サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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…一生!?

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吹雪の中、雪山に狩りと雪集めに来ていたシャーとユーリは、視界の悪さから狩りを諦め、雪だけ持って帰ろうとしていた。
しかし、自身の不注意でユーリが崖から滑落。
シャーは落下地点とおぼしき場所に、ユーリを探しに降りた。
そんな時。
シャーに、山男ゾンビの牙が襲いかかる。
山男の攻撃に足をやられたシャー。
もはや、逃げることも叶わない。
「グアァァァーーーッ!!」
山男が、攻撃が当たった事と血の臭いが増した事に興奮して雄叫びをあげた。
ふと、山男の後ろに見えたもう1つの影が気になって、シャーはその影を見た。
やはり、影は山男の雄叫びに呼び寄せられ、こちらに近付いて来ていた。
「流石に、これは無理だ」
山男から足を攻撃された際、出血と感染で体力を削られ、痛みで走る事もできないシャーは、絶望的状況に、生を諦めるしか無かった。
終わった。
ここで、俺達はリアルに復帰すること無く、命を落とすのだ。
山男との距離は、互いの手が届く程に至近に迫っていた。
荒々しい呼吸だが、体温の無いゾンビの吐く息は、シャーのそれより幾分か白煙が薄い。
その呼吸が止まった刹那。
山男は睨み付けるだけのシャーを見下ろす様にして攻撃モーションに移って右手を振り上げた。
「グアオォォーーッ!!」
山男が、右手をシャーに振り下ろそうとした、その時だった。
「オアッシャオォーッ!!」
奇妙な声をあげて、山男が左へ倒れる。
「ッ!?」
シャーは突然の事で、倒れた山男に瞠目する。
すると、山男の後ろに居た影が、ゆっくりと近付いて姿を現したのだった。
「ハッ!?あ、あなたは…?」
フードポンチョコートから、何本もの釘が突き出した棍棒がヒョッコリと出ている。
その、ゾンビの血が滴る、えげつない武器にも驚きながら、シャーは声をかけた。
「やっぱりか!?こんな雪山エリアの奥に、生存者が来るとは…」
影の主は、不思議そうにシャーを見ながら、フードを捲って素顔を晒した。
「あたしはアリアって言うプレイヤーだ。あんたは?」
雪と同化しそうな白銀の髪に深紅の瞳。
ロングストレートを後ろで1つに纏め、ポニテにしている。
服装はマントの様なポンチョコートに覆われて見えないが、足元はニーハイカットブーツで、膝近くまで覆うポンチョコートの中までブーツの中身は露出していなかった。
「あ、俺はシャイニード。シャーと呼ばれている。助かった。ありがとう…」
「お互い様でしょ。って、怪我してるじゃないか。感染は?」
「ああ。大丈夫。医療キットと血清はバッグに入ってるから」
そういって、背中のバッグを前に降ろして、中身を漁る。
「じゃあ、手当てしながら、ちょっと待っててくれ」
「え?ああ。わかった」
シャーの了解を得て、アリアは背を向けて吹雪の中に消えていった。
小さい音は掻き消されてしまう程の風だが、一先ず近くにゾンビも居ないらしい。
落ち着いて、崖の方に身体を引き摺り、上半身を崖に凭れかけた。
さらに、足を伸ばして楽な姿勢をとってから、傷の処置方法を思い出す。
先ずは体力が削がれる流血を直さないとならない。
医療キットから、皮膚細胞シートと筋肉繊維細胞シート、接着剤の3点を取り出し、傷の中に筋肉繊維細胞シートを詰める。
傷口の深さに合わせて細く切ってから、サンドするように挟むのだ。
そうして傷口を押さえてから、皮膚細胞シートを同じく細く切って、先程のシートより外側に、傷口の表面部分に挟む様に入れ込み、塞ぐように押さえて、傷口を接着剤で接着する。
シートも接着剤も、共にips細胞から開発された医療品で、縫合するよりキレイな皮膚再生を、しかも短時間で可能にする第一類医薬品だ。
最後に傷が開きにくくする為に、大きいメッシュシートを、傷口が閉じる方向に引っ張り合わせながら張り付けて、傷の処置は終わる。
これで、出血も止まり、体力の減少も止まった。
さらに、体力も半分まで減っていた所を、85%まで回復した。
それら状態を確認してから、血清を注射器に移して、腕に打つ。
これで、感染マークも視界から消え失せ、一先ずシャーの死の危険からは逃れたのだった。
そうしてホッと一息突いた時だった。
「お待たせ」
先程のアリアがシャーの元へ戻って来た。
「いや、丁度処置が終わった所だ。…と、それは…」
シャーの目に、アリアの両肩にぶら下がる腕が映る。
「…ま、まさか!?」
「…ああ、この人もすぐそこで倒れてて、まだ息があったから、連れていこうと思ってさ」
「ッ!?」
アリアの言葉に、失った光を取り戻したかの如く、シャーの脳裏に希望が膨らんでいく。
いや、まだ、顔を確認していない。
見ず知らずの人ではシャーの絶望は晴れない。
「実は、俺の親友がこの崖から落ちて、俺はソイツを探してたんだ」
「そうだったのか。この人がそうか?」
アリアは上半身を右に捻って、背中に担ぐ人物をシャーに見せた。
そこには、紛れもないユーリの姿があった。
「ああ。…ああ。…間違いない。…良かった。本当に…」
女性の前とか関係無く、涙が溢れて止まらない。
本気で失ったと思っていた。
本気で絶望を感じた。
それが、生きていてくれた。
それが、無性に嬉しかった。
「良かったね。間に合ったよ、あんたは」
アリアの言葉は、シャーの必死な努力も報われた気がした。
短くも、シャーにはこれ以上無く暖かな、優しい言葉だった。
「いや…」
しかし、実際にはアリアが助けてくれた。
ユーリも、シャー自身も。
それはシッカリと、自分に刻み込むべき反省点ではないか。
「何もかも、アリアのお陰だ。本当に助かった。ありがとう」
「さっきも言ったけど、こういうのはお互い様だろ?あたしが危機の時には、今度はあんた達が助けてくれる事だってあるかもしれないんだ。そんなに大仰に感謝しないでくれよ。只でさえ、命が簡単に失われる様な過酷なゲームの世界だ。事あるごとにそんな感謝されてちゃ、やりづらいってもんさ」
「確かに。でも、これはバカだった俺達なりのケジメみたいなものもある。だから、今だけ感謝させてくれ。仮にも命を救われたんだからな」
「ああもう、わかったよ。好きにすれば良いさ。…で、お二人はこれからどうする?とりま、一休みするなら、この崖沿いを北にもう少し行けば、あたしが鉄とか採掘してた洞窟があるから、そこでも軽く休むくらいならできると思うけど」
「時間的にはまだ昼過ぎか。じゃあ、少しお邪魔させて貰おう」
「よし。じゃ、案内するから付いて来な」
「ああ。あ、ユーリは俺が」
男勝りで快活な女性との会話も一段落し、アリアの言う『鉄などを採掘していた洞窟』を目指す事になったシャーとユーリ。
シャーには、もう1つ、アリアに聞きたいことがあった。
その話も、タイミングが合えばそこで聞けるかもしれない。
そう思って、ユーリの了解もなく、シャーはアリアに付いていくのだった。
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