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ついでに!
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一層気を引き締めて、新たにリスポーンしたゾンビにヘッドショットを喰らわす。
数体同時にリスポーンする場合、一刻も早く数を減らさないと、溜まりに溜まって、最大18体ものゾンビに囲まれる事になる。
それを避ける為に、リスポーン直後の即殺は、後の事を思えばかなりの影響を与える。
「よっしゃ!1体、リスポン即殺したぞ!!」
ユーリが高らかに声をあげると。
「おお!ナイス、ユーリ!」
「やったな!流石だ!」
少しでも楽になる事への歓喜と、即殺した勢いによる鼓舞が混ざり、シャーもアリアも気持ちが高ぶった。
そして、その効果はプレイヤーのみならず、本当の人間の思考を手に入れたNPC達にも伝播する。
「おお~ッ!」
「俺達も負けていられないな!」
そんな調子で拠点への道を突き進み、いつしか自然と、プレイヤーと武装乗員が交互に立ち、六方を防衛する形を作っていた。
そのすぐ内側から操縦士2人と男4人が武器を持ってフォローに入るという、陣形的な連携プレイが確立されていった。
男4人のうち2人はユーリが与えたアイアンクラブを。
残り2人はアリアが持ってきていた弓矢を持ち、操縦士2人のハンドガンと合わせた6人で、ユーリ達6人が形成する六角形の1歩内側に、さらに六角形を築く。
外側の六角形と内側の六角形は、各々時計回りと反時計回りで、互いに逆に回りながら拠点方向へ進んだ。
当然、女性と子どもは、その六角形の真ん中で丸く集まり、防衛の邪魔をしないように注意しながら歩いていた。
互いに隣の動きを見て距離を維持する事で、皆の動きも自然と息が合ったのだ。
「やば。順調すぎるな、これ」
ふと、ユーリがそんな事を呟いた時だった。
「うわぁ!何でここ、こんなにゾンビが居るのよ!?」
「わかんないよ!誰か助けて!!」
どこからともなく、助けを求める声がした。
「ッ!?」
それには、プレイヤー3人が同時に気付く。
「や~だ!」
「こっち来るな!」
ユーリ達はすぐに辺りを見渡すが、声だけ聞こえて姿が見えない。
すると、ロジックに気付いたシャーが、ユーリに伝える。
「ユーリ!恐らく北だ!」
「えッ!?」
「ここは地形的に、少し高台になっていて、北の草原は草むらが邪魔して地形の段差が解りにくいが、あの先は地面が1段低いはずだ!その段差で俺達からは姿が見えないんだと思う!」
「そうか!わかった!俺が行って連れてくる!」
「ええっ!?ユーリ1人で大丈夫なの!?」
「ああ!任せろって!!リーダーも、俺の穴の分、フォロー頼めるよね!?」
「私達は問題ない。先程から戦闘の流れが安定しているから、言い方を変えれば、逆に今しかチャンスは無いかもしれないが」
NPCながら、流石武装した部隊のリーダーだ。
頼りになる言葉を受けて、ユーリも覚悟を決める。
「うっし!じゃ、行くっきゃ無いな!!」
「頼んだぞ!」
「無理はしないでよ!?」
決意の言葉にシャーとアリアが声をかける。
「了解!じゃ、行ってくるわ!」
そう皆に残し、ユーリは1人、隊列を抜けて北へ向かったのだった。
ユーリが去った後、アリアは未だ心配そうな顔をする。
「ホントにユーリ1人で大丈夫なの!?」
アリアは、ユーリを1人でヘルプコールに向かわせた事を、今まで見せた事の無い顔で心配していた。
「大丈夫だ。単独行動、単騎戦闘では間違いなく俺なんかよりユーリの方が数倍強い。アイツはああ見えて、いざと言う時に本当に頼りになるやつだ。何と言っても、俺の親友だからな」
