サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

文字の大きさ
上 下
29 / 32

護衛行軍!!

しおりを挟む
「こっちは俺が抑えるから、救助者達をヘリから降ろして、ヘリの反対側にも2人の仲間がゾンビを抑えてるから、そっちにも武装乗員を1人、助けに向かわせて貰いたいんだ!」
必死の表情で振り返ったユーリが、武装乗員のリーダーらしいNPCに伝えた。
「わ、わかった!とりあえず君にも1人付けるから、何とか持ちこたえてくれ!」
「助かる!任せてくれ!」
武装乗員の返答と要請に、アドレナリン爆発中のユーリが応えた。
「では、私が!」
「頼む!彼らは大きな助けとなるはずだ!何としても守れよ!」
「イエッサー!!」
武装乗員達のやり取りがあり、すぐに1人がユーリの方へ駆け寄りながら発砲する。
最後の1人の武装乗員は、ヘリの扉で救助者が降りる手助けをしていた。
「そうだ!!救助者と言っても男なら多少は戦えるだろ!?」
ユーリはふと、思い付いた様に武装乗員に問い掛けた。
「ああ。救助先では彼等自身でシェルターを作り、救助されるまで守ってきたそうだからな」
「だったら悪いけど…」
そう言って、ユーリは自分のバックパックをヘリの方へ投げた。
「その中にアイアンクラブが2本入ってるから、それを男2人に持たせて、救助者を守って貰いたい!!流石にゾンビの数が多すぎて、取り零してしまうかもしれないからな!!」
「そう言うことなら、俺とコイツで受けるぜ!!」
ユーリの言葉に応えたのは、ガタイのいい男性と、それに肩を捕まれたもう1人の、こちらは細マッチョな男性だった。
「俺とコイツは幼馴染みで、向こうのシェルターでも食料調達係を一緒にやってきた!外に出てゾンビ達と戦ってきた実績がある!クラブなら肉弾戦だから、俺達以外に適任者は居ねえだろうよ!!」
「それは助かる!じゃあ、クラブを取ったらバックパックをこっちに投げてくれ!!」
「おう!もう取ったぜ!?…じゃ、返すぞ!…そらよッ!」
バックパックにはボーガンの矢も大量に入っていて、手持ちが無くなったらそこから束を出さなくては、ボーガンが使えなくなる。
もっとも、できるだけ無駄にしないように、倒したゾンビからまだ使えそうなものは再利用していて、そうそう減らないのだが。
「ホラ、頼むぜ相棒!」
先ほどのガタイのいい男性が、幼馴染みだという男性にクラブを1本渡して、ヘリの傍で構えた。
とはいえ、ユーリはヘリから救助者を降ろす間も、戦いながら気にして見ていた。
ようやく、最後の女性が降り始めると思ったその時だった。
ユーリは、思わず自分の目を疑った。
「…はぁ!?」
ユーリの視線の先には、大人の女性に抱かれた、小さな少女が居たのだった。
「なん…で!?」
思わず瞠目したまま、動きが止まるユーリ。
前情報では、老人や子供は先に避難しているはずで、3人程度の女性と残りは若い男性が救助された筈だった。
「君ッ!戦闘に集中しろッ!」
ユーリのフォローに来てくれた武装乗員が、ユーリの異変に気付いて激を飛ばす。
「ご、ごめん!!でも、何で子供が!?」
我に返ったユーリが攻撃を再開しながら、武装乗員に聞いた。
「ああ、あの子はどうしても母親と一緒に居たいと言って離れなかったのだ。母親も男達よりは優先に保護する予定だったから、大幅な後回しにもならないからという理由で、こちらも了承したんだがな。まさか母親が他の女性達や最後まで残るはずの男たち数名を先に保護させ、最後まで残ってしまった。それで、最後の男性に混ざる事になってしまったんだ」
