サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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ショセン!!

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4人は、拠点の2階で今後の方針を相談していた。
粗方、方向性は定まってきて、これから具体的な行動について話し合おうという所だった。
何やら階下らしい方向から、物音がしたのだ。
「シッ!」
「!?」
4人に緊張が走った。
「何か物音がする!」
声のトーンを落として耳を澄ませる。
「あ~…、あアァぁッ、…あぁ~…」
「ゾンビだ!」
低く呻く声に、いち速く反応したのはシャーだった。
「でも、この声、完全に建物の中に入ってないか?」
声の異変に気付いたのは、ユーリだ。
疑問に思うのも無理は無い。
元々のハザードトゥダイでは、幾つか抜け道の様なバグがあり、ゾンビが侵入できないバリケードを張る事ができたのだ。
そのバリケードというのは、素材は木製でも、石やコンクリートでも構わないが、厚さ7~8センチ程度のプレートを使って、縦に重ねて作る。
1枚の厚さは、実際には50センチも到底至らないが、ここがバグの要素で、薄いプレートでも、50立方センチ1マス分の"モノがある事として処理される"のだ。
それを縦に重ねると、あら不思議。
7~8センチのプレートの上に、40センチ以上の空間を空けて、2枚目のプレートが置かれるじゃありませんか。
しかも、50立方センチのマス内であれば、配置や向きを変えて置く事ができた。
それを活用して、2枚目はマスの上部に配置してみる。
すると、どういう事でしょう。
2枚目を上一杯に上げて水平に置けば、1枚目との間には、84センチ前後もの空間が空いてしまったではありませんか。
さらに、1枚目と2枚目の間に、5マス毎に15センチ角の柱でも立てたら、柱が左右3マスずつのプレートを支え、柱と柱の間の、左右の4マスずつについては、完全なリソース無しのマスが空く事になる。
柱のマス自体も、上下に40センチ以上の隙間があるにも関わらず、下のプレートのマスにしっかり固定され、上のプレートのマスを支えている仕様とみなされるのだ。
そして、15センチ角の柱は、細いお陰でゾンビから見ても壊す程の障害物ではなく、避けて進むだけの回避物の扱いだった。
ついでに言うと、プレートも、立てて壁のように設置していたら破壊対象になるが、水平に置いたものは乗り越えていくだけの床板等の段差程度の扱いだった。
それらのリソースの特徴を利用して、ゾンビが侵入できないバリケードを作るのが、過去作からプレイヤー達の間で語り継がれてきた、無敵拠点の建造方法だった。
ゾンビの目線からは、水平に置いたプレートは地面や床と一体化して見え、まさか腰の高さにあるとは思えない。
おでこの高さにあるプレートは、2階の高さの天井と同化し、おでこの高さに在ることを認識しない。
ゾンビ達からしたら、目前には何も障害物は無いのに、視認できない何かで行く手を阻まれ、前に進めない、と言うような心境だろうか。
その裏技を知るプレイヤーは、今作でもそのバリケードで拠点を囲い、進めないのにひたすら前に進もうと歩き続ける、滑稽な姿を晒すゾンビ達を、安全圏である囲いの中からプレートの隙間を狙って弓矢等で攻撃し、無傷で倒すと言うのが、拠点での、対ゾンビ撃退の対処法だった。
因みに、ゾンビが着ている衣服のポケット等に、アイテムを持っている事が多く、倒したらそれらを回収するのは常識だった。
拠点で複数のゾンビに囲まれ、バリケードに守られながら倒した時、地面に倒れるゾンビが他のゾンビに踏み潰されたりして、アイテムまで壊されたりしない様に、なるべく早く回収したい時がある。
そういう時は、しゃがんでバリケードの下に潜り込めば、ゾンビから見えないので攻撃を受ける事はない。
だが、この時、這いずりゾンビやゾンビドッグ、手を使って4足歩行してくるスパイダー等が居ると、立った時に腰の高さにあるプレートよりも、それらのゾンビの視点が低い為、プレートの下に潜り込んだ時に近接状況になり、攻撃を受けてしまう。
それを避けるために、それらのゾンビが来たら真っ先に殺しておく必要があった。
バリケードの方にも、例外として破壊される方法はあって、無敵と言いながら、穴は幾つかあるのだが、耐久力が下がれば補修もできるし、普通に点検等も行って、素材が集まれば随時強化し、傷付けば即刻補修していれば、いきなり破壊される事は無い。
そして、ユーリ達も例外無く、そのバグ活用のバリケードを信頼し、拠点の周囲を囲っていた。
つまり、バグによって、ゾンビの拠点内への侵入はあり得なかったはずなのだ。
それなのに、外からではなく、拠点内の1階から声が聞こえる。
「ああ、リアル化がさらに発達した世界に来て、以前は侵入出来なかったはずのバリケードも、この世界では役に立たなくなったって事だな」
もう、そう考えるしかないのか。
「え?マジかよ!?それじゃ、俺達の拠点、1階なんて簡単に侵入されちゃうじゃんか!?」
「バカ、ユーリ!でけぇ声出すな!」
  ハンプがユーリを叱り付けた時、部屋の中央に位置する階段から、ギシギシと音がする事に気付く。
「階段まで来たッ!」
トーンを抑えてシャーが皆に指示を出す。
「エリーゼとハンプは後方からいつも通り弓で援護!俺とユーリで階段の左右から挟み撃ちだ!」
「「了解!!」」
皆が配置について、ゾンビを待つ。
暫くして、おもむろに階段から顔を出したゾンビは、正面に立つNPC2人に気が付いた。
エリーゼとハンプをロックオンしたゾンビは、「キシャアァァーーッッ!!」と威嚇をしながら動きを1段早めた。
左足を庇うように引き摺り、走れないながらも階段を上がるペースは確実に少し早くなった。
右側の裂かれた頬からだくだくと涎が垂れる。
かなりの飢えをむき出しにして、右足だけで1段ずつ、早足で上がってくる。
侵入したゾンビは単騎しか居ない様で、他に呻き声等は無い。
ユーリ達も、標的が1匹である事を察すると、武器を握る手に力を込めた。
ゾンビは、階段を上がりきった直後、狭い部屋の中、弓を構えるNPC2人に飛び掛かろうとした。
刹那。
階段の両サイドに建てた、転落防止の板張り手摺の影から、ユーリとシャーがクラブで殴りかかる。
加えてほぼ同時にハンプとエリーゼが弓を放つ。
次の瞬間には、ゾンビの左目に1本と右頬を貫通して喉奥に1本の矢が刺さり、間髪入れずに2本の棍棒が頭を直撃。
そのままゾンビを床に叩きつけたのだった。
4人は、床に倒れた活ける屍が動かなくなった事を視認して、周りに集まった。
完全に頭蓋が陥没している姿を見て死んだ事を確認し、ハイタッチやガッツポーズで勝利を喜んだのだった。
「よっしゃあ!」
「倒したぞ!」
「みんな、ケガは無いわね」
「まー、こんなモンだろ」
世界転移後の初戦は、想定外の侵入に緊張こそ半端なかった。
だが、所詮は1匹。
4人に一斉攻撃を受け、難なく倒されるのだった。
しかし、バリケードも役に立たないとなると、これからのゾンビ達との長きに渡る戦いに向けて、拠点改造に大きな課題を残したのだった。
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