「最後のは強さに関係ないよね」
アリアも多少は余裕があるのか、シャーの言葉に呆れ顔でツッコみつつ、話を続ける。
「…でも、行っちゃったからには本人も余程自信があるんだろうけど…」
「イベントでは、1人につき一度に3体リスポーンし、倒し損ねて溜まっていっても、プレイヤー1人につき最大6体までしか同時存続されない。って事は、のんびり戦っても、6体以上のゾンビに囲まれる事は無い」
「…?何が言いたいの?あたしには危険に変わり無いんだけど…」
「今回のイベントでは大人数を護衛するから、纏まって動くのも機動性機敏性に乏しいけど、2・3人で動くなら大幅に改善される」
「だから、あたしにはそれでも危険としか…」
「いや、ボーガンやスパイククラブを持った今のユーリなら、1人でも普通のザコゾンビ程度10や20くらい余裕って事だよ」
「…え?…嘘でしょ?」
「本当だ。このゲームを2人で始めて、最初のホードの前に、偶然のお散歩ホードと呼ばれるゾンビの大群の襲撃があった。その頃、エリーゼ達も居なかった俺達は、拠点の設営もちゃんとしたのは間に合わなかった。そんな時、やつは1人で野戦に出て、殆どのゾンビがアイツに向かっていくのを、次々に倒していった。俺の方に来たゾンビも、大半はアイツが弓矢を当てて自分に注意を惹き付け、1人で最大6体ものゾンビに囲まれながら、13体全てを10分程度で撃破したんだ」
「…はい?あたしだって、たまに1発で倒せる武器を持ってるのに、クリーンヒットが無ければ1体に5分10分かけて倒してきたんだよ!?」
「素人ならそんなもんさ。だが、ブラッドムーンホードとは比べられないが、お散歩ホードは普通、5~10体程が纏まって徘徊していると言われているが、その時は通常より多い数で、実際、ブラッドムーンホードの襲撃個体数の、5分の1くらいの数だ。それを短時間で倒すんだ。まるで鬼神だよ。修羅だ」
「ホントに…?」
「まあ、アイツがまともに戦った所を見てないアリアには、信じがたいだろうけどな」
「だって、あの、あたしの拠点から帰る時だって、普通のザコゾンビに苦戦してたよね?」
「あれは、俺とハンプでいつもの倍以上長くくすぐりの刑を執行したから、疲れきって満身創痍状態だっただけだ。それでも、あれは苦戦してる様に見えて、アイツは攻撃を1つも受けてない。まだ余裕があったんだ。本当にヤバそうなら、俺やハンプがフォローに回ってるさ」
「そ、そうだったんだ…」
ユーリの3体分のリスポーンが減って、一度にリスポーンされるゾンビが6体になったおかげで、シャー達はプレイヤー2人と3人の武装隊員で対応する。
取り零しても、後ろにもまだ戦闘員が居る。
お陰で、確実に先程までよりは戦いが楽になっていた。
気を弛めたりはしないが、その分、話しなどをする余裕は生まれた。
「最初の頃って言えば、デスゲになる前だから、難易度ハードの強敵相手に1人でそれだけやってたって事だ。ついでに言えば、武器もウッドアローにウッドクラブの初期装備でだ。ザコの中にもデブで背が高いゾンビなんかは、比較的耐久が高かったから、離れて正面至近距離からアローでクリーンヒットでも当てないと、なかなか倒せないくらいだった。変な話、アリアに助けて貰った雪山での滑落も、俺とユーリが逆の立場だったら、ユーリが山男も倒して俺を助けてくれて、アリアに出会う事も無かったかもしれないくらい、俺とユーリには実力に差がある」
「じゃあ、あたしからしたら、ユーリがドジだったお陰で、あんた達に会えたって事ね。…わかった!あたしもユーリを信じるよ」
「ああ。そうしてやってくれ」
シャーとアリアが話を終え、互いに頷くと、2人の攻撃も加速する。
