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出発!!
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朝食中、突如メールで届いたイベント発生の知らせに、ユーリ達はプレイヤー3人で話し合っていた。
シャーとアリアはこのイベントが政府の施策かなどと勘繰っていたが、それを一蹴したのはユーリだった。
「そんなのどっちでも良くね!?それより、人手を確保するチャンスだぜ!?これは行くっきゃ無いっしょ!!」
ユーリはイベントにノリノリだ。
「そうだな。どちらにせよ、俺達プレイヤーにとっては有利となるチャンスだ。アリアはどうする?」
シャーも、ユーリの言葉に素直に頷いた。
「あたしも、特に反対する理由は無いよ。それに、あたしもNPCの連れが欲しいしね」
NPCの仲間設定は、プレイヤー1人につき5人まで設定できる。
多くは街中や十字路などの店舗密集地か、住宅地、後は希にある地下シェルター等を完備した町外れの一軒家などでNPCを助けると仲間にできる。
マップは、踏破したエリアはカラーで地形などが映るが、未踏地はグレーで塗り潰されていて、基本的にはプレイヤーが初めて訪れた場所で、特定の範囲に入った時や特定の地点に着いた時に、生存者の悲鳴、所謂ヘルプコールなどが発生する。
例外もあるが、大半はイベントらしいミッションの様な形ではなく、行きすがらに遭遇するのだ。
アリアの居た雪山では、山岳地体に街は出来ないから、遭遇する場所があまり無いだろう。
過去に話していた山間の十字路に行った時に、運が良ければそこで遇えたかも知れなかったが、レアレシピ発見で運を使い果たしたか。
或いは、山岳地帯の一軒家に地下シェルターのある家があれば、かなりの確率で遇えたと思うが、アリアはそういう家を発見出来なかった様だ。
そんなアリアも、ユーリの提案に全面的に賛同し、イベントに参加する事が決定したのだった。
NPCにはゲーム進行に決定権が無い。
プレイヤーが相談でもすれば、キャラの性格に合わせて積極的に、或いは慎重な姿勢で提案を出すが、ゲームをプレイしているのはプレイヤーなので、決定はあくまでプレイヤーがするのだ。
そのプレイヤー3人が決定したので、ハンプやエリーゼは、必然的に賛成した。
「この俺にも、やっと後輩ができる時が来たぜぇ!こき使ってやるから、待ってろやぁ!」
「私、そんなに沢山の人と仲良くできるかな…」
「エリーゼぁ可愛いんだ。放っといても勝手に男から寄ってくっから、安心しろよ!」
「可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、それって、違う意味で警戒する所じゃない…」
エリーゼを気遣うハンプだが、逆にエリーゼの警戒心を煽っただけだった。
「そ、そーか?」
「バカじゃないの?ホントにハンプは女の子の事とか、全然理解しないんだから…」
いつもの2人の掛け合いも笑いを誘い、皆も緊張が解れた。
それからユーリ達3人は、例によってエリーゼ、ハンプを拠点に残し、イベント発生地へ向かう事にしたのだった。
今回のイベントは、不時着したヘリの乗員達を無事に保護する事。
具体的には、ヘリの不時着地点から、プレイヤーの寝袋を設置した地点の半径15メートル圏内に、乗員達を生存状態で連れていく事だった。
プレイヤーの寝袋は、デスゲームになる前なら、プレイヤーが死んだ時にリスポーンされる場所である。
だから、死んでリスポーンした所に強敵が居て、またすぐ殺されてリスポーンして、を繰り返さない為に、特殊な状況か、変わった思考でなければ、寝袋は安全な拠点に設置するのが定石だった。
その為、寝袋のある辺りがそのプレイヤーの拠点であると判断し、拠点が対ゾンビについても安全な地点だと判断されている。
従って、寝袋のある地点周辺に着けば、プレイヤーに保護されたと見なし、ゴールとなるのだ。
拠点は謂わばシェルター的避難地点とされ、それなりの設備によって、対ゾンビにおいても比較的安全な地点と言える。
だが、それとは別に、プレイヤー達がサバイバルを繰り広げる、この有毒ガスに汚染されていない地域、エリアの事を、このゲーム世界では安全地帯と呼ぶ。
ゾンビが蔓延り、危険極まりないエリアだが、ゾンビには遭遇しなければ襲われない分、ただそこで呼吸するだけで死ぬ毒ガスエリアよりは安全、という訳だ。
そして、今回のイベントの背景だが、そういう安全地帯は、一応、この世界にも幾つかあるとされていた。
その中で、プレイヤー達が居る所とは別の安全地帯では、救助も進められていたらしい。
そこで、その救助された人達が、軍の保護下にある巨大シェルターにヘリコプターで移送される途中、ヘリの操縦士が高度を誤って大気汚染エリアを飛行し、シェルターまでの飛行が難しくなったという。
汚染エリアの毒ガスが、ヘリの至るところを腐食させ、外装の異変に気付いた乗員はすぐに高度を上げるも、腐食は進行し、シェルターまでは到底もたないとの事だった。
そんな時、このプレイヤー達が居る安全地帯上空を移送ヘリが通過。
真下に安全地帯があることに気付き、緊急処置として旋回し、そこに不時着する。
というのが、今回のイベントのあらすじだった。
大気汚染も、毒ガスは空気より重くて地表に溜まる為、高度3000フィートも上がれば毒ガスは越えられるという。
つまり、標高1000メートルの山や高地に行けば、毒ガスは届かないのだ。
それを、計器が故障している事に気付かなかった救助隊は、計器が指し示す3000フィートよりも、実際には500フィート、凡そ150メートル強も低く飛び、毒ガスの中を長時間飛行したらしい。
ハッチ等は閉めきっていたので、飛行中に汚染されたガスが機体内に入る事が無かった。
逆にそれが、ガスの中を飛んでいる事に気付かなかった要因とも言える。
だが、機体内にガスが入っていたら、不時着どころか空中で飛んでるうちに全員死んでいただろう。
そう考えれば、ヘリの乗員達も不幸中の幸いだったと思うだろうか。
しかし、不時着する場所も、ゾンビ達に脅かされる危険なエリアだ。
乗員達も、非戦闘員を十余人も抱えての防衛戦は不利だから、プレイヤーに戦力としての協力を乞いたい所だろう。
そのヘリに乗っていた人達を無事に救助できれば、生き残った乗員達をプレイヤーの仲間にできるという事らしい。
非戦闘員と言っても、元々はエリーゼ達と同じ、一般市民設定のNPCだ。
武器を持たせれば戦えない事もない。
是非とも全員無事に保護し、拠点の守り等を強化したい所だ。
ヘリに乗っていたのは、操縦士含めて15名。
操縦士2名と武装乗員3名、救助者10名が乗っていたらしい。
怪我人、病人、老人や子供、妊婦等は、3機のヘリで何度も往復し、既に移送し終えた。
一般女性も優先的に別の機体で先に出発。
残った3名の一般女性と、優先順位で一番最後とされる若めの成人男性7名 が乗ったヘリが、不時着するという事だ。
彼らの居た安全地帯には、まだ男性が数十名残されているそうだが、無事な二機で何とか救助はできるだろう。
「さて、アリアとも協力プレイ設定は済ませたから、俺達は同じ地点に来るヘリの救助を、3人で協力しあって遂行すれば良いはずだ」
着地地点へ向かう道。
ユーリ達は歩きながらも準備を整える。
そして、これから起こるイベントに、改めて気合いを入れるのだった。
シャーとアリアはこのイベントが政府の施策かなどと勘繰っていたが、それを一蹴したのはユーリだった。
「そんなのどっちでも良くね!?それより、人手を確保するチャンスだぜ!?これは行くっきゃ無いっしょ!!」
ユーリはイベントにノリノリだ。
「そうだな。どちらにせよ、俺達プレイヤーにとっては有利となるチャンスだ。アリアはどうする?」
シャーも、ユーリの言葉に素直に頷いた。
「あたしも、特に反対する理由は無いよ。それに、あたしもNPCの連れが欲しいしね」
NPCの仲間設定は、プレイヤー1人につき5人まで設定できる。
多くは街中や十字路などの店舗密集地か、住宅地、後は希にある地下シェルター等を完備した町外れの一軒家などでNPCを助けると仲間にできる。
マップは、踏破したエリアはカラーで地形などが映るが、未踏地はグレーで塗り潰されていて、基本的にはプレイヤーが初めて訪れた場所で、特定の範囲に入った時や特定の地点に着いた時に、生存者の悲鳴、所謂ヘルプコールなどが発生する。
例外もあるが、大半はイベントらしいミッションの様な形ではなく、行きすがらに遭遇するのだ。
アリアの居た雪山では、山岳地体に街は出来ないから、遭遇する場所があまり無いだろう。
過去に話していた山間の十字路に行った時に、運が良ければそこで遇えたかも知れなかったが、レアレシピ発見で運を使い果たしたか。
或いは、山岳地帯の一軒家に地下シェルターのある家があれば、かなりの確率で遇えたと思うが、アリアはそういう家を発見出来なかった様だ。
そんなアリアも、ユーリの提案に全面的に賛同し、イベントに参加する事が決定したのだった。
NPCにはゲーム進行に決定権が無い。
プレイヤーが相談でもすれば、キャラの性格に合わせて積極的に、或いは慎重な姿勢で提案を出すが、ゲームをプレイしているのはプレイヤーなので、決定はあくまでプレイヤーがするのだ。
そのプレイヤー3人が決定したので、ハンプやエリーゼは、必然的に賛成した。
「この俺にも、やっと後輩ができる時が来たぜぇ!こき使ってやるから、待ってろやぁ!」
「私、そんなに沢山の人と仲良くできるかな…」
「エリーゼぁ可愛いんだ。放っといても勝手に男から寄ってくっから、安心しろよ!」
