10 / 26
覚醒編1・小粋な装飾品
しおりを挟む
………………………………
………………
………
「………………んぁ? んー……何か変な夢見た気が……ふぁああぁぁぁ」
俺にしては珍しく、パッと目が覚めた。眠気も残っておらず、頭もシャキッとしている。
「その割には、何かこう……すっきり爽快、という訳ではないですねぇ……」
そう、目覚めの良さの割には、爽快感なんか皆無だった。いや、どちらかと言うとどんよりとした心持ちだ。
ベッドから起き上がってカーテンを開けてみる。
うむ、どんより曇天、空ひとつない曇り空だ。何というか僕チン非常にがっかり。
「気のせいか、何か胸騒ぎがするような……」
ポリポリとかゆくもない頭をかいてみるが、
「………………ん?」
ジャランッといった金属が擦れる音が聞こえてきた。
音の発信元を探ると、左腕の革製のアクセサリーの金具からのようだ。
「………………はて? 何だこのそこはかとなくかっちょいいアイテムは? こんな物持ってたっけ?」
所謂革のブレスレットと称するのが分かりやすいが、ブレスレットの中心には冷たく光るダークブルーの石が填められている。何と言うか、その、オシャレカッコイイ。
ちなみにブレスレット自体はよく見ると相当使い込まれているような感がある。薄汚れているという訳ではないが、妙な存在感を醸し出していた。
そこらの露店のパチモンとは大違いな逸品だ。勿論左腕に付けた覚えもなければ、買った覚えもなかった。
カチリ。
「全く身に覚えはないが………………まぁ、俺ぐらいになるとこういう不思議アイテムも様になっちゃうよね」
出自は不明だが、俺様の腕に嵌ってるんだから俺様のモノでいいだろう。
何時の間にか俺の左腕に嵌っていた不思議アイテムの品評会をしていたら、どんよりした気持ちも胸騒ぎもどこかへいってしまっていた。
天気は変わらず曇天だったが、心持ち心は軽くなったように思う。
「さてさて、優香が来る前にサクッと準備するかな……」
スパパーンと豪快に服を脱ぎ捨て、誰に言うでもなくそう独りごちるが、
ダッ、ダッ、ダッ、ガチャ……
「あれ? 珍しいわね浩之。もう目が覚めている、なん……て?」
「………………ふっ、大谷君。ノックぐらいしてくれたまえよ。レディ足るもの、いかなるときも他人への気遣いを忘れてはいけないよ?」
ノックもなく優香が俺の部屋のドアを開けて顔を覗かせた。ちなみに、先程寝間着を豪快に脱ぎ捨てたせいで絶賛パンツ一枚だ。
紳士風にやんわりと優香に忠告するが、残念ながらうちの腕白坊主(愚息)が声高らかにパンツにピラミッドを形成させて主張している。
別段断っておくが、何も興奮している訳ではない。これは漢の生理現象だ。
というか、この年で腕白坊主にならなかったら、そちらの方が大問題だ。
顔面を引き攣らせて固まっている優香に対して、いやーん、と懐かしのまいっちんぐポーズを決めてみる。まぁ、無駄な抵抗だろうがな。
「……………………こんの、ばかぁああああああああっっっ!!」
「……たわばっ!?」
めしゃり、と俺の顔に優香の通学鞄がめり込む。と同時に、朝の平穏をブチ壊す優香の怒鳴り声がご町内に木霊したのだった。
☆
「ほんっと、信じらんないっ。朝から何考えてるのよ全く……」
ブツブツと俺を罵倒しながら前を歩く優香。何故だか耳を赤くしている。とはいえ、冷静に対処されてもそれはそれで困っちゃうわけなんですが。
「……うるせー、耳年増(ボソッ)」
一応被害者であるため、ささやかながら反抗してみる。
「………………あぁん?(ギロリ)」
「いえ、何でも……ないです」
おかしいなぁ、俺被害者のはずだよね?
