サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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戦略的撤退!!

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華奢な男のゾンビ。
ゾンビウイルスに感染すると、反射神経や瞬発力は極端に落ちるが、力自体は健全な時より3倍以上に上がる。
だから、見た目が華奢でも、殴られればユーリなど簡単に吹き飛ばす力は裕にあると見て間違いない。
ゾンビには、感染経路が深く関わる肉体の欠損状態によって、能力や行動パターンが変わる。
無傷に近く、軽い傷口や目、鼻、口といった肉体の開口部等に、感染者の血が付いたりして感染したゾンビ。
仮にこのゾンビをAタイプとしよう。
そのAタイプは、肉体の損傷が極めて少ない為、状態における分類上では、特に力も強く、走ることもできる、厄介なタイプだ。
但し、感染によって瞬発力が著しく低下しているため、足を素早く前に送り出す事が出来ず、走ってもそれ程早くは走れない。
また、まあまあの頻度で足が縺れて転ぶ。
とはいえ、成人のゾンビなら、小学生低学年くらいの速さでは走れるので、日頃運動不足な社会人男性では逃げ切れない事もあり得るという設定だ。
プレイヤーの身体能力は一律だが、風邪などの状態変化で身体能力の低下が起こると、間違いなく逃げ切れない。
次に、ゾンビに喰われて感染したゾンビ。
これを仮にBタイプとしよう。
このタイプは、感染時に筋肉を他のゾンビに喰われて損失してるので、欠損した四肢は筋力もなく、それが足なら当然、走れもしない。
但し、ゾンビの牙から逃れた四肢があった場合、その四肢のみ、常人の3倍以上の力を愠んなく発揮するため、腕だけ喰われて両足は喰われてないBタイプが居たとすれば、Aタイプ同様に走ることもできてしまう。
或いは腕が無傷だったりすると、掴んだり引きちぎったりする力が半端ではない。
そんな訳で、どちらにせよ立って迫るタイプには、接近戦は避けた方が良さそうだと言える。
そして、足の筋肉の欠損が著しい、又は骨を折っているゾンビ。
仮にCタイプとしておくが、このタイプのゾンビは歩くことさえできず、這いずり回っている。
しかし、もし、腕の筋肉の欠損が無い場合、腕の力が常人の3倍あるので、余裕で身体を引き摺り回し、普通に歩いてくるゾンビと大差無いスピードで追いかけてくる。
また、腕の掴む力、引っ張る力、引きちぎる力はあるので、油断大敵である。
ここまでがゾンビの身体的状態における3タイプで、他にも、ゾンビの種族的形態における、進化したゾンビ等の分類があるが、まだ序盤という事もあり、追々説明するとしよう。

「よっしゃ!かかってこいや~!!」
「なんか、そんな決めゼリフ持ったプロレスラーが、昔居たんだよな」
「そんな事はどうでも良いだろ!俺なりの気合いだよ、気合い!」
そうこう言っている間にも、ゾンビは遠くからユーリに迫り来る。
ユーリは、感染を防ぐためにゾンビの攻撃を避けながら戦わなければならない。
従って、避け回ってもシャーの邪魔にならない様に、シャーから距離を取る為にゾンビの方へ走り出した。
「うおーッ!」
15メートルは離れた辺りで、ゾンビと至近に居合わせた。
「ブシャァァァーッ!!」
ゾンビは蛇の威嚇みたいな咆哮をあげて、両手を上に振りかざし、目の前まで迫ったユーリに襲いかかる。
「ウオリャァァッと!!」
掛け声と共に、テープ状に伸ばした鉄板を巻き付けた棍棒は、見事にゾンビの頭に当たった。
「グギャアァァオ!!」
断末魔の様な悲鳴に、こっちまで死を意識させる圧力がのしかかる。
再び今度は片手を振り上げたゾンビに、耳の辺りを狙って振りかぶった棍棒を横一閃に叩き付けた。
