Correct×Tale - 世界を修正する少女と媒介者の少年 -

椎名詩音

文字の大きさ
上 下
13 / 26

覚醒編4・光の正体

しおりを挟む
 何とか昼飯を平らげた俺たち一行は、そのまま部室までやってきた。
柚繰も特に何も言わずに付いてきたので、参加する流れなのであろう。

 部室といっても、第二図書室ではあるが……下手に騒いでも問題ない分好都合なロケーションではある。
放課後でもないので先輩たちの姿はない。

 巷で有名(らしい)なのだから、先輩たちがいても問題なかったとは思うが、ギャラリーがいる中でこっくりさんもどきをやるのも……ねぇ?

「そういや、隼人。お前これどうやって手に入れたんだ? サブカルなんて興味なさそうなのに」

「ん? あぁ、昨日繁華街の方でおっさんとチンピラ予備軍みたいなのに出くわしてな。そのおっさんがオヤジ狩りされかけてるみたいだったから助けたら、お礼にって」

「……今時オヤジ狩り? ていうか、お礼って?」

 色々と突っ込みどころは満載だが、未だにそんな古臭いことやってる奴がいるのか、この地域は90年代で時代が止まっているんだろうか?

「何でもそのおっさんがこの『ロールさん』の売人だったらしくてな、そんなことも含めてチンピラ共に小遣い稼ぎに巻き上げられそうになってたらしいんだわ。流行も流行だし、商品自体結構高く売り飛ばせるらしいからな」

 実は俺も『ロールさん』については昨日初めて知ったんだけどな、ガハハハハッ、なんてのたまう隼人。
……この野郎、あれだけ人のこと流行おくれの原始人なんて馬鹿にしてた癖に。あとでド突いてやらねば。

「そんで、チンピラが俺の顔を見てトンズラこいたからよ。おっさんが、助かったよありがとう、これをお礼にあげるよ。『ロールさん』ていうんだ、凄く流行っているから是非お友達とやってみてくれ、なんてな」

「いやにRPGキャラみたいな台詞を吐くおっさんだなそりゃ……」

 モブキャラなんてそんなもんなんだろうか? 何かちょっとその人アレじゃない?

「あの隼人が人助けなんて……! 母さん、感動して涙が出るわ、ハラハラと」

 ハラハラ、なんて口に出しながら春菜がバシバシと隼人叩いている。何だかんだでこいつらいいコンビだな。

「感動して涙を流したところでアレなんだけど、私も実は、『ロールさん』のことは今朝知ったんだよね」

 ケロッとした声で驚愕の事実をサラりと言ってのけた春菜。

「は? だって、お前、今巷で流行ってるって……」

「あはははは、うん、ちょうど今朝登校中に見たwebサイトに載ってたからそのまま説明したんだよねぇ……」

「なんでぇ、お前も最近知ったクチかい」

「そういう隼人だって昨日の今日の話じゃん」

 ガハハハッ、あはははは、なんて二人で笑いあう隼人と春菜。笑いあっているのは構わないが、何か腑に落ちない。

 カチリカチリカチリカチリカチリ。

 まぁ、いいか。腑に落ちないのはいいとして、それよりも……

「するってぇと、何かい? お前ら二人とも最近『ロールさん』のこと知ったくせに俺のことを不機嫌面の原始人なんて言ってたのかい?」

「――さぁさっ、柚繰も暇そうだから、サクッとやってみようぜ!!」

「そこまで罵倒はしてないけど、さぁ、過去は振り返らずに、今目の前にあるものを楽しみましょう!!」

 プイッと俺から目を背けていそいそと用意を始める隼人と春菜。ったく、いい根性してやがる。

 ガタゴトッ、と部室の机を移動させ、スペースを作り『ロールさん』の紙が広げられるように用意。

 男子2人が机を移動させている間に、春菜は紙を広げて用意をし、柚繰は部室のカーテンを閉めていった。
 今日が曇天なことも相まって、部屋の中は薄暗いというか、電気を点けなければ部屋の様子が分からないぐらいだ。

「雰囲気は出ているが、随分暗いな……隼人、電気を付け…………何だ、お前それ? 胸が光ってる?」

「んん? んなっ!? おぉ、ひ、光ってるわ……なんじゃ、こら」

「隼人、それ、『ロールさん』のご神体じゃない!?」

「……浩之君。あの石光るようにできているの?」

 それぞれがてんでバラバラなことを言い出して収拾がつかない。ていうか、柚繰の質問ちょっとズレてない?
 カーテンを閉めたおかげで部室内は薄暗く、だからこそ隼人の制服の胸ポケットの辺りが薄らと光っているのが分かったようだ。

「と、とにかく、発光の原因を突き止めよう。隼人、その胸ポケットで光っているものを引っ張り出してくれ」

「お、おぅ、任せとけ……」

 ガタイの割に肝が小さいのか、隼人は恐る恐るといった体で学ランの胸ポケットから発光している物体を取り出した。

「あ、やっぱり『ロールさん』のご神体だよ!」

 春菜が指を指してそう言った。隼人が恐る恐る胸ポケットから取り出したもの。

それは、朝はちり紙に包まれ、食堂ではドヤ顔の隼人に磨かれていた、あのご神体だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

処理中です...