時折、イベント外の通常リスポーンのゾンビも来て、7体が同時存続した時もあったが、拳銃の武装隊員が1度近接を許した以外は無難に射撃で仕留められていたのだった。
数体同時にリスポーンする場合、一刻も早く数を減らさないと、溜まりに溜まって、最大18体ものゾンビに囲まれる事になる。
それを避ける為に、リスポーン直後の即殺は、後の事を思えばかなりの影響を与える。
「よっしゃ!1体、リスポン即殺したぞ!!」
ユーリが高らかに声をあげると。
「おお!ナイス、ユーリ!」
「やったな!流石だ!」
少しでも楽になる事への歓喜と、即殺した勢いによる鼓舞が混ざり、シャーもアリアも気持ちが高ぶった。
そして、その効果はプレイヤーのみならず、本当の人間の思考を手に入れたNPC達にも伝播する。
「おお~ッ!」
「俺達も負けていられないな!」
そんな調子で拠点への道を突き進み、いつしか自然と、プレイヤーと武装乗員が交互に立ち、六方を防衛する形を作っていた。
そのすぐ内側から操縦士2人と男4人が武器を持ってフォローに入るという、陣形的な連携プレイが確立されていった。
男4人のうち2人はユーリが与えたアイアンクラブを。
残り2人はアリアが持ってきていた弓矢を持ち、操縦士2人のハンドガンと合わせた6人で、ユーリ達6人が形成する六角形の1歩内側に、さらに六角形を築く。
外側の六角形と内側の六角形は、各々時計回りと反時計回りで、互いに逆に回りながら拠点方向へ進んだ。
当然、女性と子どもは、その六角形の真ん中で丸く集まり、防衛の邪魔をしないように注意しながら歩いていた。
互いに隣の動きを見て距離を維持する事で、皆の動きも自然と息が合ったのだ。
「やば。順調すぎるな、これ」
ふと、ユーリがそんな事を呟いた時だった。
「うわぁ!何でここ、こんなにゾンビが居るのよ!?」
「わかんないよ!誰か助けて!!」
どこからともなく、助けを求める声がした。
「ッ!?」
それには、プレイヤー3人が同時に気付く。
「や~だ!」
「こっち来るな!」
ユーリ達はすぐに辺りを見渡すが、声だけ聞こえて姿が見えない。
すると、ロジックに気付いたシャーが、ユーリに伝える。
「ユーリ!恐らく北だ!」
「えッ!?」
「ここは地形的に、少し高台になっていて、北の草原は草むらが邪魔して地形の段差が解りにくいが、あの先は地面が1段低いはずだ!その段差で俺達からは姿が見えないんだと思う!」
「そうか!わかった!俺が行って連れてくる!」
「ええっ!?ユーリ1人で大丈夫なの!?」
「ああ!任せろって!!リーダーも、俺の穴の分、フォロー頼めるよね!?」
「私達は問題ない。先程から戦闘の流れが安定しているから、言い方を変えれば、逆に今しかチャンスは無いかもしれないが」
NPCながら、流石武装した部隊のリーダーだ。
頼りになる言葉を受けて、ユーリも覚悟を決める。
「うっし!じゃ、行くっきゃ無いな!!」
「頼んだぞ!」
「無理はしないでよ!?」
決意の言葉にシャーとアリアが声をかける。
「了解!じゃ、行ってくるわ!」
そう皆に残し、ユーリは1人、隊列を抜けて北へ向かったのだった。
ユーリが去った後、アリアは未だ心配そうな顔をする。
「ホントにユーリ1人で大丈夫なの!?」
アリアは、ユーリを1人でヘルプコールに向かわせた事を、今まで見せた事の無い顔で心配していた。
「大丈夫だ。単独行動、単騎戦闘では間違いなく俺なんかよりユーリの方が数倍強い。アイツはああ見えて、いざと言う時に本当に頼りになるやつだ。何と言っても、俺の親友だからな」
「最後のは強さに関係ないよね」
アリアも多少は余裕があるのか、シャーの言葉に呆れ顔でツッコみつつ、話を続ける。
「…でも、行っちゃったからには本人も余程自信があるんだろうけど…」