「グワシャッ!!」
変な断末魔をあげ、腐った首からブッツリと千切れた頭が吹っ飛んでいく。
ボトリと地面に落ちた其は、紛れもなくこの世の地獄を垣間見た様な形相で、上目遣いに虚空を睨んでいた。
「よし!一先ず完勝!」
ガッツポーズを決めるユーリの目の前で、残された首から下がその場に崩れ落ちる。
「そ、そうか、何か持ってるかもしれないしな…」
ユーリは戦利品回収を思いだし、汚物を触る様な思いで衣服をまさぐった。
すると、思わぬ戦利品を得ることになった。
死体の背中側、腰のベルトにそれはあった。
「やべ!コイツは超ラッキーだぜ!…なぁ!シャー!聞いてくれ…よ!?」
喜びのあまりシャーに見せびらかしたくて、少し離れて鹿の解体をしている親友に声をかける。
が、その親友の居る方角には、嫌なものが一緒に視界に入った。
「…う、うっそ…だろ!?」
声のトーンを落として、我が目を疑う。
「…や、やべぇ!コイツはやべぇ!何とかしてシャーに伝えないと!!」
ユーリが焦るのも無理無かった。
なぜなら、ユーリの視界に映ったソレは、狂暴で凶悪、しかも脳天以外への攻撃には微動だにしない、殆ど効かないくらい強靭な肉体を持つ、ゾンビ化した熊だった。 
アイツは罠にはめてる間に、それこそ銃火器をガンガン脳天にブチ込まないと殺られてくれない。
普通のゾンビより何倍も厄介すぎる。
今の俺達じゃ、罠の準備も無いし、銃火器も今手に入れたピストル1丁じゃ話しにならない。
ここは戦略的撤退の1択に尽きる。
とにかく、ヤツはまだこちらに気付いて居ない様だから、腰を低くしてシャーの元へ急ごう。
頭で考えて、即行動に移し、シャーの元へと近づいた。
それ程離れていたつもりは無いのだが、恐怖と緊張で、シャーの居る所までの距離が遠く思える。
早く着け、早く着け。
気ばかり焦りながら、しかし行動は確実にゆっくりと歩を進める。
心臓を鷲掴みにされている気分。
そう思わせるくらい、心臓の鼓動は強く振動し、骨を伝って身体全体に響いていた。
「ふう、やっと終わった」
丁度、解体を終えたらしいシャーの元へ、ユーリが必死の形相で辿り着く。
「なッ…!?」
『なんだ!?どうした!?』と言わんばかりのシャーの反応に、指を立てて自分の口元へ添えながら、シャーの口を塞いだ。
視線をずらして熊の方をみやると、幸い、聞こえてない様で、まだこちらに気付いて居ない。
しかし、地面の臭いを嗅ぎ始めた様子から、生肉の臭いには感付いている様だ。
一刻の猶予もない。
「いいか、声をあげずによく聞いてくれ」
ユーリが状況説明の前置きとして、そう切り出した。
シャーもただ事じゃない事を察し、コクコクと頷く。
「今はまだ距離があるけど、お前の後ろの方にゾンビ熊が居るんだ!!」
圧し殺しながらも力強く伝えたユーリの声が、シャーには説得力十分だった。
驚き目を見開くが、声は出さない。
「今の俺達じゃ敵いっこないから、ここは逃げるの1択だと思う」
ユーリは熊の様子を窺いながら、シャーに提案する。
勿論、シャーも全面的に賛成な様で、声に出さずに再びコクコクと頷いた。
「うし。そうと決まれば善は急げだ。腰を落として、茂みに隠れながら、音を立てない様に逃げよう!」
そう言って最後に熊を一瞥したユーリは、鹿の足肉を2本と胴の半身を背負いながら、後ろを振り返って進みだした。
シャーも同じくしてその後を追う。
しばらくすると、ユーリが確認のために後ろを振り向いた。
熊は結構遠退いたものの、シャーがユーリを越えた先を見て、今度はシャーが驚くことになった。
「ヤバい…」
ポツリと呟くシャーに気付き、ユーリも進行方向へ振り向いた。
するとそこには、5匹のゾンビグループまで臭いに引き寄せられていたのだった。
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