15 / 26
覚醒編6・『ロールさん』が短刀(ドス)をドスッ、ドスッと(錯乱中
しおりを挟む
「……えっと、『ロールさん』には聞きたいことがあるんですよ」
さっきまで固まっていた春菜も順応し始めたのか、自分から『ロールさん』に向かっていった。
『……へぇ、聞きたいことね。それは一体何だい?」
「ちょっと噂で聞いたんですけど……」
「……浩之君」
「何だ、柚繰?」
春菜が喋っているところを遠巻きに眺めていた柚繰が俺に話しかけてきた。
「これは、今、この部屋で何が起こっているの?」
「……お前の言いたいことはよく分かるよ、柚繰」
深く考えたくはないがな。
柚繰にしてみれば、いや、俺にしてみてもそうだが、こっくりさんもどきをやるからということで付いてきのだ。
それが蓋を開けてみれば、ご神体は割れる上に中から得体の知れない物体が飛び出してくるわ、あまつさえそいつは喋るわで何が何だか、という感じだ。
隼人と春菜のバカ2人は順応性が高すぎるので、既に『ロールさん』と喋っているが、普通の人間にしてみたら気でも狂ったのか、と疑わんばかりだ。
俺にしたって、いやに冷静であると思う。もう少し、取り乱してもおかしくないぐらいなのだが。
「観察に徹しよう。事の動向を見守ってから考えても遅くない」
「………………えぇ、分かったわ」
「噂で聞いたんですけど……将来、就いたら成功する仕事を教えてもらいたいなぁ、なんて」
俺たちが目の前の現実に順応しきれずにいると、能天気な春菜が続けて訊ねていた。
そう言えば、『ロールさん』はそんなことを教えてくれるんだったか。
『あぁ、成程ね……そういうことを教えてあげている、ってことになってたか』
にやにやと、いら立ちを覚える顔で『ロールさん』は続ける。
『うーん、若干ニュアンスが違うんだけどね。将来的に成功するというよりも、君たち自身に課せられた世界からの役割を教えてあげる、っていうイメージかな?』
「「課せられた役割?」」
『そう……難しい説明は省くけど、この世界に存在する生命にはそれぞれに役割があるんだ。それは植物であれ、動物でアレ、無機物であれ、全てに存在している意味がある。人類にも勿論役割がある』
『人類にはこの世界を結末まで導く重要な役割がある。この世界の結末まで人類が残っているのかは定かではないけどね。その人類の中でも、個々人に役割は割り振られている。ほとんどの人類はその役割について認識していることはないけどね』
『演劇や舞台を想像してご覧よ。登場人物全員に意味があるだろう? でも、その登場人物が好き勝手に振る舞っていたら物語として成り立たないよね。そこで僕みたいな存在が必要なのさ』
『僕の役目はその物語の登場人物に『役割』の台本を渡すことなんだ。だって、そうだろう? 演劇や舞台でやることが分かっていたら、役割が分かっていない人間に比べてとてもスマートに振る舞えるじゃないか』
「「な、なるほど……」」
何に納得したのかはよく分からないが、頷きながら話を聞いている隼人と春菜。
本当に分かっているのだろうか? 甚だ疑問だ。
『そういう意味でなら、そこの小さい子が質問した事になら答えられるよ。君達が世界から求められている役割をね』
どこから取り出したのか、鈍く光る短刀を片手ににやにやと笑う『ロールさん』。
変な所で、短刀が三つ又のフォークでなくて良かったと、感じている自分がいた。パクリ、ダメ、絶対。
「……話しは半分ぐらいしか分からなかったけど、要は役割を教えてもらえば成功する、ってことだよね?」
「……あぁ、そうだよな。人よりもスマートに振る舞えるってことは、有利だよな」
『……まぁ、結果的にはそうなのかもしれないけど。人類も変わったね。少し前だったら、納得するまで説明を欲しがる性質だったと思ったけど』
ここに来て初めて『ロールさん』のにやにや顔が崩れたように見えた。にやにや+呆れ顔といった感じだ。
「「それだったら、『ロールさん』っ!」」
『……え、あ、なんだい?』
「俺たちの」
「私たちの」
「「この世界での役割を教えてくださいっ!!」」
綺麗にハモっていた。恐ろしいくらいに息が合う二人だ。
『……いいよ、教えてあげようじゃないか』
にやにやをより一層強くして『ロールさん』はそう言った。
『それじゃ、この短刀を胸に抱えてくれるかい。刃物だから気を付けてね』
テーブルから浮遊した『ロールさん』は隼人にペーパーナイフのような形状の短刀を手渡す。
「お、おぅ……」
受け取った隼人は戸惑いながらも、短刀を胸に押し当てる。
胸に抱かれた短刀はぼんやりとその刀身を光らせた。
「……これでいいのか?」
『うん、いいよ。それじゃ、今度はそっちの小さい子にも短刀を渡してくれるかい?』
「だとよ、春菜。ほれ」
「あいよ……あ、隼人とは違う色で光った」
『うん、読み取れたみたいだ。じゃあ、短刀を返してくれるかい?」
「はい『ロールさん』、どうぞ」
『うん、ありがとう……成程、これはこれは……』
受け取った短刀をためつすがめつ確認する『ロールさん』。
『やはり聞いていただけあって凄いね君達』
『大きい子の方は、商運……いや、勝運に長けているのかな。成程成程、馬鹿ツキといっても過言じゃないね。God Luck(豪運)といったところかな』
『小さい子の方は……そうか、君は文学が好きなんだね。丁度いいじゃないか、君はConverter(変換者)の才ががあるのか』
「「???」」
何事か厨二病のような単語をぶつくさと溢しながら『ロールさん』はにやにやと笑っていた。
『大きい子は西大路隼人君と言うんだね。……君は、自分の家を更に大きくする事が出来る器だよ。僕の口から言えることは君が考えたこと、思ったことは高い確率で成功に繋がるということかな。自信を持って行動するといいよ』
『小さい君は、池澤春菜さんと言うんだね。……近い将来、君の力が必要になる。この世界を平和に導くためには君の能力が必要になるんだ。文学を読むのも好きだけど、本当は物語を書く事も好きなんだろう? 思いつくまま、心の衝動を書いてみなよ』
『本当に、絶妙なタイミングという奴なんだね。創造主のお考えになることは見当もつかないけど、この場を創り出せたのは僥倖と言っても差支えがないな』
そこまで言うと、『ロールさん』は翳していた短刀を、
ドスッ、ドスッ。
隼人と春菜の胸に突き刺した。
さっきまで固まっていた春菜も順応し始めたのか、自分から『ロールさん』に向かっていった。
『……へぇ、聞きたいことね。それは一体何だい?」
「ちょっと噂で聞いたんですけど……」
「……浩之君」
「何だ、柚繰?」
春菜が喋っているところを遠巻きに眺めていた柚繰が俺に話しかけてきた。
「これは、今、この部屋で何が起こっているの?」
「……お前の言いたいことはよく分かるよ、柚繰」
深く考えたくはないがな。
柚繰にしてみれば、いや、俺にしてみてもそうだが、こっくりさんもどきをやるからということで付いてきのだ。
それが蓋を開けてみれば、ご神体は割れる上に中から得体の知れない物体が飛び出してくるわ、あまつさえそいつは喋るわで何が何だか、という感じだ。
隼人と春菜のバカ2人は順応性が高すぎるので、既に『ロールさん』と喋っているが、普通の人間にしてみたら気でも狂ったのか、と疑わんばかりだ。
俺にしたって、いやに冷静であると思う。もう少し、取り乱してもおかしくないぐらいなのだが。
「観察に徹しよう。事の動向を見守ってから考えても遅くない」
「………………えぇ、分かったわ」
「噂で聞いたんですけど……将来、就いたら成功する仕事を教えてもらいたいなぁ、なんて」
俺たちが目の前の現実に順応しきれずにいると、能天気な春菜が続けて訊ねていた。
そう言えば、『ロールさん』はそんなことを教えてくれるんだったか。
『あぁ、成程ね……そういうことを教えてあげている、ってことになってたか』
にやにやと、いら立ちを覚える顔で『ロールさん』は続ける。
『うーん、若干ニュアンスが違うんだけどね。将来的に成功するというよりも、君たち自身に課せられた世界からの役割を教えてあげる、っていうイメージかな?』
「「課せられた役割?」」
『そう……難しい説明は省くけど、この世界に存在する生命にはそれぞれに役割があるんだ。それは植物であれ、動物でアレ、無機物であれ、全てに存在している意味がある。人類にも勿論役割がある』
『人類にはこの世界を結末まで導く重要な役割がある。この世界の結末まで人類が残っているのかは定かではないけどね。その人類の中でも、個々人に役割は割り振られている。ほとんどの人類はその役割について認識していることはないけどね』
『演劇や舞台を想像してご覧よ。登場人物全員に意味があるだろう? でも、その登場人物が好き勝手に振る舞っていたら物語として成り立たないよね。そこで僕みたいな存在が必要なのさ』
『僕の役目はその物語の登場人物に『役割』の台本を渡すことなんだ。だって、そうだろう? 演劇や舞台でやることが分かっていたら、役割が分かっていない人間に比べてとてもスマートに振る舞えるじゃないか』
「「な、なるほど……」」
何に納得したのかはよく分からないが、頷きながら話を聞いている隼人と春菜。
本当に分かっているのだろうか? 甚だ疑問だ。
『そういう意味でなら、そこの小さい子が質問した事になら答えられるよ。君達が世界から求められている役割をね』
どこから取り出したのか、鈍く光る短刀を片手ににやにやと笑う『ロールさん』。
変な所で、短刀が三つ又のフォークでなくて良かったと、感じている自分がいた。パクリ、ダメ、絶対。
「……話しは半分ぐらいしか分からなかったけど、要は役割を教えてもらえば成功する、ってことだよね?」
