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覚醒編7・異世界への追放
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「……っ!? お、お前何てことを……!?」
「二人を……!?」
『慌てないでよ。慌てる乞食は貰いが少ないって言うだろ? 少なくとも危ないことはしてないよ』
突然の展開に叫ぶ俺と柚繰だったが、『ロールさん』は意にも介さずにやにやと笑っている。引き抜いた短刀を携え、再び机に着地した。
「ふ、ふざけんなっ!? 人に短刀突き刺しておいて…………「「ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!」」…………え?」
『ロールさん』に詰め寄ろうと駆け出した俺の前には、まるで変態仮面のように叫びだす馬鹿二人の姿。ちなみにポーズも大体一緒だ。そりゃ、このシリアスな雰囲気で「…………え?」とも言いたくなるわ。
「…………力が溢れてくるっ、力が溢れてくるようだよっ!」
「…………身体の芯から自身がこみ上げてくるぜ……俺の前に敵はいねぇ」
感極まった馬鹿二人が出来上がったようだ。
ガハハハハッ、アハハハハッ、と馬鹿笑いをしている二人を俺たちは茫然と見守るしか出来ない。
『簡単な事さ』
何時の間にか眼前に現れた『ロールさん』がそう言った。
『彼らが元々持っている能力の箍を外してあげたのさ。理性や、常識が自身の持っている能力の成長を阻害していたみたいだからね。どの人間だってそうさ。みんな何かしらの素質を持ってこの世界に生まれてきたんだ。』
『偉人と凡人の違いがまさにそこの一点。自分の役割を認識して生きていくのか、理性や常識に阻まれて衆愚となって一生を終えるのか、さ』
「……そういうものなのか?」
『……あぁ、そうさ。彼らはこの世界に必要な人間だからね、ちょっとしたサービスだよ。さ、次は君たちの番だ』
ギラリ、と手にした短刀が光る。
「…………え、私達……も?」
『そうさ……と言っても、君達のことは読み取る必要がないかな、もう分かっていることだし』
「……? それは、どういう意味だ?」
『何でもないよ、こちらの話』
そう言って、『ロールさん』は柚繰に向き直る。
『さて、柚繰藍さん。貴女はこの世界において極めて重要な『役割』を担っている。貴女という存在がなければ、我々の大願は成就されないでしょう。Correcter(修正者)の能力、何れは私達に力を貸して頂きたい。……まぁ、まずは、その能力を自覚して使いこなすことが先決、かな』
「……な、何を言ってるの?」
『――失礼。無礼を承知で』
トスッ。
「っ!?」
身構える柚繰の隙間を縫って、『ロールさん』の短刀が柚繰の胸に吸い込まれていった。
「……柚繰っ、お、おいっ、あいつらと同じで無事なんだよな?」
『大丈夫だよ、同じことをしたんだから、同じ結果になるに決まってるだろ? それに重要な『役割』を持った人間をむやみに傷つけたりはしないよ』
「あ…………う、うぅっ…………」
先程と同じように短刀を引き抜かれると、柚繰は途端に呻き声を挙げた。
『ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!』とか叫び出さなくて良かった……本当に良かった。
『さぁ、残るは君一人だよ。巻坂浩之君。いや、『媒介者』の少年と言った方が正しいかな?』
「いや、巻坂浩之でいいんだけど……お、俺もやるのか、それ?」
『当たり前じゃないか、何を言ってるんだい、女の子二人も同じことやってるんだから、情けないよ?』
にやにや、と。
『ロールさん』は笑いながら近づいてくる。
「……ち、ちなみに、俺の前口上は?」
『前口上? あぁ、君のこれからの役割についてのことかな? そうだなぁ、巻坂浩之君、君は私たちにとってとても邪魔な存在なんだ。君が存在していると、この世界の改変が上手く進まない。だからね、巻坂浩之君』
