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第1章 初の異世界!

第2話 異世界へ

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 ふと目を覚ますと、視界いっぱいに青空が広がっていた。

「ここは……いったいどこなんだ?」

 上半身を起こし、辺りを見回したが見覚えがない。

 立ち上がると、いきなり起き上がったせいか、頭がクラクラする。

「うっ……」

 頭痛が走った。けれど、立ちくらみとはちょっと違う……、なんだろう? 謎の記憶が入ってくる。

 思い出すように俺の脳に浮かんでくるのはこの世界の文字や言葉、常識のようなものが一辺に頭に刻み込まれてくる。

「いたっ、あいたたたたっ、なんだこれ? ぐあああっっっ!」

 再び草原に倒れ込んでしまった。

 なんだこりゃぁ? 一体なにが起きてるんだ?

 頭を抱え、ゴロゴロと悶えること二十分。やっと頭痛が収まってきた。

 その間にこの世界の常識? とやらを強引に覚えさせられたようだ。

 今、得た知識からすると、どうやらここは異世界ということらしい。

 ちまたで流行っている異世界転移ってやつなのだろうか?しかし、なんで俺がこんな目に合うんだ?

 そのとき、頭にピコンと浮かび上がる文字があった。

 うん? これは……メールか?

 視界に浮かび上がる封筒のようなアイコン。日本でメールといえばこのマークだ。

 どうやって開くんだ?

 試しに視界に映るマークに指を当ててみる。

 カチッという音とともに受信したメールの題名が現れた。

 送り主が異世界神と書いてある。

 胡散臭いなぁ。でもこんな見たこともない世界の常識なんて送ってくるくらいだし、本当に神様なのかもな……。

 俺はさらにその題名に指を当てると、またカチッという音と供に、メールの内容が開かれた。

「ようこそ、異世界へ。

 君は元の世界において、不運な事故で亡くなってしまいました。本来であれば、君はまだ生きているはずだったのだけど……。

 どうやら、あの場に別の異世界から紛れ込んでいた者がいたようなんだ。

 それで、運命の軸がずれてしまったようで、君の命が地球から漏れてしまったようなんだ。

 もちろん本来なら、その別の異世界の神が責任を取る所なんだけれど、その世界は悪鬼羅刹の跋扈する魑魅魍魎の世界らしく、君には合わないらしくてね。

 そこで、僕が創った世界に招待することになったんだ。

 あ、必要な知識は頭に自動的に入るようにしたし、少しばかりチート能力も入れておいたよ。

 状態《ステータス》見る画面《ウィンドウ》から見ておいてね。

 あ、そうそう。ステータスは”オープン”って言えば開くようになってるからね。

 では、ゆっくりとこの異世界を楽しんでくれることを願っているよ。

 異世界神より」

 ふぅ、なんて長いメールだ。何回かに分けろよな。

 この長いメールは要するに、俺は地球では死んでしまって、この世界に送り込まれたんだな。チート付きで。

 ま、あのまま地球にいても、家族もいないし、友人も少ないし。ただ仕事するだけの毎日だったからなぁ。

 ちょっとばかりゆっくり出来ればそれでいっか……。

 あ、チートについて調べてみるか。

 俺は神様からの手紙にステータスからチートについて調べられると、書いてあったのを思い出した。

「オープン」

 視界に白い枠が現れた。そこに書かれていたのは、



名前 ソウ

種族 ヒューマン

Lv 1

HP 21

MP 15

力 3

体力 3

素早さ 3

魔力 3

加護 異世界神の加護


 うん? 俺、弱くない? こんなステータスで生き残れるの?

 レベルという概念があるのは日本でよくゲームをやってたからわかるけれど、武器も防具もなしに異世界に放り出すか?

 有名ゲームの王様だって、はした金とはいえ、一応お小遣いだけはくれたというのに……。

 俺にはそれすらもなしか。ド○クエ1以下かよ……。

 しかし、俺はチートがあるのを思い出した。

「あ、そっか。チートがあるんだ。これがあれば生き残れるってことだよな?」

 よし、早速チートとやらをチェックしよう。

 白い画面をタッチしてと、異世界神の加護ってやつをタッチするぞ。

 画面には一行だけ、

 神聖魔法 Lv 1

 ……え? 神聖魔法? 強い攻撃とか攻撃魔法じゃないの?