「そういう事だったのか。俺もまさか子供が居るとは思わなかったから、正直びっくりした。…あ、こっちは少しなら俺が食い止めるから、俺の仲間にも前もって子供が居る事を伝えられないか?なにも知らずに目の当たりにする衝撃よりは、まだ事前に知らされていた方がいいし、知らされた時の衝撃も知らずに見るより幾らか軽いはずだから…」
「了解!だが、向こうに行く隊員に無線で連絡できるから、私がここを離れる心配は要らない」
「おお!無線!?トランシーバーかよ!やべ!超、欲しかったやつ!」
ユーリはかねてからトランシーバーを欲しがっていた。
それを武装乗員達が持っていると知ると、俄然やる気も湧く。
「おいおい、オモチャじゃないんだ。それに、触らせても良いが、まずは市民の安全を確保してからにしてもらいたい」
漸くユーリ達とゾンビへの攻撃を始めた武装乗員のリーダーが、ユーリの興奮を宥めた。
「わかってる!」
いつの間にか、ヘリのプロペラが作り出していた風が止み、操縦士達もヘリから降りていた。
そして、念のためにヘリの扉を施錠し、ハンドガンを構える。
ヘリはもしかしたら修理すれば再び飛べるかも知れないという、希望的観測を抱いて居るのだろう。
彼等はこの世界の住人なのだから、生きる希望を見出だせば、そういう可能性を求めるのも無理もない。
しかし、ユーリ達は知っていた。
これはあくまでイベントの1つで、生き残りゲームの終着点には別の、クリア用の救助隊が来る事を。
つまり、このイベントの為に使われたヘリは、クリアには関係なく、故障が直せる事もないのだ。
従って、ヘリの残骸はイベント終了後にユーリ達でパーツや素材回収に来ようと話していた。
だが、この世界の住人の希望を、無下に断つわけにもいかない。
イベントを終えたら、拠点でシャーとアリアと話し合い、シャーの電気工学知識がある事を彼等に伝えた上で、プレイヤーだけでヘリを確認しに行くとして、拠点帰還後に修復不能をハッキリ伝える事にしよう。
そんな事を、戦いの中で思うユーリだった。
たかがNPCと言えど、本物の人間のように思考する存在の、気持ち等にも配慮するユーリの考えは、恐らくはシャー達も反対しないだろう。
「やばい!そっちに4体も同時にリスポーンしたぞ!!」
ユーリが手薄になった操縦士達の方に手を向けて、皆に知らせた。
「待たせた!!こっちは任せろ!」
そのタイミングでシャー達がヘリのこちら側へ合流する。
「うお!シャー!ナイスタイミングだ!」
丁度、操縦士達が居るヘリの前方側から回り込んで来たシャー達は、4体のゾンビがリスポーンする所からしっかりと見ていたらしい。
既にボーガンで狙いを定めながら走り寄って来ていた。
さらに。
タタタン!と軽快な連射音が先程から断続的に辺りに響いていた。
それは、シャー達の方に行った武装乗員と、リーダーの2人が持つ、SMGの発射音だった。
「おお~ッ!!SMGじゃん!!なんだよ、そんなの持ってるなら早く言ってよ!」
小型機関銃が2基もあり、しかもそれが味方の所持品だったとは。
これでかなり戦力に余裕ができ、ユーリの緊張も少し弛んだ。
それを瞬時に自覚したユーリは、気を弛め過ぎない様、心の中で自分を律する。
「ああ、すまない。実は、救助先の状況によって混戦したため、既に球数が不十分だったので、温存していたのだ」
「そうだったのか」
「ああ。従って、最後まで玉がもつか解らない為、頼りきりには出来ないので、そのつもりで助力を頼む」
「オッケイ!いいぜ!?俺とシャーなら、そこら辺のサバヲタより役にたつと思うからな!」
「サバヲタの意味はわからないが、心強いな。先程も既に君の実力に驚かされ、強さは理解しているつもりだ。これからも宜しく頼む!」
「了解!!」
リーダーにも信頼して貰えた様で、喜びを隠せないユーリは、一段とテンションを上げるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...