サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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レアレシピ!

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シャーが山男と対峙した地点から、200メートル程で、アリアの言う洞窟にたどり着いた。
距離にしたら近いと思いがちだが、深い雪に足を取られ、舗装も無い凸凹の山道を歩くと、感覚的には3倍は歩いたんじゃないかと思えた。
実際、時間的には15分強を費やしたのだ。
洞窟に入った後は、入り口をウッドブロックで塞ぎ、ゾンビの侵入を防ぐ為に、地面から1メートルの高さまでは強化しておいた。
そうして、少し奥に入った所でユーリを寝かせる。
「ふう。とりあえず、休憩しよう。軽く話でもしながら昼飯でも食べないか?」
昼は少し過ぎていたから、遅い昼食になるが、一息突いたシャーはアリアに食事を薦めた。
お互いの話の方が重要だが、ゲーム上、プレイヤー同士はある意味ライバルでもあるため、情報はなるべく明かさないのが通例だ。
情報を聞きたい方を全面に出すと、警戒されて何も聞き出せないかもしれない。
「ああ。構わないけど、あたしは昼食は早めに済ませたから、食べたければあんただけ食べてくれ」
シャーが思うよりはサッパリした性格の様で、話の方の警戒はして無さそうだ。
「それなら、ハーブティーだけでも貰ってくれ。そこで寝てるプレイヤー、ユーリと言うのだが、アイツの相棒が料理スキル高くて、かなり美味いんだ」
シャーは普段から、水筒の蓋とは別に用意したマイカップを使って飲み、蓋は一切使わない。
話をしながら、蓋とカップにハーブティーを注ぎ、ゲストのアリアへ普段使わない蓋の方を渡した。
「相棒?」
「ああ。今は拠点で留守番しているけどな」
相手が無警戒だと、シャーも警戒する事を失念してしまう。
見た所、アリアは1人の様だし、こんな雪山でNPCが何時までも生き延びてる可能性も低いから、恐らくはNPCが仲間になる事を知らないかもしれない。
それを考慮して、NPCの仲間の情報は、必要なら後で取引材料にする予定だったが、警戒を忘れたシャーが、思わずエリーゼの事に触れてしまった。
「仲間で集まってプレイしてるのか。それは羨ましいな」
やはり、留守番をしているのが俺達以外のプレイヤーだと思っているらしい。
「じゃあ、アリアは1人で?」
それなら好都合だと、肯定も否定もせずに話を進めた。
「ああ。あたし、正直友達とツルむのが苦手でさ。あたしと居ると、心が腐った連中によく絡まれたりするから、あたしとツルみたい人なんか居ないんだろうな」
「俺にはよく周りに気配りできる、良い人にしか見えないけどな」
「なっ!?そんなワケ無いし!つか、会ったばかりのあんたにあたしの何が解るのさ」
アリアは顔を赤らめながらも、少し険悪な雰囲気になってきた。
しかし、聞きたい情報はまだ聞けてない。
それに、さっき言ったのは本心だ。
「すまない。アリアの事を知った風に言った事は謝る。だが、その僅かな間に、アリアには俺も、ユーリも助けられた。それに、話してくれた内容からも、絡まれる自分に他の人を近付けない様に振る舞ってるんじゃないかと言う疑問が、直感的に感じられたんだ。総合して、少なくとも今のところは俺の目にはそういう優しい人柄しか見えないという事だ。勿論、それがアリアの全てでもないだろうし、それだけで決めつけるつもりもない。人それぞれ、色んな人が居て、それが当たり前で、アリアも例外無くその中の1人だし、まだ見ぬアリアが居て当然だとは思っている」
長い話になったが、誠意を持って話したつもりだった。
