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カリでのカリ!?
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ユーリ達は、食肉確保のために狩りに出ていた所へ、ゾンビ化した熊と遭遇した。
ゾンビ熊は、脳天以外への攻撃には微動だにせず、怯まない強靭な肉体で、下手なゾンビより何倍も強敵だった。
その為、装備が不十分なユーリ達は、熊に気付かれないうちに撤退を余儀無くされていた。
熊は、実は野生動物の中でも聴覚や嗅覚はそれ程発達していない。
臆病なので、本来なら人間にすらビビっていて、鈴などの音を鳴らしながら歩けば、距離があるうちに熊から逃げていってくれるくらい、小心者なのだ。
しかし、熊が人を襲う話が尽きないギミックには、次のような事が予想される。
人が鈴などを持たずに入山し、熊も耳が良くないから、10メートルや15メートル等の至近距離でバッタリ鉢合わせするまで、互いに足跡にも気付かず、その運悪く至近でバッタリ会ってしまった人が、熊に襲われる。
熊も恐怖で威嚇をして直立し、その直立を恐れて人が大きな声を出すと、熊はさらにその声に驚き、先手必勝の如く先に攻撃してしまうのだとか。
そう考えれば、もう少し離れた辺りで、そろそろ本気で走っても、追い付かれはしないだろう。
そう思うと、少し肩の荷を降ろせた気分だ。
こんな所で死ねない。
もう少し。
もう少しだ。
そう考えながら、ふと後ろを気にして見る。
熊は結構遠退いたものの、シャーがユーリを越えた先を見て、今度はシャーが先に驚くことになった。
「ヤバい…」
ポツリと呟くシャーに気付き、ユーリも進行方向へ振り向いた。
するとそこには、5匹のゾンビグループまで臭いに引き寄せられていたのだった。
「こ、これは…最悪だ!!?」
「くそッ!後ろには熊で前にはゾンビ五匹!?逃げ切れるワケない!」
「いや、待て。考えよう。冷静に、考えるんだ!」
流石にチェックメイトされた盤面を見るや、シャーが音をあげた。
が、それでも諦めないユーリはすかさず頭をフル回転させる。
「は?何を今更!?」
少し気が崩れ始めたか、シャーが今にも捨て身で突っ走りそうだ。
「まずいぞ!ま…ッ!?」
閃いた!!
こっちにはピストルが1丁ある。
シャーの鉄矢での射撃なら、ゾンビ1体は初撃でヘッドショットキルも可能だ。
そして、5匹のゾンビのうち、タイプAのゾンビは1体。
タイプBだが足が無傷で走れそうなのが1体。
この2体を一撃で仕留めれば、後残ったゾンビ達なら足の肉を多く損失しているから、走れない。
逃げ切れる。
逃げ切れるぞ!
思うや否や、直ぐにシャーに小言で伝えた。
「シャー、落ち着いて聞いてくれ!」
「!?」
今にも飛び出しそうな所へ、ユーリに肩を掴まれて我に返った。
「前のゾンビは5体中、走れそうなのは2体だ。だから、その2体を、俺とシャーで1体ずつ倒す。そうすれば、他の3体は走れないから、横をすり抜けて向こうへ逃げる。これで行くぞ。シャーは向かって1番左。俺は右から2番目の1番厄介そうなヤツをコイツで仕留める。できるだけ近付くまで我慢して、至近で確実に仕留めよう!」
ユーリの、落ち着きながらも少し早めな口調に、シャーも何とかついてきて理解を示した。
これが成功すれば、逃げ切れる。
2人はそう言い聞かせて覚悟を決めた。
そして、カウントダウンをする。
「3…2…1…0ッ!!」
一斉に2人で駆け出す!
向かう先は勿論、ゾンビ五体の方だ。
熊はラッキーな事に、向こうを向いているタイミングで走り出せた。
「行くぞ!ユーリ!」
「おうよ!」
ユーリはピストルを構えて、向かって右から2番目のタイプAを狙う。
シャーは弓を引いて、一番左のタイプB足無傷を狙う。
共にヘッドショットで一撃で仕留めないと、ピストルも残弾一発だったし、シャーの弓も即連射はできないから、逃げ切れない。
狙い通り確実に仕留める為に、2人はギリギリまで距離を詰めた。
まだだ。
あともう少し。
今だ!
敵からの攻撃の手が届かない距離で、且つ外さない距離。
2メートル程まで間を詰めて、2人は放った!
矢と銃弾は見事にヘッドショットを命中させ、駆け込み分の威力補正も入って、ワンヒットキルを果たした!
直後、ユーリは倒したヤツとその隣のゾンビの間を、掴みかかる手を掻い潜ってすり抜けた。
合わせてシャーも、一番左を倒してさらに左外側からスルリと走り抜ける。
銃声は、流石の熊の耳にも届いた様だが、既に距離を大きくあけ、且つ3体のゾンビを盾にして身を隠すように走った事が功を奏した。
こちらへ走り出しはしたものの、残した鹿の骨や内臓類に食らい付き、こちらまで追ってくる事は無かった。
うまく、熊の追撃は逃れる事ができたのだ。
ゾンビ達も案の定、足を引きずって走れない。
倒した2体分の戦利品回収ができなかった事だけが心残りだが、命あっての物種だ。
そうして何とか逃げ切り、窮地を切り抜けたのだった。
「マジか~!よく生きて帰ったなぁ!?」
「良かった!無事で何よりだわ!」
留守番の2人も笑顔で迎えてくれて、拠点に無事、帰り着いたユーリとシャーは、早速土産話を2人に聞かせるのだった。
エリーゼやハンプは設定上の情報を共有しているため、ゾンビウィルスと動物達の状態変化等を簡単に説明してくれた。
その話によると、ゾンビ化した動物は、今のところは熊と犬だけだと言う。
基本的にヒト以外には感染しないウィルスだったが、犬は人に飼われ、密接な関係上、変異によって適応したウィルスに感染したとされていた。
猫も飼われる事が多いが、猫は体質上ゾンビウィルスにはアレルギー的な反応しか起こさず、酷い時はショックで死に至るが、多くはくしゃみなどで排出されてしまうらしい。
熊は、ゾンビの死骸を食ってしまった個体のみが感染したとされていて、熊同士の感染などは認められないらしいが、犬は犬同士の感染が認められていて、既にゾンビ化していない犬は居ない。
話によると、狼はゾンビウィルスが活力剤の様な作用と知性を高めるらしく、1部のプレイヤーが希少な進化狼を相棒にしているという噂を耳にした事がある。
他の動物の情報は今のところ、入っていない。
「でも、ホントにユーリは、そういう危機的状況に強いのよね。普段はあまり頭使うの苦手っぽいのに」
「ああ、俺が本当に頼れる親友なんだ。本当に、コイツには敵わないと思う所の1つだな」
「うお!?シャーがそんな風にユーリを見ていたとは、以外だったぜ!まぁ、俺なら普通に熊もゾンビ5体も纏めてブッ潰しちまうけどなぁ!」
「いやいや、ゾンビだけなら何とかなったかも知れないけど、熊はマジでヤバいって!」
安堵からか、狩りの話は盛大に盛り上がり、4人ともが心から楽しめる笑い話となった。
しかし、ユーリは思うのだ。
ゾンビ熊への再戦を。
「ゾンビ熊め。今回はみっともなく逃げたけど、この借りは必ず返すぜ。いつか、絶対な!」
等と皆の前で宣言し、皆も息を合わせて乗ってきた。
「じゃあ、ゾンビ熊へのリベンジを目指して、頑張るぞ!?」
「「「オオォォーッ!!!」」」
そんなこんなで2日目の夜も更けていき、例によって見張りを交代しながら睡眠をとったのだった。
ゾンビ熊は、脳天以外への攻撃には微動だにせず、怯まない強靭な肉体で、下手なゾンビより何倍も強敵だった。
その為、装備が不十分なユーリ達は、熊に気付かれないうちに撤退を余儀無くされていた。
熊は、実は野生動物の中でも聴覚や嗅覚はそれ程発達していない。
臆病なので、本来なら人間にすらビビっていて、鈴などの音を鳴らしながら歩けば、距離があるうちに熊から逃げていってくれるくらい、小心者なのだ。
しかし、熊が人を襲う話が尽きないギミックには、次のような事が予想される。
人が鈴などを持たずに入山し、熊も耳が良くないから、10メートルや15メートル等の至近距離でバッタリ鉢合わせするまで、互いに足跡にも気付かず、その運悪く至近でバッタリ会ってしまった人が、熊に襲われる。
熊も恐怖で威嚇をして直立し、その直立を恐れて人が大きな声を出すと、熊はさらにその声に驚き、先手必勝の如く先に攻撃してしまうのだとか。
そう考えれば、もう少し離れた辺りで、そろそろ本気で走っても、追い付かれはしないだろう。
そう思うと、少し肩の荷を降ろせた気分だ。
こんな所で死ねない。
もう少し。
もう少しだ。
そう考えながら、ふと後ろを気にして見る。
熊は結構遠退いたものの、シャーがユーリを越えた先を見て、今度はシャーが先に驚くことになった。
「ヤバい…」
ポツリと呟くシャーに気付き、ユーリも進行方向へ振り向いた。
するとそこには、5匹のゾンビグループまで臭いに引き寄せられていたのだった。
「こ、これは…最悪だ!!?」
「くそッ!後ろには熊で前にはゾンビ五匹!?逃げ切れるワケない!」
「いや、待て。考えよう。冷静に、考えるんだ!」
流石にチェックメイトされた盤面を見るや、シャーが音をあげた。
が、それでも諦めないユーリはすかさず頭をフル回転させる。
「は?何を今更!?」
少し気が崩れ始めたか、シャーが今にも捨て身で突っ走りそうだ。
「まずいぞ!ま…ッ!?」
閃いた!!
こっちにはピストルが1丁ある。
シャーの鉄矢での射撃なら、ゾンビ1体は初撃でヘッドショットキルも可能だ。
そして、5匹のゾンビのうち、タイプAのゾンビは1体。
タイプBだが足が無傷で走れそうなのが1体。
この2体を一撃で仕留めれば、後残ったゾンビ達なら足の肉を多く損失しているから、走れない。
逃げ切れる。
逃げ切れるぞ!
