える数をほぼ同時に残すことができるようになっていた。このボスが俺の本体を捉えるのはほぼ不可能だろう。

 ボスは俺の残像達にひたすら魔法を当てていく。その隙にボスの頭部後方までジャンプし、ホーリーソードを振るった。最初は衝撃波を一つだすのがやっとであったが、今や、一瞬のうちに一万を超える数の衝撃波を放つことが出来る。

 ボスの真後ろから放たれた衝撃波は頭部のみならず、体のあらゆる部分をずたずたに引き裂いた。

 崩れ落ちる骨に追い打ちをかけるようにエリアヒールを発動させる。

 ボスの骨は砂のように消えていった。

「お? レベルアップしたな。こりゃいいや。当分の間、ここでレベルを上げさせてもらうとするか」

 俺は腰を降ろし、やる気満々の状態でボススケルトンが復活するのを待つのであった。



   *



「よし、自身のレベルも神聖魔法のレベルも9800を超えたぞ」

 ここで稼ぎを始めてもう何年経過したのか、まるでわからなくなった。数千匹のボススケルトンを倒し、レベルは遂に9800を超えたのだ。

 順調に上がっていくレベルにニンマリと微笑みながら、今日も現れたボスを狩ろうとしたときだった。

「強き者よ」

「ん? だれだ?」

「ワシじゃ」

 ここのボスはいつも攻撃しながら現れていた。が、今回は姿を最初から現し、俺のほうを向いた状態で現れたのだった。

「ワシはここのボスとして、暗黒神と崇められ、祀られしハーデスと申す。強き者よ。少し話をせんか?」

 ボススケルトンからは殺気が消え失せている。

「話?」

「あぁ、そうじゃ」

 ボススケルトンは一つ頷くと話し始めた。

「ワシはアンデッドじゃ。いくら倒しても復活するのが道理。これまで数多の冒険者やモンスター、さらには竜達をも返り討ちにして、ワシの配下にしてきた。じゃが、お主の強さは図抜けておる。いや、それどころか、神であるワシすらも足元におよばぬ」

「アンタ、神だったのか!」

「うむ、強き者よ。ワシはいいかげんこの遺跡の地下で生きるのに飽きておった。何せ、この地上に生まれて数万年の間、ワシを倒せる者などおらんかったのじゃ」

「そんなに生きてるの? さすが神!」

「そうじゃ、そこでお主の力を見込んで頼みがある」

「頼み?」

「うむ、ソナタの魔法は神聖魔法じゃろ? そうでなければこうもワシを容易く倒すことなどできはせぬ」

「確かに。俺の魔法は神聖魔法のみだ。それ以外の魔法は一切つかえないんだよな」

「そこでじゃ、ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」

「成仏だって?」

「うむ。やり方は知ってはおるのじゃ。ワシは魔法を極めし黒魔道士じゃった。数多の魔法を極めたのじゃが、あいにく神聖魔法だけは相性の問題があっての。習得が出来なかったのじゃ」

「うぅむ、確かに。黒魔導士が神聖魔法なんて使っちゃおかしい気がするもんな」

「しかり。やり方はわかっておるのじゃ。じゃからお主に使ってもらえんかと思うての」

「なるほど。確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」

「では……」

「だが、断る」

「むっ、今何と?」

「断ると言ったんだ」

「なぜだ?」

「……俺のレベルだ」

「……は?」

「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」

 カンストとは限界まで上げた状態のことだ。

「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」

「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」

「……正気……なのか?」

「もちろん」

「く、狂っておるのか? そんなことをして何になる? お主の時間を無駄に使うだけではないか? もうお主より強い存在など……」

「そういう問題じゃない。俺はこの世界を創った異世界神の気まぐれでここに落とされた。チートをくれるっていうから、ハーレム作ってスローライフがしたかったんだ! それが何だ! 人の気配がないだけでなく、いつまで歩いても森の中から出られない。そして目の前に遺跡が現れたんだ! 極めるしかないだろ! こんなの!」

「……なんじゃその考え方は! しかし、わかった! マッピングの魔法も授けよう。それでこの森も抜けられるはずじゃ。今のお主なら一日もかからんじゃろうて」

「断る」

「くっ」

「それよりもレベルが先だ」

「頑固者がっ!」

「あぁ、俺は凝り性なんだ。やり込んだゲームはレベルカンストは当たり前、アイテムコンプリート目指して廃人になること数年。気づけば大学は八年在籍し中退。就職はブラック企業。おかげで大好きなゲームが全くできずにこき使われる毎日。もうウンザリだったんだ!」

「えぇ……。それは自己責任じゃ……」

「うわ。出たよ! 自己責任!! いっつも大人は自己責任言いやがって! 人生を一回でも失敗した人間のこと切り捨てる社会なんかこっちから願い下げだ!」

「……大変じゃったんじゃの」

「あぁ、だが今は充実している! 俺はこの世界でもレベルを必ずカンストさせるんだ! そしてありとあらゆるものを極め尽くして見せる!」

「……もう好きにするがいい」

「わかった。では、推して参る!」

 再び、俺の戦いは始まった。そうレベルをカンストさせるための戦いが!


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

処理中です...