「可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、それって、違う意味で警戒する所じゃない…」
エリーゼを気遣うハンプだが、逆にエリーゼの警戒心を煽っただけだった。
「そ、そーか?」
「バカじゃないの?ホントにハンプは女の子の事とか、全然理解しないんだから…」
いつもの2人の掛け合いも笑いを誘い、皆も緊張が解れた。
それからユーリ達3人は、例によってエリーゼ、ハンプを拠点に残し、イベント発生地へ向かう事にしたのだった。
今回のイベントは、不時着したヘリの乗員達を無事に保護する事。
具体的には、ヘリの不時着地点から、プレイヤーの寝袋を設置した地点の半径15メートル圏内に、乗員達を生存状態で連れていく事だった。
プレイヤーの寝袋は、デスゲームになる前なら、プレイヤーが死んだ時にリスポーンされる場所である。
だから、死んでリスポーンした所に強敵が居て、またすぐ殺されてリスポーンして、を繰り返さない為に、特殊な状況か、変わった思考でなければ、寝袋は安全な拠点に設置するのが定石だった。
その為、寝袋のある辺りがそのプレイヤーの拠点であると判断し、拠点が対ゾンビについても安全な地点だと判断されている。
従って、寝袋のある地点周辺に着けば、プレイヤーに保護されたと見なし、ゴールとなるのだ。
拠点は謂わばシェルター的避難地点とされ、それなりの設備によって、対ゾンビにおいても比較的安全な地点と言える。
だが、それとは別に、プレイヤー達がサバイバルを繰り広げる、この有毒ガスに汚染されていない地域、エリアの事を、このゲーム世界では安全地帯と呼ぶ。
ゾンビが蔓延り、危険極まりないエリアだが、ゾンビには遭遇しなければ襲われない分、ただそこで呼吸するだけで死ぬ毒ガスエリアよりは安全、という訳だ。
そして、今回のイベントの背景だが、そういう安全地帯は、一応、この世界にも幾つかあるとされていた。
その中で、プレイヤー達が居る所とは別の安全地帯では、救助も進められていたらしい。
そこで、その救助された人達が、軍の保護下にある巨大シェルターにヘリコプターで移送される途中、ヘリの操縦士が高度を誤って大気汚染エリアを飛行し、シェルターまでの飛行が難しくなったという。
汚染エリアの毒ガスが、ヘリの至るところを腐食させ、外装の異変に気付いた乗員はすぐに高度を上げるも、腐食は進行し、シェルターまでは到底もたないとの事だった。
そんな時、このプレイヤー達が居る安全地帯上空を移送ヘリが通過。
真下に安全地帯があることに気付き、緊急処置として旋回し、そこに不時着する。
というのが、今回のイベントのあらすじだった。
大気汚染も、毒ガスは空気より重くて地表に溜まる為、高度3000フィートも上がれば毒ガスは越えられるという。
つまり、標高1000メートルの山や高地に行けば、毒ガスは届かないのだ。
それを、計器が故障している事に気付かなかった救助隊は、計器が指し示す3000フィートよりも、実際には500フィート、凡そ150メートル強も低く飛び、毒ガスの中を長時間飛行したらしい。
ハッチ等は閉めきっていたので、飛行中に汚染されたガスが機体内に入る事が無かった。
逆にそれが、ガスの中を飛んでいる事に気付かなかった要因とも言える。
だが、機体内にガスが入っていたら、不時着どころか空中で飛んでるうちに全員死んでいただろう。
そう考えれば、ヘリの乗員達も不幸中の幸いだったと思うだろうか。
しかし、不時着する場所も、ゾンビ達に脅かされる危険なエリアだ。
乗員達も、非戦闘員を十余人も抱えての防衛戦は不利だから、プレイヤーに戦力としての協力を乞いたい所だろう。
そのヘリに乗っていた人達を無事に救助できれば、生き残った乗員達をプレイヤーの仲間にできるという事らしい。
非戦闘員と言っても、元々はエリーゼ達と同じ、一般市民設定のNPCだ。
武器を持たせれば戦えない事もない。
是非とも全員無事に保護し、拠点の守り等を強化したい所だ。
ヘリに乗っていたのは、操縦士含めて15名。
操縦士2名と武装乗員3名、救助者10名が乗っていたらしい。
怪我人、病人、老人や子供、妊婦等は、3機のヘリで何度も往復し、既に移送し終えた。
一般女性も優先的に別の機体で先に出発。
残った3名の一般女性と、優先順位で一番最後とされる若めの成人男性7名 が乗ったヘリが、不時着するという事だ。
彼らの居た安全地帯には、まだ男性が数十名残されているそうだが、無事な二機で何とか救助はできるだろう。
「さて、アリアとも協力プレイ設定は済ませたから、俺達は同じ地点に来るヘリの救助を、3人で協力しあって遂行すれば良いはずだ」
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