サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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アリアの拠点へ!

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空は快晴の青を讃え、真っ白な雲がゆっくりと流れていく。
アリアは仲間になった初日という事で、夜の見張りは当番に入れなかったが、本人の希望で、エリーゼと共に朝早くから弁当を作った。
今日はアリアの拠点の荷物をユーリ達の拠点へ回収する。
NPC2人も、久しぶりの探索に心を踊らせていた。
物は結構あるらしいから、全員で向かう事にしたのだった。
「そういえば、アリアはこのゲーム、難易度は何で始めた?」
雪山に入った頃に、ユーリがふとそんな疑問を投げかけた。
「あたしは、こういうゲームは初めてだから、イージーで始めたけど?」
「!?」
アリアの言葉に驚いたのはシャーだった。
何故なら、ユーリとシャーはハードでプレイしていたはずだったからだ。
「ただ、ストレス発散したくて始めただけだからさ。サバゲが好きでそれなりに知識もある人達とは違って、本当に素人の初心者なんだ」
アリアが珍しく自分の事を長めに語った。
これは、仲良くしようとする気持ちの現れか。
そんなアリアの言葉を聞きながら、ユーリとシャーは同じことを考えていた。
いくらプレイヤーを、国家保有のコンピューターに纏めたとはいえ、難易度によって敵の強さ等にも差があるから、難易度の違うプレイヤー同士では、同じフィールドではプレイできないはずだった。
それは、オンラインプレイをした時の例からしても、あり得ないのだ。
イージーとハードのゾンビの強さはかなり差がある。
イージーは、ミッションストーリーモードの敵以外は一切走らないし、攻撃力も弱く、防御力も弱い。
加えて、こちらの状態異常発生率も全体的に低くなっている。
感染を例にすると、ハードでは切り傷や刺し傷を負えば、2分の1の確率で感染するのに対し、イージーでは5分の1だったはず。
ダメージも、受けるのは3倍以上だし、与えるのも、当てた位置によって倍率が変わるが、平均して3倍以上となる。
ヘッドショットに関しては細かい設定があった。
打撃、斬撃、刺突、切断、射撃、その他。
武器の大分類は、概ねこの6種類である。
主に前者4種は近接武器。
射撃とその他の一部は遠隔武器と分けられる。
そして、その他以外の主要5種には、其々の武器毎に、通常ダメージと、レア以上にはクリティカルが設定されており、それとは別に、全レア度共通でクリーンヒットがある。
ゾンビに与えるダメージ、攻撃回数を無視して、クリティカル以外に一撃で倒す攻撃だ。
一般的には、ゾンビの弱点が頭なのは皆の知るところで、常に頭を狙って攻撃しようとするだろう。
それで全て、一撃で倒せてしまうとつまらないので、厳密には、このゲームで数少ない、ゲーム設定臭い条件がある。
眉間の奥に、直径3~5センチ程度の球状の急所部があり、そこにダメージを与える事。
当たり前な理屈を無視して、ゲーム臭く制作者の意向が反映した設定では、正面の、両目の間からおでこ下部までの狭い範囲を攻撃し、その奥の急所に到達しなければ、クリーンヒットにはならない。
あるいは、斧等の切断武器か斬撃武器で、急所を通過する軌道で横か縦に切断するかだ。
つまり、急所を外し、頭が3分の1程度を切り落とされても、ゾンビは生きている。
普通のクラブの様な打撃系武器では、正面の急所以外はダメージかクリティカルになり、ダメージの場合、イージーよりハードは2倍以上の回数を当てなければ死ななくなっている。
側面にずれれば3倍近く、首から下は3倍以上のダメージを与えなければ倒せない。
しかも、首から下に関しては、ノーマルから上の難易度ではあくまでも行動不能にするだけ。
時間が経てば死ぬが、それまでは死んではいないため、落ちている首の前に足でも置いたら、噛みつかれて感染する事もある。
従って、頭だけになっても油断などできないのだ。
それだけ差があるゾンビ達が入り雑じっているとしたら、雑魚だと思っていたゾンビの中に、知らずにハードの強いのが混ざっていて、ソイツにいきなりやられてしまう、なんて事もあり得る。
すると、アリアとユーリ達の難易度設定の差は、どうなっているのか。
そこで、ユーリには思い当たる節が幾つかあったのを思い出した。
だから、ふとアリアの難易度が気になったのだ。
「そっか。やっぱり、あのデスゲームになった時以来、ゾンビ達の耐久が少し弱くなっているから、難易度は強制的に1種類に統一されているのかも」
「やっぱりか…。」
ユーリの言葉にした想像に、シャーも頷く。
「そうなの?」
アリアには何がなんだか解らない様子だが、ユーリとシャーの考察は続く。
「だが、走るゾンビが居たのは?ほら、狩りに行った時の、退散する際に遭遇した5体のうちの2体とか、あれはどうなんだ?」
シャーの疑問に、ユーリが得意気に答えた。
「走るのは、確かに走らないよりは脅威に思えるけど、耐久が低ければクリティカルやクリーンヒットが無くても、必要な攻撃回数は少ないから、ヒットアンドアウェイの基本対処法を落ち着いてやれば、倒すのは格段に難しいワケじゃない」
そう切り出したユーリは、皆を見渡して説明を加えた。
「こちらの近接武器が当たる距離は、ゾンビ側も攻撃範囲に入ってるから、向こうも攻撃モーションに入る。そのモーション中は走らないから、こちらが先に、攻撃範囲に入る前から攻撃モーションを始めておいて近づき、攻撃範囲に入った瞬間にゾンビに当てたら、直ぐにバックステップで離れれば、ゾンビの攻撃は避けられる。そして、ゾンビの攻撃が終わったら、またすぐにこちらの攻撃が当たるようにモーションしながら接近して当てる。これを繰り返すのがヒットアンドアウェイってヤツだね。こっちの攻撃が当たった瞬間は、山男みたいに強固なヤツに弱い武器で攻撃したりしなければ、ちゃんとダメージを与えられるし、ゾンビはダメージモーションで攻撃モーションが少し遅くなるから、その隙を利用した基本的な戦い方だ。とは言っても、走る敵が居るだけで、恐怖心や緊張感は高まるし、戦闘がスピーディーになって、戦いに手応えも出てくるから、難易度高めで楽しみたいプレイヤーにもそんなに飽きさせずに楽しませられる」
ユーリは、あくまで個人的な理屈を述べるが、シャーは聞いていて深く共感していた。
それだけシャー自身も、緊張感等に覚えがあったのだろう。
「だから、多分、無傷の走るゾンビみたいに、山男が屈強さに特性があって、防御力が高めだったり、その他のゾンビ達も、そういう固有の特性は残されているんじゃないかな」
「確かに。じゃあ、差し詰めナースや医者なら医療品を持ち勝ちとか、他のゾンビが足を怪我したりして這いずる様になったゾンビより、元々這いずりだったゾンビの方が這いずるスピードが早いとか、そういう所は活かされてるんだな」
「多分ね。しかもそれだけじゃなくて、イージーでやってきたアリアは、慣れてないだろうから特に注意して欲しいんだけど、ゾンビは一応、脳を破壊するとかして脳死させなきゃ死なないのが本来の特性だから、首だけになっても、口の前に手や足を置いたら、生きてた場合は普通に噛まれるから、気をつけて」
「え!?そうなの!?」
ユーリからの忠告は、頭が無くなれば死ぬという、それまでのゾンビへの一般的な認識を覆された。
意外としぶとく、初心者の気持ちとしては1段と脅威が増した様な気がしたのだった。
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