これで機嫌が悪くなる様なら、シャーには難しい相手かも知れない。
「なんだよ。それってあたしへの告白?」
「…は?」
突然のアリアの言葉に、一瞬、シャーの頭はパニクった。
「なんか、そんなセリフの後に『これから先も、まだ僕の知らない君を見たい。君の全てを見て居たいんだ』とかって、ちょっと前のラブストーリーの映画で、告白シーンのセリフにあったよねぇ」
聞けば、そんなセリフが巷の女子の心を掴んで、映画が大ヒットしたのを思い出した。
それと同時に、自分の言葉が恥ずかしくなる。
「…あ、ああ、いや、そ、そんなつもりは無いんだ。…ゥオホンッ!…流石に出会ってすぐにそれは無い。これでも俺は、自分で言うのも何だが、そういう事には慎重な方だと思っている」
出だしに慌ててしまったが、咳払いをして気持ちを切り替える。
「…ふ~ん。ま、良いけどさ。…で、そんな話はどうでも良いけど、そちらの聞きたい事は何?」
「え?」
突然、こちらの胸の内を射貫かれた様で、シャーも戸惑いを隠せない。
そんなシャーを、アリアは見逃さなかった。
恋愛話で緩急付けてからの核心を突く流れ。
虚を突かれた時の反応を見て、本心を探る。
話を操っていたのはアリアの方だった。
そして、舌戦ではシャーの方が分が悪いらしい。
僅かな間を、沈黙が静かに埋めた。
そして、冷や汗をかきそうなシャーが、言葉を返そうとした時だった。
「う…~ん…」
ユーリが意識を取り戻した。
「お、ユーリ。起きたか?」
親友の寝惚けた顔を見て、シャーにも笑顔が戻る。
「あー、シャーか。…おは…あ?ここ、ドコ?」
キョロキョロと辺りを見渡すユーリ。
そんな親友の呑気な仕草も、今は安心感を膨らませる暖かな日だまりの様だった。
「ユーリ。こちらはアリア。崖から落ちたお前を助けてくれた人だ」
自然と頬が緩むのも気にせず、シャーがアリアを紹介した。
「えっ?そうなの?そ、そういえば…俺達、雪山で…あ!ご迷惑をお掛けしました!俺はユーリ!助けてくれてありがとう!」
年甲斐もなく無邪気な子供の様な挨拶だった。
礼儀正しく、キチンと挨拶ができる子供が、屈託の無い笑みを浮かべる様子そのもの。
だが、それはアリアにも真っ直ぐ浸透したらしく、クスクスと小笑いを誘う。
「どういたしまして。今度からは気を付けな」
「うん。そうだね」
「ユーリ、完全に子供扱いされてるな」
未だ寝惚けてるのか、尚も子供っぽいユーリの返答に、シャーは少し恥ずかしくなって忠告する。
「そうなん?」
キョトンとした表情を見せるユーリ。
それから暫くは、3人でユーリが崖から落ちた辺りの話をしていた。
必死に探したシャーにも、ユーリが改めて感謝を伝え、アリアの強さを称賛していた時。
「あの山男を一撃って、凄いな!!俺達のアイアンクラブじゃ、最低でも6発は当てないと倒せないんじゃないかな!?」
「それだ。助けて貰った時、チラッと見たんだが、見るからに狂暴な武器持ってた様だが…」
アリアの武勇伝にテンションが上がるユーリ。
その話の流れに自然に乗せて、シャーは聞きたかった武器の話を振った。
「ああ。コレの事?」
「そう。それだ」
「うおっ!?それって、レアレシピのスパイククラブじゃん!?」
アリアが抵抗無くスッと出した武器は、既に何体ものゾンビを倒してきた事を確信させる程に、異様な空気を纏っていた。
何本もの釘が突き出し、全体は元の色が何色なのか解らない程にゾンビの血を浴びて、赤紫の禍々しい色がこびりついている。
これで殴られたら即死は間違いない。
その凶悪で狂暴な姿は、アバターのスキルの差など皆無に等しく確実に仕留めるだろう。
そんな、威圧感さえ感じる武器を前に、ユーリ達はどちらともなく生唾を飲み込むのだった。
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