サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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救助作戦!!

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「うへぇ!元々向こうとそっちに居たのは見えてたけど、それプラス、イベント開始で6体もリスポーンしたな、コレ!」
「いや、あと3体、さらに地面から這い出て来てるよ!!」
艱難な状況に驚きとワクワクを織り交ぜたユーリの言葉に、アリアが追加を示唆する。
「マジか!?」
「イベリス9体と元々居た普段のリスポン2体、合計11体だ!!イベント始まっても普通のリスポーン体は消えないんだな!」
やった!と言わんばかりにテンションが上がるユーリを余所に、シャーが状況をまとめた。
「2体は先に倒しておけば良かったぁ!」
「まるで、ブラッドムーンホードの襲来みたい!」
「やるしか無いよな!?」
「まあ、このボーガンとスパイククラブがあれば、ザコゾンビならなんとでもなるだろ!」
3人とも驚きを隠せなかったが、慌てる事は無かった。
アリアもシャーも、冷静に状況把握をしながら攻撃を始める。
ユーリに至っては、困難を目の当たりにして尚、心を踊らせていたのだった。
しかし、困難な状況ほどゲーマー心を踊らせる。
こうしてテンションが上がったユーリは、楽しさで集中力が増し、動きや判断力など、サバイバル能力が格段に上がる。
そうしてこれまでも、こういう危機的状況を何度も乗り越えてきたのだ。
「距離があるうちに、ボーガンで射撃だ!」
「装填に時間がかかるけど、威力は凄い!あたし、射撃武器は弓しか使った事無かったから、正直、びっくりだよ!」
「確か、アンコモン武器の中でも、ボーガンは攻撃力だけはレア武器の弱いやつより上だからね!」
サバゲ初心者感丸出しのアリアに、持てる知識を披露するユーリ。
シャーもユーリに合わせて補足する。
「武器種によっても威力はバラバラだから、レア度毎にもピンからキリまであるって事だな!」
「そういう…コトだッ!!」
最後のユーリの返答は、至近まで接近を許したゾンビに、スパイククラブをお見舞いしながらだった。
これから、相当な数のゾンビの襲撃が予想される。
混戦必至の、大乱闘が繰り広げられる事だろう。
 「よしッ!そろそろ俺はヘリの向こう側に先に行ってるぞ!アリアも隙を見て来てくれ!」
「ええ!任せて!」
シャーの指示にアリアも応える。
どうやらアリアもテンションが上がってきて、語気が強くなる。
「そっち側はヘリの扉が開くかわからないから、もし開かなかったら、武装NPCが行くまで何とか持ちこたえてくれよ!?」
「ああ!それより、そっちも空から援護があるからって油断するなよ!?」
「わかってるよ!」
ヘリは、仕様によっては扉が片側しか開かないタイプもある。
その場合、ヘリの前方を見て左側に扉が設置される事の方が多いのだ。
そのため、反対側のシャーが対応している方に扉がない可能性が高かった。
着地前や宙空で扉から人が飛び降りる時、人の荷重が急に減るので、それによってヘリの機体の傾きを調整するのが実は地味に難しい。
操縦士は機体に残るために、操縦士が居る左側は少なくとも1人分の荷重がずっとかかり続ける。
もし、操縦士と反対側の扉から人が飛び降りると、そちら側が急に軽くなって荷重の残った操縦士側に一気に重心が移り、反動が大きくなりやすい。
その反動を減らし、飛び降りた後の機体の安定を維持しやすくするために、操縦士席のある左側から飛び降りさせる様、扉も左右両方に無い場合は左側に付いている事が多いのだった。
救助用のヘリなら尚更、ヘリから降ろすロープや縄梯子等を機内で引っ張ったりする人員が、背後から風に煽られでもしたら、
その人員がヘリから投げ出されかねない。
更に、両方に開口部を設けると一気に風が抜けるので、扉を開けた人が、開けた途端に投げ出される事にも繋がる。
従って、空中で開閉する場合は、仮に両方に扉があっても、原則片方しか開けないという決まりを設ける団体もあるのだ。
よくテレビで見る、両側を開けたヘリは、離陸時から開けていたりもするくらい、上空では急な開け閉め時に脅威となりうる強い風となる。
