サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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素材のウンチク!!

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―――「…ってな感じだ!どうだ?悪くないだろ?」
長々とウンチクを語り終えたユーリは、皆の顔を窺った。
「あー、俺にゃよくわかんねぇけど、悪く無さそーだ」
「私も異論無いわ」
「流石はユーリだ。建築設計士を目指してるだけはある!」
皆の了解に加え、最後に称賛したのはシャーだった。
小学校から何時も一緒に居て、今も尚、同じ工業高校に通い、優耶は建築系、光輝は電気工学系を選択して、それぞれ得意分野をこのゲームに活かして居た。
とはいえ、シャーの得意分野はまだ大した活躍の場が無かった。
これから、機械仕掛けの設備や電動工具の修復など、存分に発揮して貰う事になるだろう。
将来、2人で互いの家を建てると言う、小学生時代の夢も捨てず、最近ではもう少し現実的に、其々で修行し、共同経営で建設会社でも創るか、等と語り合った日もあった。
「ほぉー。ユーリは建築の設計が得意なのか!なら、その拠点の設計も信頼できそうだなぁおい!」
ハンプも最初はイマイチな反応だったが、シャーの評価で気が乗ったらしい。
悪な男のノリは軽い豪気も乗って、エリーゼの肩を肘でつついた。
「ああもう!痛いからやめてくれる!?」
初めて見せる、エリーゼの般若の様な形相。
「わ、わりぃわりぃ…!」
ハンプの肘が女性に対する加減ではなかったらしく、エリーゼの怒りを買い、ハンプは思わずたじろぐのだった。

そんなこんなで、拠点強化に取り掛かったユーリ達は、バリケードに使っていた小石のプレートを、ピッケルで壊していく。
そして、1階の耐荷重不足で2階が倒壊しないうちに、50立方センチの小石のブロックを、壊したプレートの代わりに置き換えていく。
「プレートなら、小石だから耐荷重はあっても、対衝撃への耐久自体は体してないから、簡単に壊せるよ」
実際、アイアンピッケルで8発で壊せる。
普通のゾンビの攻撃なら25発程度は耐えられるか。
もっとも、バリケードが役に立っていた時は、攻撃さえされなかったが。
因みに、痛みを我慢すれば、素手でも石や鉄にダメージを与える事はできる。
そして、ユーリが小石のプレートを素手で破壊するには、70発は殴らなきゃならない。
そんな事をしたら、拳の骨が先に砕けそうだ。
「アイアンの工具は威力があるから良いよな」
「俺ぁ、近接戦闘するなら武器はピッケルとかつるはしが気に入ってっから、武器用に品質の良いヤツ残しとけよなぁ」
「はいはい。ハンプはクラフトスキル高いから、自分で作った方が品質良いんだし、予備の1本くらい、勝手に自分で用意すれば良いのよ」
先ほどハンプにキレてから、エリーゼのハンプへの対応が雑になってきた。
ユーリとはまた違った扱いだ。

因みにプレートというと、厚さ7~8センチ程の板状の、硬質素材で作ったものである。
小石のプレートは、針金でプレート状に枠を作り、そこに小石、粘土を詰めて、乾かして作る。
小石のブロックも、枠を立方体状に作る事以外は小石のプレートと作り方は同じだった。
素材の消費量は5倍になるが、厳密には6倍近く消費するはずの量が、小数点以下を切り捨てた計算のお陰で、多少お得になっている。
多少の含気補正でも入ったと思えば、そうなのかもしれない。
プレートやブロックなどの建築素材で、小石は木製の次に弱い耐久力だが、木製からすれば格段に強い耐久を持つ。
木製、小石、レンガ、コンクリート、鉄板張り。
この6種の壁素材を、耐久値で10段階に評価すると、木製2、小石6、レンガ7、コンクリート8、鉄板10、と言った所か。
つまり、序盤で小石の壁等を作っていたら、そのまま中盤までは裕に越えられる耐久力は備わっていると言っても過言ではない。
そして実際、過去作では好きな素材でお洒落な拠点作り等がプレイヤーの間でも流行った。
ある者は、小石で積み石の塀を作り、それで家の周りを囲んだ、北欧の田舎の家の様なチルい空間を。
またある者は、内外の壁をコンクリートにして、数ヶ所を広めにくり貫き、そこにガラスを嵌め込んだ、シックでモダンなモノトーンのお洒落な空間を。
ある者は赤レンガで、ヨーロッパやアメリカ西部の様な、中世の少し荒れた、雑多な酒場の様な雰囲気を。
室内にカフェやバー風のカウンターを設えたり、屋上をテラスにして、テーブルとイスをセットしたり、花壇に花を咲かせたり。
過去作からして、割りと自由度の高いゲームだったトゥダイシリーズでは、そういう楽しみ方もあったのだ。
しかし、ゲームが進むと強力な攻撃を放つゾンビが現れる様になる。
その強力な攻撃は、続けて受けたら、小石のブロックでもたったの3発で、破壊されてしまう。
レンガやコンクリートなら4発。
鉄板張りは5発といった所で、木製は1発倒壊間違い無しだ。
それでも、都度の補修に手間を掛ければ、強度の近い3種は終盤でも十分に通用する、頼れる素材でもあった。
「おーおー、また来たぜ、ゾンビヤロウがよ!」
「お!あのマントみたいなやつ、ボロボロだけど袖が無くなった白衣じゃん?」
「医者ね!血清持ってるかな!?」
ブロックの付け替え作業の間も、ゾンビはチラホラとやってきた。
「ワォ!今度はビュリホーなネエちゃんだぜ!?」
「あなたは、女ならゾンビでも構わないのね!」
だが、バリケードを潜り抜けようと頭を突っ込んできた所へ、脳天にサバイバルナイフ等を突き刺し、或いは棍棒を叩き付け、侵入を許さずに仕留めていった。
先程のゾンビもそうだが、ポケット等に何かしらアイテムを持っている事があるから、仕留めたら戦利品回収は欠かせない。
「血清は無かったけど、これは…栄養ドリンクだ」
「シャツの胸ポケットには、小銭と車のカギみたい」
「車のカギはフォージで溶かしてアイアン素材にする。小銭はトレーダーハウスで何か買えるから貰って貯めておこう」
「それだけかよ。…チッ。医者のクセに持ちもんシケてんなぁ」
「栄養ドリンクは、空腹は回復しないけど、喉の渇きを少し回復するし、バイタリティーアップとスタミナ減少量低下の効果があるから、町探索した帰りの踏ん張り時とかに、備えておきたいアイテムだぜ」
「ユーリはいっつも元気そーだから、そんなん必要ねぇんじゃねーの?」
「まあ、ユーリも強がってたりするし、俺達もあった方が良い。持っておいて損は無いだろ」
「女性の方はスープ缶詰に缶切りね」
「缶詰めラッキー!」
「缶切りはそろそろ20本くらいになるから、2・3本残してフォージで溶かそう」
「了解!」
ゾンビはたまに、缶詰めなどの食料品も持っていたりするし、銃火器やその弾丸、レンチやドライバー、ライトなどの工具類を持っている場合もある。
生前、いや、ゾンビ化する前と言うのが正しいか、まだ自我があった頃にそれらを使ってゾンビを攻撃したり、予備武器として持っていたりしたのだろう。
或いは食料品に至っては、食料が無くなりそうになって、調達もかねて移動し、探索をしながら潜伏場所を交えようと、元居た潜伏場所を出る時に残された2・3個の缶詰めをポケットに入れて出たのかもしれない。
生存者は、そんな彼らの遺品の様な物に助けられて命を繋いでいくのだった。
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