 他に何かないのか色々な所をタッチしてみたが、他の場所の反応はなかった。

「そっか、神聖魔法だけか。ざっくりしてるなぁ。ま、相当いい魔法なんだろうけど。この神聖魔法とやらがどんな効果なのかはこのパネルから調べることができないのか」

 あぁ~っ、俺つえ~~っ!ってやりたかったのに!

 せっかくの異世界チートなんだから俺ツエーをしたかった。それなのにもらえたのは聞いたこともない神聖魔法。

 膝をついてガックリしてしまう。すると、後ろからガサっと草を踏む音がした。

「誰だっ!」

 振り向くと緑色の肌をした小人が手にナイフを持って立っていた。

「こ、これは……。ゴブリンってやつ?」

「ギギャ、ギャギャギャ」

「やっぱり話なんて通じないよね?」

「ギャギャーー!」

 目の前のゴブリンはナイフを突き出し、襲いかかってきた。

 日本育ちの俺には咄嗟の判断が出来なかった。そのナイフを思わず手で防ごうとしてしまったのだ。

 ナイフは刃こぼれもひどく、サビも浮いているが、それでも俺の腕に刺さってきた。

「ぐあああああっっっ! 痛っったーーーーーーーい!」

 思わず大声がでるが、ゴブリンは動じない。

 俺の腕に刺さったナイフを引き抜こうとする。

「い、痛いっ! 痛すぎるだろ! か、回復魔法だっ、ってどうやって使うんだ?」

「と、とりあえず、レ○タ!」

 ぐっ、やはりセ○じゃだめか! ならば、

「ホイ○!」

 国民的RPGだぞ!? これでだめなんなら、

「ケア○!」

 くっそ~っ! 日本の二大RPGじゃないなんて……、

「ヒール!」

 ダメ元で唱えたつもりだったが、腕はみるみるうちに治ってしまい、ゴブリンのナイフはスルッと抜けた。

「あ、い、痛くない。良かった~。いわゆる異世界転移モノ方式だったのか」

「ギギャ? ギャギャッ!」

 目の前のゴブリンは一瞬だけ不思議そうな顔をしたがまたナイフを突き出してくる。

「あ、危ねぇっ! こ、このやろう」

 ゴブリンのナイフをかろうじて避けた俺はゴブリンの背中を思いっきり蹴った。

 ゴブリンの体は固く、石でも蹴っているかのような感触だ。

 ゴブリンはニ、三歩よろめいただけで、すぐにこちらに向き直る。

「くっそ。どうすりゃいいんだ」

 俺は足もとにある大きめの石があるのを見つけた。

「あ、これならいけるか? こいつで頭でもぶっ叩けば……」

 とはいえ、目の前にナイフがあるのでこちらから迂闊には近づけない。

 ゴブリンはまたしてもナイフを突き出してくる。

「もう、それはわかってるよ!」

 ゴブリンの動きは単調でわかりやすかった。ナイフを持って走って真っ直ぐ突き出すのだ。俺はそれを余裕で躱す。

「くらいやがれっ」

 ゴブリンの頭を目がけて石で思いっきり殴りつけた。

 ガィンッ!! という音と供に、ゴブリンの頭がへこんだ。グラリと揺れて、その場にドサリと倒れ込む。

「はぁ、はぁ。ゴブリンって一番弱い部類のモンスターだろ? ゲームと違って実戦じゃこんなにも苦労するのかよ」

 俺はリアルな命のやりとりに心臓がバクバクと動いている。そのままその場にペタンと座り込んだ。

 両手を見るとまだ震えが止まらない。

「はっ、そうだ。レベルは? 上がってないだろうか? オープンっ!」

 期待を込めてステータスを開いてみたが、レベルは1のままだった。

「そう簡単に上がりはしないか。ま、とりあえずゴブリンの持ってたナイフでももらっていくしかないよな」

 ナイフを手に取り、俺は辺りの捜索を開始した。



「だぁ~~っ! 歩けども歩けども、森ばかり。いったいどこへ向かったら人がいるんだ?」

 すでに歩くこと二時間。全く人の気配がない。それどころか、獣が草を揺らす音があちこちから聞こえてきて、心臓に悪い。