そんな危険性があるから、救助用などでは手違いで両方を開けない様に、元々片方しか開かない仕様になっている事がある、という事だ。
想定通りなら、操縦席のある左側に着いたユーリの方にはヘリが降下中にも武装乗員が扉を開け、射撃で援護をしてくれるだろう。
着地後も真っ先に降りてゾンビへの対応をして貰えるが、反対側は着地後にユーリ側の扉から出た乗員が、反対側に回り込むまで助けは一切無い事になる。
それを踏まえて、ゾンビに包囲されない様、2人と1人に別れる所を、扉が無い方に2人配置する事にしたのだった。
また、一人の方はユーリが適任だった。
ユーリはシャーよりもサバゲに精通し、実力も上だからだ。
「救助用のヘリだからな。即出撃型の仕様になってない可能性だってありうるから、備えるに越した事は無いだろ」
ユーリは独り言を言いながら、スパイククラブで突いて離したゾンビに、ボーガンでヘッドショットを決めた。
「リスポーン2発目も2体は倒したから、あたしはそろそろシャーの方に行くよ!?」
「ああ!ありがとうアリア!かなり減って助かったよ!」
アリアはユーリの返答に笑顔を見せ、後ろへ駆けていく。
ヘリの音はもう振動も伴って、身体中を揺るがしながら、至近まで降りてきている事を知らせた。
同時に真上からの風圧に、地面に押し付けられそうにもなる。
「飛んでるヘリの真下って、至近距離だとこんなに風圧があるのか…」
独り言も、風で息が苦しくて掠れた。
シャー達の方も、アリアが行くまで至近に3体ほど迫っていて、危うくシャーが囲まれる所だった。
そんな様子も横目で気にしながら、ヘリの強風に抗って突き進むアリアが、間一髪の所で間に合った事にも内心ホッとした。
その時。
乾いた破裂音がユーリの頭上から数発届く。
ヘリの武装乗員が、援護射撃を始めたのだ。
「やった。こっちは持ちこたえたぞ…」
言ってる間にも、頭上からの射撃は続く。
NPCの攻撃は、キャラの技量に依る所はあるが、基本的にはじっくり狙いを定め、落ち着く間を与えてやらない限り、ヘッドショットを決めてくれない。
デスゲになって以降、初戦となった、拠点に入り込んで2階で撃退したゾンビの時の様に、あれだけしっかり狙い打ちをする間を与えても、片方は頬に当ててしまう程に、命中率は頼りきれないのがNPCなのだ。
かなりな確率で身体のどこかには当ててくれるので、下手と言う程でも無ければ、一撃で仕留める事も殆ど無い程度の実力、という訳だ。
従って、援護射撃の方もゾンビにはかなり当てるので、十分に足止めをしてくれて、頼りにはなるが、とどめはプレイヤーがやるしか無い。
従って、息抜く暇はまだ与えて貰えないのが実情だった。
「まだ始まったばかりだってのに、このゾンビの量はパねえな…」
ユーリが独りゴチていると、漸くヘリが着地する鈍い音が、地面に伝わる。
「ご助力、感謝する!」
扉が開くと、第一声に武装乗員からそんな言葉をかけられた。
「ああ!助け合うのはお互い様だ!!」
「一般市民でありながら、勇気ある決断と行動に、我ら救助隊員を代表して敬意をひょうす!」
そんな事言ってる暇はねぇだろ!と、内心はユーリも思うのだが、彼らも一応は軍人の設定だから、こんな状況でも落ち着いて、ケジメをきちんと付ける事も、彼らにとっては大事なのだろうとも思う。
「ありがとう!微力ながら、全力で助太刀しますよ!!ってね!」
至近まで接近を許したゾンビに、スパイククラブで頭を叩き潰す。
銃痕も幾つも付けて、ボーガンも首や顔に刺さって、尚、至近まで迫り来るゾンビの、執念めいた空腹への欲求は、正に地獄に生きる餓鬼か何かの様だった。
そんなおぞましい欲求なんて、ヒトが持つものじゃない。
ユーリは、そんなゾンビ達に強い同情を抱くに反して、同時にこの世ならざるものを屠るため、躊躇いの念も吹き飛んだ。
「うおぉぉりゃあぁぁぁッ!!やってやるぜええェェェェッ!!」
1人、前に飛び出て、スパイククラブとボーガンを手早く操り、次々にゾンビを倒す。
「…彼は、修羅か…?」
武装乗員の1人が、ユーリの戦いを見て思わず呟いたのだった。
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