サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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キカン!!

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洞窟の中は、吹雪の外に出ているよりは幾らか暖かく、入り口の松明の明かりが、気持ちの方にも暖かさを与えてくれた。
それ程広い洞窟ではない。
故に、焚き火程の火を炊くと、煙が直ぐに充満してしまいそうだ。
そんな状況を考慮してキャンプファイヤーはお預けする。
低い所は結構ヒンヤリするが、狂気としか思えない武器を前に、ユーリ達は話に熱くなっていた。
「レアレシピとは何だ?」
少し興奮気味なシャーは、ユーリの発言に疑問を呈した。
「今作の融合作品だけに、レシピのレア度が設定されたんだ。貴重な物とか強い武器とかのレシピが簡単に手に入ったら面白くないだろ?」
「まあ、そうだな」
ユーリの説明に、シャーも頷く。
数々のプレイヤーを悩ませた原因の1つでもあるこのシステムだが、ユーリとシャーには楽しみの一環でしかない。
「そんで、そのアリアさんが持ってるスパイククラブは、強力な武器だからレシピのレア度を上げられてて、なかなかレシピが見つからない様に設定されてるんだよ」
「なるほどな」
楽しそうに話すユーリに、平然と頷くシャー。
やめてしまったプレイヤー達が見たら、「コイツら頭おかしいだろ」等と言われそうな状況だが、もう1人、平然と話を聞く者がいた。
「へぇ。コレって、そんな大層な物だったんだ。じゃあ、あたしはかなりラッキーかもね」
難易度を低くしても、多くのプレイヤーが難しいと言ってやめていったこのゲーム。
プレイヤー達はゾンビと相対し、その手強さに手を焼いた事だろう。
そういう時、強力な武器が作れたら、どれだけ戦闘が楽になるか。
普通のプレイヤーなら誰もが思う事だとは思うが、レア度設定のお陰で強い武器はなかなか手に入らない。
「こんな弱い武器ばっかりで、フォードの時とかどうすんだよ!」等という文句は、製作者側にも多数メールで送られていた。
「正直言って、超ラッキーだね!クラブの中では3番目に強いレア武器で、スキルのクラブ攻撃力にかかわらず、一撃必殺のクリティカルヒットが出せる武器だよ」
「そんなに良い武器だったのか、コレ」
ユーリの興奮は冷めやらず、アリアの感嘆もスルーして続ける。
「スパイククラブの特性は、一般的に量産型のゾンビならクリティカルで一撃で倒せる事がある事。で、ポリスとかソルジャーとかみたいな特殊系はクリティカルが出ても一撃じゃ殺せないけど、かなりのダメージは与えられる。山男は量産型の人形ゾンビの中では最強だけど、量産型だから一撃で倒せたって事だね。因みに、クリティカルは確率で出るから、クラブ攻撃力は関係無いけど、クラブ技術の方のスキルを上げるとクリティカルが出る確率が上がるんだぜ!?」
「じゃあ、あの時アリアが一撃で倒したのは、クリティカルが出たからだったんだな」
「なるほど。確かに、あたしが一撃で倒せるのは、だいたい8~10体に1体くらいで、他は全部、3発4発くらい当てて倒してたかな」
ユーリの説明には、持ち主のアリアも納得する様子。
シャーから見ても、説得力があり、さすがサバゲばかりやって来た幼馴染みで親友のヲタクっぷりを見直した。
「俺も結構調べたが、このゲームの知識の量では、やはりユーリには敵わないな」
「あんたら、本当に仲が良いんだね」
シャーが恥ずかしげもなく人前で親友を讃える所を目の当たりにして、この2人の絆の深さを強く思い知った。
「まあね。俺ら古い付き合いだから!」
「ああ。でも、ユーリには謝らなきゃな」
「え?なんで?」
「いや、正直、俺はアリアさんに助けてもらうまで、諦めてたんだ。俺の事も、ユーリの事も」
洞窟の中が只でさえ松明の明かりだけで薄暗いのに、シャーの反省する空気が更に暗く思わせた。
「何言ってんだよ。そん時はそん時だ。絶望的な状況に陥って、それでも希望を抱けなんて、誰もができる事じゃないんだから、諦めるのも無理ないし。そんな事で責任とか感じる必要なんて無いぜ?だって、もしシャーが諦めて、誰も助けてくれなくて、俺が死ぬことになっても、シャーは絶対に全力で助けようとしてくれてた事を信じているからさ。だから、俺はそんな全力で頑張ってくれたシャーを、恨んだりしない」
ユーリが真剣な眼差しをシャーに向ける。
それまで俯いていたシャーも、ユーリの真っ直ぐな眼を見て頷いた。
「そうだな。それは俺も同じだ。逆の立場でも、俺はユーリを恨まない。そうだよな。そうだったんだよな」
「そうだろ?お互い、根っこの部分は同じだ。だから、こんな殆どのプレイヤーが居なくなった、不人気どころかクレームだらけのゲームで、一緒に楽しくやってこれたんじゃないか?」
男2人に笑みが戻ると、端から見ていたアリアの眼にも、2人が光に包まれているかの様な錯覚を覚えた。
「…あ、あたしもあんたらに、ついて行っても良いかな?」
2人の空気感が羨ましくもあったかもしれない。
気付けば、無意識にそんな言葉を口から溢していた。
「え?良いの!?」
「本当か!?」
男2人が驚きを隠せず、アリアを見る。
アリアは2人の様子にギョッとして、思わず口を突いた言葉を反復し、改めて恥ずかしさが込み上げた。
「…あ、ああっ!そ、そうだ!会ったばかりの女にいきなりそんな事言われても、びっくりするよな!悪い、急過ぎたから、まあ、ゆっくり考えてからでも…そ、それまであたしもこの辺に居ると思うから…あ、ああ、それまで待ってる事にしよう!そうだ、そうだな、うん…」
顔を真っ赤にして、慌てて言葉を取り繕う。
そんなアリアを見ていた2人にとって、むしろ願ってもない言葉だった。
突然言われた時は驚いたが、アリアの慌てように少し落ち着きを取り戻した2人は、改めてアリアの言葉を頭で振り返る。
そして、「ついて行っても良いかな?」と聞かれた時のはにかんだ笑顔を思い出す頃には、もう既に答えが決まっていた。
「善は急げだな!」
「ああ。決まりだ!」
「…え?」
「これから宜しく!アリア!」
「アリア、宜しく頼むよ!」
「…ええ?…い、良いの?」
「良いも悪いも、アリアみたいに強力な仲間は、こっちから仲間に願いたいくらいだ」
「そういう事だ。気が変わらないうちに了解して、仲間になってもらった方が俺らも嬉しいしな!」
ここぞとばかりに男2人に畳み掛けられ、思考がフワッとしたままに仲間になることになったアリア。
その後も3人で雑談を交わしながら、一先ずはユーリ達の拠点で、残してきた2人と合流する事になった。
「あたしの拠点はこの更に北だけど、荷物取りに行くのは日を改めた方が良いかもね。あんた達の拠点は雪山の外なんでしょ?だったら、帰り着く前に夜になって、ゾンビが大量にリスポーンされると厄介だからね」
アリアの助言に甘え、アリアの荷物は明日にでも取りに来る事になったのだ。
そうして、ユーリ達にとって帰路となる道を行く。
雪山で山男とは1体遭遇し、雪山を出ても普通にどこにでも居るゾンビに5体程遭遇した。
だが、アリアと言う強力な仲間を得て尚、全て1度に1体ずつのエンカウントだった為、難なく倒しながら進む事ができた。
やがて、日が暮れ始めた頃、拠点で待つエリーゼ達の眼前に、地下から顔を出したユーリ達が笑顔で手を上げたのだった。
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