 またモンスターが出てきたらと思うと自然と足取りが重くなってしまう。

「腹減ったなぁ」

 ぐう~っと大きな音を立てて腹が鳴る。しかし、食べられそうな実なんて見かけないし、ナイフ一本しかないから獲物もとれない。

 サバイバルの達人ならナイフ一本で罠なんか作って獲物を狩るんだろうけれど、俺は純粋な日本のサラリーマンだったのだ。都会生まれ、都会育ちの俺にそんなアビリティは当然ない。

「何かないかなぁ……」

 それでもあきらめずに地面や木の上を調べながら歩いていく。

 しかし、辺りは鬱蒼とした森が続くばかりで景色はずっと一緒だった。

「あ、そうだ。魔法でなんとかならないかな?」

 ふと思い出した神聖魔法。

「これでなにか飲めるものだけでも出せないだろうか?」

 俺は願いを込めて手を合掌して合わせてから、魔法を試してみることにした。

「神様、お願いします。このままでは俺は餓死してしまいます。最低限生き残るためのチートとしてくれたこの神聖魔法。試させていただきます!まずは……、ヒール」

 俺の周りがキラキラと輝き出したかと思うと、軽い擦り傷が消えていった。

「派手なエフェクトだな……、お? 体がめっちゃ軽くなったぞ!」

 体をあちこち動かしたりして、よく見てみると昔に怪我をした部分の傷痕すら消えていたのだった。

「うそでしょ? 小学生の頃の傷まで消えるの?」

 今や、俺の体は傷やシミの一つもない体になってしまった。

 先程も助けられたこのヒールはとんでもない威力を持っていることがわかった。

「うぅむ、神聖魔法か。ただのヒールのつもりが凄まじい効果じゃないか。だが、肝心の空腹は満たせてない。他にも使えないか試さないとな」

 俺は続けて唱えてみる。

「キュアー」

 先の詠唱でアンテ○やキアリ○は効果が出ないだろうことは学習済みだ。

 またしても俺の体をキラキラとしたパーティクルが包み込む。そして、俺の体がスッキリした感覚になった。

「お? なんかスッキリしたなぁ。汗をかいた後のベタつきが全くなくなったぞ」

 服も汗出どっしりと重くなっていたのだが、完全に洗濯した後のように綺麗で肌触りが復活していた。

「うはは。こりゃいいや。お風呂に入らなくてもなんとかなりそうだ」

「あれ? ふと思ったんだけどMPは大丈夫かな? オープン!」

 気になったMPの消費量だけど、MPの数値はそのままだった。

「減ってない? この神聖魔法ってのはMPが減らないのかな?」

 俺はステータスを開いたまま、さらにヒールを使ってみた。

 やはり、MPは減らない。ってことは、この神聖魔法は加護の力によってMPを消費しないってことなのかな? 詳しいことはわからんが今はそう捉えておこう。

 傷も消えて、体力も回復した。それに体までスッキリしたけれど、空腹だけはそのままだ。

 俺はさらにこの神聖魔法を試してみることにする。

「水よ出ろっ!」

 何か、神聖な水でも出ないか確認してみたが、水は出なかった。

 うぅむ、言い方を変えよう。

「ポーションよ、出ろっ!」

 俺の開いた手のひらから水が湧き出てきた。

「お? ポーションなら出せるのか!」

 早速そのポーションで喉を潤した。すると不思議なことに空腹まで収まってしまった。

「これは? どういうことだ? ポーションってのは空腹までみたされるのか?」

 さらにポーションを飲み込んでみる。

「うーん、すでに空腹感がないから詳しいことはわからないな。よし、また腹が減ったら飲んでみよう。今は十分に喉も潤せたし、これで大丈夫だろう」

 魔法の実験はとりあえずここまでだな。

 俺は軽くなった足でさらに森の中を探索することにしたのだった。


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