サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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サバゲでデスゲ!?

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女性NPCが最後に補足した説明は、優耶と光輝にはすんなり受け入れられるものではなかった。
フラクトプラズム、所謂魂の保管。
有機信号のデジタル信号への変換。
ゲーム世界、つまりはデジタルデータで作り上げた架空世界に生きた魂を転移、保管する。
そんな事が今の科学で出来たのか。
国家機密の中の科学の発展は、一般実用化されたものよりどれだけ先を行くのか。
こういう緊急避難的な使用もふまえたフラクトプラズム解析。
一般人には到底想像もしていなかった、或いは真しやかにテレビやネットで確証の無い情報が流れている程度の認識しか無いもの。
それらが、後者のレベルなら本当は解析出来ているのではないだろうか。
人類科学の進展に疑問さえ浮かぶ、広げるだけ広がってまとまらない、そんな思考で頭はゴチャゴチャしていた。
そして、同時にこの世界での死が現実世界でも死を意味する事。
データ世界など、所詮は人が造り上げた世界。
ならば、不備があっておかしくない上に、その不備による不可抗力下での事故などはどうなるのか。
平和ボケした連中をバカにしていたはずの優耶だが、本当の命を賭けるという事への恐怖に怯えを隠せない。
この過酷な世界で、自分は果たして最後まで生き抜く事は出来るのか。
そんな答えの無い疑問が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
脳に染み込むには今し方の時間がかかりそうだ。
その僅かな間、2人の間に沈黙が訪れた。
「ま、マジ…か…」
「完全にデスゲだな…」
落胆するユーリの声。
ふと思い付いた言葉が口を突くシャイニード。
まだ実感のない2人は、暫しの沈黙の後、とりあえず声を出して、現状の不安や恐怖を紛らわそうとした。
「デ…スゲ…?…ッ!?」
ところが、その単純な、何の捻りもないシャイニードの言葉を、大きなため息と共に復唱したユーリに強く突き刺さる。
「…そ、そうだ!これじゃまさにデスゲじゃないか!!…って、待てよ?サバゲがデスゲになるって、シャレじゃなくね!?しかも、このゲームは特に難しくて、多くのユーザーがクソゲー呼ばわりしてやめていった程に難易度高いゲームなんですけど!?」
頭に漠然と思っていた恐怖や不安が、いつの間にか単純な文章を形作り、口から関を切った様に出ていく。
「…は!?…ナニコレ!?何かの罰ゲーム!?いやいやいやいや!命を賭ける罰ゲームって何だよ!?頭オカシイんじゃねえの!?人の―――」
止めどなく絶望感が涌き出て、卑屈な言葉が後を絶たない。
ユーリがそうなるのも無理は無い話だ。
というより、普通ならそうなるのが自然だろう。
とはいえ、そうも言っていられない。
ユーリが不満を撒き散らしてくれるお陰で、シャイニードは何とか冷静にそれを見つめ、我を忘れずに居られた。
そして、ユーリが壊れる前に、ユーリを落ち着かせるのも自分のやるべき事だと理解する。
支離滅裂な問答を吐き出し続けるユーリ。
シャイニードは意を決して、怒鳴り付ける様な声を出す覚悟で、ユーリの言葉を遮った。
「ユーリ!!!」
ここ数年でも一番じゃないかと思える程に大きな怒鳴り声で、ユーリの名を呼ぶ。
「―――命をなん、だァッ!!!?」
突然の怒声に驚き、ユーリは言いかけた途中で言葉を詰め、混乱から意識を引き戻される。
戻されていくと同時に、混乱の疲れが反比例してのしかかり、徐々に力が抜けていく様だ。
「ユーリ、良く聞け!お前が言う事も少しは解るつもりだが、考え方によっては、俺達はゲーム中に、部屋で、ムーヴギア着けたまま、死んでた所だったんだぞ!?」
ユーリは未だ、向ける矛先を失った怒りを少し残した瞳で、シャイニードを見るが、やがてその場に膝から崩れ落ち、軽い放心状態になった。
力が抜ける様を見たシャイニードも、強かった語気を弱め、膝を折り、ユーリに視線を合わせて語り始めた。
「いいか、本当なら、俺達は今、ここで、こうしている事さえ、叶わなかったかもしれなかったんだ。それでも、最新のコンピューター技術によって、不幸中の幸いと言うべき、文字通り一命を取り留める事ができたんだ!九死に一生を得たんだ!俺達は!」
途中から、今度は腑抜け過ぎたユーリを呼び戻す様に、両肩を掴み、力強く語りかけるシャイニード。
こんな状況で、潰れる優耶じゃない。
自分が認める友を信じて、尚も力強く語りかけるのだった。
「こうして居られるのは、現実世界でも復興や諸々に命がけで挑む人達と、共に苦しみを乗り越えながら、無事に現実世界に復帰する為だ!震災の瞬間、多くの人達が命を落とした中で、俺達がこうして生き長らえてる意味を考えろ!また生きて現実世界で人生を続けられる切符を、俺達はありがたいことに、今こうして手に入れる事ができたんだぞ!!その命を!!生きたくても生きられなかった人達のためにも、無駄にはできないだろ!!!?」
最後は、シャイニードにとってもユーリに強い意思を持たせるべく、自分の口で肯定する為の質問を叩きつけた。
そして、シャイニードもまた、自分より人の事を優先するユーリの内面を信じていた。
その思いを込めた言葉に反応があるまで、一旦放心状態に陥った所から意識を戻し、シャイニードの言葉を噛み砕いて心に染み渡らせ、認識して答えるのに、少々時間を要した。
その間、沈黙が辺りを支配するが、間も無くユーリの口が開く。
「…そうだな。…ああ、そうだ」
頷きながら応えるユーリを見て、シャイニードも胸を撫で下ろした。
これで、落ち着いて話を整理する事もできる。
そんなシャイニードの一瞬の安堵を余所に、ユーリは続けた。
「俺達は命拾いしたんだ!それなら、そこには何か意味がある筈だ!」
「あ、ああ!その通りだ!!」
少し嫌な予感が過りつつも、焚き付けたのは自分だ。
仕方なくユーリの言葉に相槌を入れる。
「それならきっと、多くのユーザーが逃げてしまうこのゾンビだらけの世界を、今の今まで逃げずに戦ってきた俺達が、この世界で救われた命を、現実世界に戻すまで守りきる事以外にない!!」
「ああ!そうだな!!それしか…え!?」
また、随分と大それた事を言い出したユーリに、シャイニードは遅蒔きに気付く。
「そうだ!そうに決まってる!!」
「ええッ!!?」
ヤバい。
勇者願望の強いユーリの心根まで焚き付けてしまった。
「俺達は、この世界の生き残った人達を守り抜く、現実世界の人達の救世主になるんだ!!!」
「ええぇぇぇぇーーーーッッッ!!!!??」
考える事が極端で、単純明快な幼馴染みの親友は、ここに来てとんでもなく大きな事を掲げた…。
なんでこうなったのか…?
突っ走り始めたら、もう説得などで止められはしない。
大きな挫折でもないと、もう誰にも止められないんじゃないだろうか。
しかし、この世界で救世主願望の挫折となると、圧倒的敗北しかなく、それはつまり死を意味する。
挫折などさせられない。
じゃあ、このままヒーローを気取らせるのか?
いや、ある意味、これからプレイヤーを助ける事ができた時、コイツくらい前向きなヤツが居た方が、プレイヤーも前向きになれるかもな。
だが、無邪気で純粋なコイツが前向きだと、正直暑苦しいし…
…などと、先が思いやられるシャイニードだった。
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