『――……魔界で死んでくれる?』
グチャリ、と鋭利な刃物が肉体に沈んでいく音が、室内に響いた。
「二人を……!?」
『慌てないでよ。慌てる乞食は貰いが少ないって言うだろ? 少なくとも危ないことはしてないよ』
突然の展開に叫ぶ俺と柚繰だったが、『ロールさん』は意にも介さずにやにやと笑っている。引き抜いた短刀を携え、再び机に着地した。
「ふ、ふざけんなっ!? 人に短刀突き刺しておいて…………「「ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!」」…………え?」
『ロールさん』に詰め寄ろうと駆け出した俺の前には、まるで変態仮面のように叫びだす馬鹿二人の姿。ちなみにポーズも大体一緒だ。そりゃ、このシリアスな雰囲気で「…………え?」とも言いたくなるわ。
「…………力が溢れてくるっ、力が溢れてくるようだよっ!」
「…………身体の芯から自身がこみ上げてくるぜ……俺の前に敵はいねぇ」
感極まった馬鹿二人が出来上がったようだ。
ガハハハハッ、アハハハハッ、と馬鹿笑いをしている二人を俺たちは茫然と見守るしか出来ない。
『簡単な事さ』
何時の間にか眼前に現れた『ロールさん』がそう言った。
『彼らが元々持っている能力の箍を外してあげたのさ。理性や、常識が自身の持っている能力の成長を阻害していたみたいだからね。どの人間だってそうさ。みんな何かしらの素質を持ってこの世界に生まれてきたんだ。』
『偉人と凡人の違いがまさにそこの一点。自分の役割を認識して生きていくのか、理性や常識に阻まれて衆愚となって一生を終えるのか、さ』
「……そういうものなのか?」
『……あぁ、そうさ。彼らはこの世界に必要な人間だからね、ちょっとしたサービスだよ。さ、次は君たちの番だ』
ギラリ、と手にした短刀が光る。
「…………え、私達……も?」
『そうさ……と言っても、君達のことは読み取る必要がないかな、もう分かっていることだし』
「……? それは、どういう意味だ?」
『何でもないよ、こちらの話』
そう言って、『ロールさん』は柚繰に向き直る。
『さて、柚繰藍さん。貴女はこの世界において極めて重要な『役割』を担っている。貴女という存在がなければ、我々の大願は成就されないでしょう。Correcter(修正者)の能力、何れは私達に力を貸して頂きたい。……まぁ、まずは、その能力を自覚して使いこなすことが先決、かな』
「……な、何を言ってるの?」
『――失礼。無礼を承知で』
トスッ。
「っ!?」
身構える柚繰の隙間を縫って、『ロールさん』の短刀が柚繰の胸に吸い込まれていった。
「……柚繰っ、お、おいっ、あいつらと同じで無事なんだよな?」
『大丈夫だよ、同じことをしたんだから、同じ結果になるに決まってるだろ? それに重要な『役割』を持った人間をむやみに傷つけたりはしないよ』
「あ…………う、うぅっ…………」
先程と同じように短刀を引き抜かれると、柚繰は途端に呻き声を挙げた。
『ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!』とか叫び出さなくて良かった……本当に良かった。
『さぁ、残るは君一人だよ。巻坂浩之君。いや、『媒介者』の少年と言った方が正しいかな?』
「いや、巻坂浩之でいいんだけど……お、俺もやるのか、それ?」
『当たり前じゃないか、何を言ってるんだい、女の子二人も同じことやってるんだから、情けないよ?』
にやにや、と。
『ロールさん』は笑いながら近づいてくる。
「……ち、ちなみに、俺の前口上は?」
『前口上? あぁ、君のこれからの役割についてのことかな? そうだなぁ、巻坂浩之君、君は私たちにとってとても邪魔な存在なんだ。君が存在していると、この世界の改変が上手く進まない。だからね、巻坂浩之君』
『――……魔界で死んでくれる?』
グチャリ、と鋭利な刃物が肉体に沈んでいく音が、室内に響いた。
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