「……あぁ、そうだよな。人よりもスマートに振る舞えるってことは、有利だよな」
『……まぁ、結果的にはそうなのかもしれないけど。人類も変わったね。少し前だったら、納得するまで説明を欲しがる性質だったと思ったけど』
ここに来て初めて『ロールさん』のにやにや顔が崩れたように見えた。にやにや+呆れ顔といった感じだ。
「「それだったら、『ロールさん』っ!」」
『……え、あ、なんだい?』
「俺たちの」
「私たちの」
「「この世界での役割を教えてくださいっ!!」」
綺麗にハモっていた。恐ろしいくらいに息が合う二人だ。
『……いいよ、教えてあげようじゃないか』
にやにやをより一層強くして『ロールさん』はそう言った。
『それじゃ、この短刀を胸に抱えてくれるかい。刃物だから気を付けてね』
テーブルから浮遊した『ロールさん』は隼人にペーパーナイフのような形状の短刀を手渡す。
「お、おぅ……」
受け取った隼人は戸惑いながらも、短刀を胸に押し当てる。
胸に抱かれた短刀はぼんやりとその刀身を光らせた。
「……これでいいのか?」
『うん、いいよ。それじゃ、今度はそっちの小さい子にも短刀を渡してくれるかい?』
「だとよ、春菜。ほれ」
「あいよ……あ、隼人とは違う色で光った」
『うん、読み取れたみたいだ。じゃあ、短刀を返してくれるかい?」
「はい『ロールさん』、どうぞ」
『うん、ありがとう……成程、これはこれは……』
受け取った短刀をためつすがめつ確認する『ロールさん』。
『やはり聞いていただけあって凄いね君達』
『大きい子の方は、商運……いや、勝運に長けているのかな。成程成程、馬鹿ツキといっても過言じゃないね。God Luck(豪運)といったところかな』
『小さい子の方は……そうか、君は文学が好きなんだね。丁度いいじゃないか、君はConverter(変換者)の才ががあるのか』
「「???」」
何事か厨二病のような単語をぶつくさと溢しながら『ロールさん』はにやにやと笑っていた。
『大きい子は西大路隼人君と言うんだね。……君は、自分の家を更に大きくする事が出来る器だよ。僕の口から言えることは君が考えたこと、思ったことは高い確率で成功に繋がるということかな。自信を持って行動するといいよ』
『小さい君は、池澤春菜さんと言うんだね。……近い将来、君の力が必要になる。この世界を平和に導くためには君の能力が必要になるんだ。文学を読むのも好きだけど、本当は物語を書く事も好きなんだろう? 思いつくまま、心の衝動を書いてみなよ』
『本当に、絶妙なタイミングという奴なんだね。創造主のお考えになることは見当もつかないけど、この場を創り出せたのは僥倖と言っても差支えがないな』
そこまで言うと、『ロールさん』は翳していた短刀を、
ドスッ、ドスッ。
隼人と春菜の胸に突き刺した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する
大福金
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ【ユニークキャラクター賞】受賞作
《あらすじ》
この世界では12歳になると、自分に合ったジョブが決まる。これは神からのギフトとされこの時に人生が決まる。
皆、華やかなジョブを希望するが何に成るかは神次第なのだ。
そんな中俺はジョブを決める12歳の洗礼式で【魔物使い】テイマーになった。
花形のジョブではないが動物は好きだし俺は魔物使いと言うジョブを気にいっていた。
ジョブが決まれば12歳から修行にでる。15歳になるとこのジョブでお金を稼ぐ事もできるし。冒険者登録をして世界を旅しながらお金を稼ぐ事もできる。
この時俺はまだ見ぬ未来に期待していた。
だが俺は……一年たっても二年たっても一匹もテイム出来なかった。
犬や猫、底辺魔物のスライムやゴブリンでさえテイム出来ない。
俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。
こんな俺でも同郷のデュークが冒険者パーティー【深緑の牙】に仲間に入れてくれた。
俺はメンバーの為に必死に頑張った。
なのに……あんな形で俺を追放なんて‼︎
そんな無能な俺が後に……
SSSランクのフェンリルをテイム(使役)し無双する
主人公ティーゴの活躍とは裏腹に
深緑の牙はどんどん転落して行く……
基本ほのぼのです。可愛いもふもふフェンリルを愛でます。
たまに人の為にもふもふ無双します。
ざまぁ後は可愛いもふもふ達とのんびり旅をして行きます。
もふもふ仲間はどんどん増えて行きます。可愛いもふもふ仲間達をティーゴはドンドン無自覚にタラシこんでいきます。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる