Correct×Tale - 世界を修正する少女と媒介者の少年 -

椎名詩音

文字の大きさ
上 下
16 / 26

覚醒編7・異世界への追放

しおりを挟む
「……っ!? お、お前何てことを……!?」

「二人を……!?」


『慌てないでよ。慌てる乞食は貰いが少ないって言うだろ? 少なくとも危ないことはしてないよ』


 突然の展開に叫ぶ俺と柚繰だったが、『ロールさん』は意にも介さずにやにやと笑っている。引き抜いた短刀を携え、再び机に着地した。

「ふ、ふざけんなっ!? 人に短刀突き刺しておいて…………「「ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!」」…………え?」

『ロールさん』に詰め寄ろうと駆け出した俺の前には、まるで変態仮面のように叫びだす馬鹿二人の姿。ちなみにポーズも大体一緒だ。そりゃ、このシリアスな雰囲気で「…………え?」とも言いたくなるわ。

「…………力が溢れてくるっ、力が溢れてくるようだよっ!」

「…………身体の芯から自身がこみ上げてくるぜ……俺の前に敵はいねぇ」

 感極まった馬鹿二人が出来上がったようだ。
ガハハハハッ、アハハハハッ、と馬鹿笑いをしている二人を俺たちは茫然と見守るしか出来ない。


『簡単な事さ』


 何時の間にか眼前に現れた『ロールさん』がそう言った。


『彼らが元々持っている能力の箍を外してあげたのさ。理性や、常識が自身の持っている能力の成長を阻害していたみたいだからね。どの人間だってそうさ。みんな何かしらの素質を持ってこの世界に生まれてきたんだ。』


『偉人と凡人の違いがまさにそこの一点。自分の役割を認識して生きていくのか、理性や常識に阻まれて衆愚となって一生を終えるのか、さ』


「……そういうものなのか?」


『……あぁ、そうさ。彼らはこの世界に必要な人間だからね、ちょっとしたサービスだよ。さ、次は君たちの番だ』


 ギラリ、と手にした短刀が光る。

「…………え、私達……も?」


『そうさ……と言っても、君達のことは読み取る必要がないかな、もう分かっていることだし』


「……? それは、どういう意味だ?」


『何でもないよ、こちらの話』


 そう言って、『ロールさん』は柚繰に向き直る。


『さて、柚繰藍さん。貴女はこの世界において極めて重要な『役割』を担っている。貴女という存在がなければ、我々の大願は成就されないでしょう。Correcter(修正者)の能力、何れは私達・・に力を貸して頂きたい。……まぁ、まずは、その能力を自覚して使いこなすことが先決、かな』


「……な、何を言ってるの?」


『――失礼。無礼を承知で』


トスッ。


「っ!?」

身構える柚繰の隙間を縫って、『ロールさん』の短刀が柚繰の胸に吸い込まれていった。

「……柚繰っ、お、おいっ、あいつらと同じで無事なんだよな?」


『大丈夫だよ、同じことをしたんだから、同じ結果になるに決まってるだろ? それに重要な『役割』を持った人間をむやみに傷つけたりはしないよ』

 
「あ…………う、うぅっ…………」

先程と同じように短刀を引き抜かれると、柚繰は途端に呻き声を挙げた。
『ふぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!』とか叫び出さなくて良かった……本当に良かった。


『さぁ、残るは君一人だよ。巻坂浩之君。いや、『媒介者』の少年と言った方が正しいかな?』


「いや、巻坂浩之でいいんだけど……お、俺もやるのか、それ?」


『当たり前じゃないか、何を言ってるんだい、女の子二人も同じことやってるんだから、情けないよ?』


にやにや、と。
『ロールさん』は笑いながら近づいてくる。

「……ち、ちなみに、俺の前口上は?」


『前口上? あぁ、君のこれからの役割についてのことかな? そうだなぁ、巻坂浩之君、君は私たち・・にとってとても邪魔な存在なんだ。君が存在していると、この世界の改変が上手く進まない。だからね、巻坂浩之君』


『――……魔界あっちで死んでくれる?』

グチャリ、と鋭利な刃物が肉体に沈んでいく音が、室内に響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】古道具屋の翁~出刃包丁と蛇の目傘~

tanakan
ファンタジー
物にはいずれ心が宿る。 付喪と呼ばれる存在はいずれ人に成ることを望む。 付喪之人と呼ばれる彼らは、いずれ神になろうとするのだろうか。 それとも人のままを望み生き、果てるのか。 物の想いは?人の想いは?狭間で悩み苦しみ・・・生きる。 古道具屋の翁は白蛇のキセルに想いを込める。 人の呪いに憑かれた物を、付喪を払うのだ。 近代日本を舞台にした物と人を巡る和製ファンタジー。 翁は今日も語るのだ。虚実を交えて真実を。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処理中です...