「イベントでは、1人につき一度に3体リスポーンし、倒し損ねて溜まっていっても、プレイヤー1人につき最大6体までしか同時存続されない。って事は、のんびり戦っても、6体以上のゾンビに囲まれる事は無い」
「…?何が言いたいの?あたしには危険に変わり無いんだけど…」
「今回のイベントでは大人数を護衛するから、纏まって動くのも機動性機敏性に乏しいけど、2・3人で動くなら大幅に改善される」
「だから、あたしにはそれでも危険としか…」
「いや、ボーガンやスパイククラブを持った今のユーリなら、1人でも普通のザコゾンビ程度10や20くらい余裕って事だよ」
「…え?…嘘でしょ?」
「本当だ。このゲームを2人で始めて、最初のホードの前に、偶然のお散歩ホードと呼ばれるゾンビの大群の襲撃があった。その頃、エリーゼ達も居なかった俺達は、拠点の設営もちゃんとしたのは間に合わなかった。そんな時、やつは1人で野戦に出て、殆どのゾンビがアイツに向かっていくのを、次々に倒していった。俺の方に来たゾンビも、大半はアイツが弓矢を当てて自分に注意を惹き付け、1人で最大6体ものゾンビに囲まれながら、13体全てを10分程度で撃破したんだ」
「…はい?あたしだって、たまに1発で倒せる武器を持ってるのに、クリーンヒットが無ければ1体に5分10分かけて倒してきたんだよ!?」
「素人ならそんなもんさ。だが、ブラッドムーンホードとは比べられないが、お散歩ホードは普通、5~10体程が纏まって徘徊していると言われているが、その時は通常より多い数で、実際、ブラッドムーンホードの襲撃個体数の、5分の1くらいの数だ。それを短時間で倒すんだ。まるで鬼神だよ。修羅だ」
「ホントに…?」
「まあ、アイツがまともに戦った所を見てないアリアには、信じがたいだろうけどな」
「だって、あの、あたしの拠点から帰る時だって、普通のザコゾンビに苦戦してたよね?」
「あれは、俺とハンプでいつもの倍以上長くくすぐりの刑を執行したから、疲れきって満身創痍状態だっただけだ。それでも、あれは苦戦してる様に見えて、アイツは攻撃を1つも受けてない。まだ余裕があったんだ。本当にヤバそうなら、俺やハンプがフォローに回ってるさ」
「そ、そうだったんだ…」
ユーリの3体分のリスポーンが減って、一度にリスポーンされるゾンビが6体になったおかげで、シャー達はプレイヤー2人と3人の武装隊員で対応する。
取り零しても、後ろにもまだ戦闘員が居る。
お陰で、確実に先程までよりは戦いが楽になっていた。
気を弛めたりはしないが、その分、話しなどをする余裕は生まれた。
「最初の頃って言えば、デスゲになる前だから、難易度ハードの強敵相手に1人でそれだけやってたって事だ。ついでに言えば、武器もウッドアローにウッドクラブの初期装備でだ。ザコの中にもデブで背が高いゾンビなんかは、比較的耐久が高かったから、離れて正面至近距離からアローでクリーンヒットでも当てないと、なかなか倒せないくらいだった。変な話、アリアに助けて貰った雪山での滑落も、俺とユーリが逆の立場だったら、ユーリが山男も倒して俺を助けてくれて、アリアに出会う事も無かったかもしれないくらい、俺とユーリには実力に差がある」
「じゃあ、あたしからしたら、ユーリがドジだったお陰で、あんた達に会えたって事ね。…わかった!あたしもユーリを信じるよ」
「ああ。そうしてやってくれ」
シャーとアリアが話を終え、互いに頷くと、2人の攻撃も加速する。
時折、イベント外の通常リスポーンのゾンビも来て、7体が同時存続した時もあったが、拳銃の武装隊員が1度近接を許した以外は無難に射撃で仕留められていたのだった。
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