思うや否や、直ぐにシャーに小言で伝えた。
「シャー、落ち着いて聞いてくれ!」
「!?」
今にも飛び出しそうな所へ、ユーリに肩を掴まれて我に返った。
「前のゾンビは5体中、走れそうなのは2体だ。だから、その2体を、俺とシャーで1体ずつ倒す。そうすれば、他の3体は走れないから、横をすり抜けて向こうへ逃げる。これで行くぞ。シャーは向かって1番左。俺は右から2番目の1番厄介そうなヤツをコイツで仕留める。できるだけ近付くまで我慢して、至近で確実に仕留めよう!」
ユーリの、落ち着きながらも少し早めな口調に、シャーも何とかついてきて理解を示した。
これが成功すれば、逃げ切れる。
2人はそう言い聞かせて覚悟を決めた。
そして、カウントダウンをする。
「3…2…1…0ッ!!」
一斉に2人で駆け出す!
向かう先は勿論、ゾンビ五体の方だ。
熊はラッキーな事に、向こうを向いているタイミングで走り出せた。
「行くぞ!ユーリ!」
「おうよ!」
ユーリはピストルを構えて、向かって右から2番目のタイプAを狙う。
シャーは弓を引いて、一番左のタイプB足無傷を狙う。
共にヘッドショットで一撃で仕留めないと、ピストルも残弾一発だったし、シャーの弓も即連射はできないから、逃げ切れない。
狙い通り確実に仕留める為に、2人はギリギリまで距離を詰めた。
まだだ。
あともう少し。
今だ!
敵からの攻撃の手が届かない距離で、且つ外さない距離。
2メートル程まで間を詰めて、2人は放った!
矢と銃弾は見事にヘッドショットを命中させ、駆け込み分の威力補正も入って、ワンヒットキルを果たした!
直後、ユーリは倒したヤツとその隣のゾンビの間を、掴みかかる手を掻い潜ってすり抜けた。
合わせてシャーも、一番左を倒してさらに左外側からスルリと走り抜ける。
銃声は、流石の熊の耳にも届いた様だが、既に距離を大きくあけ、且つ3体のゾンビを盾にして身を隠すように走った事が功を奏した。
こちらへ走り出しはしたものの、残した鹿の骨や内臓類に食らい付き、こちらまで追ってくる事は無かった。
うまく、熊の追撃は逃れる事ができたのだ。
ゾンビ達も案の定、足を引きずって走れない。
倒した2体分の戦利品回収ができなかった事だけが心残りだが、命あっての物種だ。
そうして何とか逃げ切り、窮地を切り抜けたのだった。
「マジか~!よく生きて帰ったなぁ!?」
「良かった!無事で何よりだわ!」
留守番の2人も笑顔で迎えてくれて、拠点に無事、帰り着いたユーリとシャーは、早速土産話を2人に聞かせるのだった。
エリーゼやハンプは設定上の情報を共有しているため、ゾンビウィルスと動物達の状態変化等を簡単に説明してくれた。
その話によると、ゾンビ化した動物は、今のところは熊と犬だけだと言う。
基本的にヒト以外には感染しないウィルスだったが、犬は人に飼われ、密接な関係上、変異によって適応したウィルスに感染したとされていた。
猫も飼われる事が多いが、猫は体質上ゾンビウィルスにはアレルギー的な反応しか起こさず、酷い時はショックで死に至るが、多くはくしゃみなどで排出されてしまうらしい。
熊は、ゾンビの死骸を食ってしまった個体のみが感染したとされていて、熊同士の感染などは認められないらしいが、犬は犬同士の感染が認められていて、既にゾンビ化していない犬は居ない。
話によると、狼はゾンビウィルスが活力剤の様な作用と知性を高めるらしく、1部のプレイヤーが希少な進化狼を相棒にしているという噂を耳にした事がある。
他の動物の情報は今のところ、入っていない。
「でも、ホントにユーリは、そういう危機的状況に強いのよね。普段はあまり頭使うの苦手っぽいのに」
「ああ、俺が本当に頼れる親友なんだ。本当に、コイツには敵わないと思う所の1つだな」
「うお!?シャーがそんな風にユーリを見ていたとは、以外だったぜ!まぁ、俺なら普通に熊もゾンビ5体も纏めてブッ潰しちまうけどなぁ!」
「いやいや、ゾンビだけなら何とかなったかも知れないけど、熊はマジでヤバいって!」
安堵からか、狩りの話は盛大に盛り上がり、4人ともが心から楽しめる笑い話となった。
しかし、ユーリは思うのだ。
ゾンビ熊への再戦を。
「ゾンビ熊め。今回はみっともなく逃げたけど、この借りは必ず返すぜ。いつか、絶対な!」
等と皆の前で宣言し、皆も息を合わせて乗ってきた。
「じゃあ、ゾンビ熊へのリベンジを目指して、頑張るぞ!?」
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