「……ったく、折角起こしにいってあげたのに、まさかセクハラされるなんて思いもしなかったわ」
「俺もまさか、ノックもなしに年頃の男の部屋を開けるなんて思ってもみなかったよ」
「………………あぁん?(ギロリ)」
「私が……わるうござんした……」
その後も反抗を試みるもヤンキーも真っ青なガンを飛ばされたため(一部ど突きあり)、俺は愛想笑いを浮かべ優香のご機嫌を取りながらいつもの通学路を歩いて行ったのだった。
………………
………
「………………んぁ? んー……何か変な夢見た気が……ふぁああぁぁぁ」
俺にしては珍しく、パッと目が覚めた。眠気も残っておらず、頭もシャキッとしている。
「その割には、何かこう……すっきり爽快、という訳ではないですねぇ……」
そう、目覚めの良さの割には、爽快感なんか皆無だった。いや、どちらかと言うとどんよりとした心持ちだ。
ベッドから起き上がってカーテンを開けてみる。
うむ、どんより曇天、空ひとつない曇り空だ。何というか僕チン非常にがっかり。
「気のせいか、何か胸騒ぎがするような……」
ポリポリとかゆくもない頭をかいてみるが、
「………………ん?」
ジャランッといった金属が擦れる音が聞こえてきた。
音の発信元を探ると、左腕の革製のアクセサリーの金具からのようだ。
「………………はて? 何だこのそこはかとなくかっちょいいアイテムは? こんな物持ってたっけ?」
所謂革のブレスレットと称するのが分かりやすいが、ブレスレットの中心には冷たく光るダークブルーの石が填められている。何と言うか、その、オシャレカッコイイ。
ちなみにブレスレット自体はよく見ると相当使い込まれているような感がある。薄汚れているという訳ではないが、妙な存在感を醸し出していた。
そこらの露店のパチモンとは大違いな逸品だ。勿論左腕に付けた覚えもなければ、買った覚えもなかった。
カチリ。
「全く身に覚えはないが………………まぁ、俺ぐらいになるとこういう不思議アイテムも様になっちゃうよね」
出自は不明だが、俺様の腕に嵌ってるんだから俺様のモノでいいだろう。
何時の間にか俺の左腕に嵌っていた不思議アイテムの品評会をしていたら、どんよりした気持ちも胸騒ぎもどこかへいってしまっていた。
天気は変わらず曇天だったが、心持ち心は軽くなったように思う。
「さてさて、優香が来る前にサクッと準備するかな……」
スパパーンと豪快に服を脱ぎ捨て、誰に言うでもなくそう独りごちるが、
ダッ、ダッ、ダッ、ガチャ……
「あれ? 珍しいわね浩之。もう目が覚めている、なん……て?」
「………………ふっ、大谷君。ノックぐらいしてくれたまえよ。レディ足るもの、いかなるときも他人への気遣いを忘れてはいけないよ?」
ノックもなく優香が俺の部屋のドアを開けて顔を覗かせた。ちなみに、先程寝間着を豪快に脱ぎ捨てたせいで絶賛パンツ一枚だ。
紳士風にやんわりと優香に忠告するが、残念ながらうちの腕白坊主(愚息)が声高らかにパンツにピラミッドを形成させて主張している。
別段断っておくが、何も興奮している訳ではない。これは漢の生理現象だ。
というか、この年で腕白坊主にならなかったら、そちらの方が大問題だ。
顔面を引き攣らせて固まっている優香に対して、いやーん、と懐かしのまいっちんぐポーズを決めてみる。まぁ、無駄な抵抗だろうがな。
「……………………こんの、ばかぁああああああああっっっ!!」
「……たわばっ!?」
めしゃり、と俺の顔に優香の通学鞄がめり込む。と同時に、朝の平穏をブチ壊す優香の怒鳴り声がご町内に木霊したのだった。
☆
「ほんっと、信じらんないっ。朝から何考えてるのよ全く……」
ブツブツと俺を罵倒しながら前を歩く優香。何故だか耳を赤くしている。とはいえ、冷静に対処されてもそれはそれで困っちゃうわけなんですが。
「……うるせー、耳年増(ボソッ)」
一応被害者であるため、ささやかながら反抗してみる。
「………………あぁん?(ギロリ)」
「いえ、何でも……ないです」
おかしいなぁ、俺被害者のはずだよね?
「……ったく、折角起こしにいってあげたのに、まさかセクハラされるなんて思いもしなかったわ」
「俺もまさか、ノックもなしに年頃の男の部屋を開けるなんて思ってもみなかったよ」
「………………あぁん?(ギロリ)」
「私が……わるうござんした……」
その後も反抗を試みるもヤンキーも真っ青なガンを飛ばされたため(一部ど突きあり)、俺は愛想笑いを浮かべ優香のご機嫌を取りながらいつもの通学路を歩いて行ったのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる