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異世界編5(中)・いんとろだくしょん
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「――……世界での役割について。これは、存外分かり易いんじゃないかのぅ。一番分かり易いのは、植物じゃろうか。植物には光合成という機能が備わっており、本来は植物自身に栄養を作り出すことではあるが、副次的に酸素を生み出す役割を担っておる。これがあるおかげで酸素を必要とする生命が生きながらえる、という訳じゃ」
寝台に寝そべっているロールを撫でながら娘さん――柚繰藍と呼ばれる少女――に優しく語りかける。
ロールは気持ちよさそうに目を細め、柚繰藍ちゃんは真剣に話を聞いていた。
「魔界や神界では酸素に加えて魔力の供給も行っているがな。じゃから、国土が荒廃してしまうとすぐには……おっと、話が逸れてしまったわい」
「植物の話は分かり易いので理解できます。それじゃあ人間は? 人間の世界での役割についてって?」
「ほっほ、まぁ、落ち着きなさい藍ちゃんや。まずは、シチューをもっと味わって……何じゃ、もう食べ終わってしまったのか、おかわりは……あぁ、そう、いらいないのね」
にべもなく断られてしまった。柚繰藍を前に、しばし思案する。
……さて、どう伝えたものか。
「創造主様の話は先ほどしたのぅ? そう、『次元世界』を作られた方じゃ。創造主様は『次元世界』をお創りになられたとき『次元世界』の終焉までをお考えになられてお創りになられたんじゃ。何時終焉を迎えるのかはわしには分からんがな」
「……終焉までを考えて?」
「うむ、始まりから終わりまでをお考えになられて創られたんじゃよ」
ここが数々の争いの発端になるんじゃが……まぁ、それは良いとしようか。今、藍ちゃんに説明するべきは彼女の疑問に対してじゃからのぅ。
「藍ちゃんや、劇を見たことがあるかのぅ? ほっほ、それは重畳じゃ、二時間程度の劇を想像してもらえるかのぅ、人間界というタイトルの劇をな。海や陸地、木々といった舞台に、多数の生命(出演者)が存在しているんじゃ。舞台も出演者も全て劇のためのもの、だということは分かるかね?」
藍ちゃんからの疑問の声を軽くいなし、傍らから取り出した羊皮紙にペンで図を書きこんだ。
大事じゃよ、頭の中を整理する時は図示するに限る。
「……えぇ、それぐらいなら分かるわ」
「うむ、これが種として与えられた役割じゃ。この劇(次元世界)の一員としてな」
劇を構成する装置(人を含む)=種としての役割、と紙面に書き込む。
「……えぇ」
「そして、劇には登場人物がいる。劇作家(創造主)から役を与えられた役者がな。端役にしろ、主役にしろ、劇(次元世界)には必要だから存在するんじゃ。必要のない登場人物であれば登場させなければいいんじゃから」
「劇作家(創造主)から与えられた役回り、それが『次元世界』においての役割、ということなんじゃよ、良いかね?」
登場人物の役=『次元世界』においての役割、とすらすらと書きこんだ。
例:主役や端役といった役回り、と追加で記す。
「……言わんとしていることは何となく分かります」
「結構じゃ。そこで話は夕食前に遡る。神魔大戦の折り、『媒介者』なる存在が現れて大戦を終結させたというお話をしたは覚えているかな?」
「……創造主様が課したルールに則って『次元世界』を修正するっていう?」
「そう、それじゃよ。この『媒介者』はアドリブ役者ということにしておこうかのぅ。『媒介者』は劇(次元世界)の進行が無茶苦茶になってしまったときに現れるんじゃ。端役が主役になり変わろうと暴れはじめたら大変じゃろう?」
紙面に、劇崩壊!!と書きこんでみる。藍ちゃんは無反応だった。おじいちゃんいとかなしじゃ。
「……コホン、そう『媒介者』には劇(次元世界)の進行をあるべき状態に戻す役割があり、かつあるべき状態に戻す能力を有しているんじゃ。まぁ、普段は数多の登場人物に紛れているがな」
「その『媒介者』の役割を人間界において今の時代、巻坂浩之君が担うことになったという訳じゃ。おっと、理由は聞かんでくれよ? 選ばれた理由についてはわしにも分からんからのぅ」
「……選ばれた理由は分からないのね? それじゃあ、どうして浩之君が『媒介者』だってことが分かるの?」
「ほっほ、許しておくれ藍ちゃんや。その説明も今は出来んのじゃよ。けれども浩之君が『媒介者』である確固たる理由が存在するんじゃ。今はその理由がある、というだけで納得しておくれ?」
「……そう、分かったわ。今はそれで納得することにする」
溜め息を吐きながら藍ちゃんは頷いた。物分りのいい子じゃのぅ……まぁ、納得はしていないんじゃろうがな。
「……それじゃ、最後ね。私も役割を担っているということなんだけど?」
「うむ……その話、じゃな」
Correcter(修正者)の能力で私達に協力してほしい、と目の前に座る柚繰藍は能力を解放されて魔界へと転送された。
しょうのない争いにこんな年若い娘さんを巻き込むんじゃから奴らは始末に負えんわい。
……ったく、はらわたが煮えくり返りそうじゃ。
「……『媒介者』にはペアがおってな。『次元世界』に直接干渉が出来る人物、その人物をCorrecter(修正者)と呼んでいるんじゃ」
寝台に寝そべっているロールを撫でながら娘さん――柚繰藍と呼ばれる少女――に優しく語りかける。
ロールは気持ちよさそうに目を細め、柚繰藍ちゃんは真剣に話を聞いていた。
「魔界や神界では酸素に加えて魔力の供給も行っているがな。じゃから、国土が荒廃してしまうとすぐには……おっと、話が逸れてしまったわい」
「植物の話は分かり易いので理解できます。それじゃあ人間は? 人間の世界での役割についてって?」
「ほっほ、まぁ、落ち着きなさい藍ちゃんや。まずは、シチューをもっと味わって……何じゃ、もう食べ終わってしまったのか、おかわりは……あぁ、そう、いらいないのね」
にべもなく断られてしまった。柚繰藍を前に、しばし思案する。
……さて、どう伝えたものか。
「創造主様の話は先ほどしたのぅ? そう、『次元世界』を作られた方じゃ。創造主様は『次元世界』をお創りになられたとき『次元世界』の終焉までをお考えになられてお創りになられたんじゃ。何時終焉を迎えるのかはわしには分からんがな」
「……終焉までを考えて?」
「うむ、始まりから終わりまでをお考えになられて創られたんじゃよ」
ここが数々の争いの発端になるんじゃが……まぁ、それは良いとしようか。今、藍ちゃんに説明するべきは彼女の疑問に対してじゃからのぅ。
「藍ちゃんや、劇を見たことがあるかのぅ? ほっほ、それは重畳じゃ、二時間程度の劇を想像してもらえるかのぅ、人間界というタイトルの劇をな。海や陸地、木々といった舞台に、多数の生命(出演者)が存在しているんじゃ。舞台も出演者も全て劇のためのもの、だということは分かるかね?」
藍ちゃんからの疑問の声を軽くいなし、傍らから取り出した羊皮紙にペンで図を書きこんだ。
大事じゃよ、頭の中を整理する時は図示するに限る。
「……えぇ、それぐらいなら分かるわ」
「うむ、これが種として与えられた役割じゃ。この劇(次元世界)の一員としてな」
劇を構成する装置(人を含む)=種としての役割、と紙面に書き込む。
「……えぇ」
「そして、劇には登場人物がいる。劇作家(創造主)から役を与えられた役者がな。端役にしろ、主役にしろ、劇(次元世界)には必要だから存在するんじゃ。必要のない登場人物であれば登場させなければいいんじゃから」
「劇作家(創造主)から与えられた役回り、それが『次元世界』においての役割、ということなんじゃよ、良いかね?」
登場人物の役=『次元世界』においての役割、とすらすらと書きこんだ。
例:主役や端役といった役回り、と追加で記す。
「……言わんとしていることは何となく分かります」
「結構じゃ。そこで話は夕食前に遡る。神魔大戦の折り、『媒介者』なる存在が現れて大戦を終結させたというお話をしたは覚えているかな?」
「……創造主様が課したルールに則って『次元世界』を修正するっていう?」
「そう、それじゃよ。この『媒介者』はアドリブ役者ということにしておこうかのぅ。『媒介者』は劇(次元世界)の進行が無茶苦茶になってしまったときに現れるんじゃ。端役が主役になり変わろうと暴れはじめたら大変じゃろう?」
紙面に、劇崩壊!!と書きこんでみる。藍ちゃんは無反応だった。おじいちゃんいとかなしじゃ。
「……コホン、そう『媒介者』には劇(次元世界)の進行をあるべき状態に戻す役割があり、かつあるべき状態に戻す能力を有しているんじゃ。まぁ、普段は数多の登場人物に紛れているがな」
「その『媒介者』の役割を人間界において今の時代、巻坂浩之君が担うことになったという訳じゃ。おっと、理由は聞かんでくれよ? 選ばれた理由についてはわしにも分からんからのぅ」
「……選ばれた理由は分からないのね? それじゃあ、どうして浩之君が『媒介者』だってことが分かるの?」
「ほっほ、許しておくれ藍ちゃんや。その説明も今は出来んのじゃよ。けれども浩之君が『媒介者』である確固たる理由が存在するんじゃ。今はその理由がある、というだけで納得しておくれ?」
「……そう、分かったわ。今はそれで納得することにする」
溜め息を吐きながら藍ちゃんは頷いた。物分りのいい子じゃのぅ……まぁ、納得はしていないんじゃろうがな。
「……それじゃ、最後ね。私も役割を担っているということなんだけど?」
「うむ……その話、じゃな」
Correcter(修正者)の能力で私達に協力してほしい、と目の前に座る柚繰藍は能力を解放されて魔界へと転送された。
しょうのない争いにこんな年若い娘さんを巻き込むんじゃから奴らは始末に負えんわい。
……ったく、はらわたが煮えくり返りそうじゃ。
「……『媒介者』にはペアがおってな。『次元世界』に直接干渉が出来る人物、その人物をCorrecter(修正者)と呼んでいるんじゃ」
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