サバゲでデスゲって、もはやリアルな修羅場ッ!!?

水咲 蓮

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緊急事態!?

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「…な、なんだったんだ、今の…?」
突然の事に驚きを隠せないユーリ。
「いや、何があったのか解らないが、それがもう終わったのかもわからない。ユーリもまだ気を抜くな」
「ああ…」
目の前のシャイニードが、ユーリにそう伝える。
どうやら光輝は何事も無かった様だ。
しかし…
ふと、先程の動作が気になり2人のNPCに目をやる。
それぞれが自然な動きをして、特におかしな点は無い。
天井を見上げたり、辺りを見渡したりして何かに怯えて居るようだった。
だが、それが反って不自然だった。
「…?」
ユーリは、NPCのそんな自然な人間らしい仕草をこれまでに見たことがないのだ。
NPCはやはりどこかゲーム染みていて、普通の人間とは違う動きをしていた。
時にはカクついたり、一定のルーティン動作も機械じみていたはずなのだ。
辺りを見渡すのも、首を左右に動かす時にまったく同じ軌道を繰り返し辿り、左右の降り幅も一定か2、3パターン程度のパターンを繰り返すだけだったが、今のNPCは、上下左右、不規則に首を振っている。
因みに、その周りを見ているのはシャイニードの連れの、ハンプソンというタトゥーだらけの男性の方。
天井が落ちてくるんじゃないかと気が気じゃない方が、ユーリの連れにしたエリーゼという女性だった。
そのエリーゼが、突然直立不動になり、俯いてユーリとシャイニードの方を向く。
これこそ、不自然な機械染みた動きだ。
「緊急事態が発生しました」
「なに!?」
「は!?」
エリーゼの突然発せられた事務的な言葉に、ユーリとシャイニードが少し驚く。
「たった今、17時39分、関東で大規模な直下型地震が発生。現在、首都圏を中心に建造物の倒壊が相継ぎ、生存者の安否等は現在、一切が不明…」
「なんだって!?」
「ユーリ、まて!」
淡々としたニュース速報の様な口調に、何かの冗談の様に思えた。
しかし、それにしては内容が冗談じゃ済まされない。
信じがたい事が起きてる内容を、淡々とした言葉で告げられる対応に、些かの怒りも込み上げるが、シャイニードがそんなユーリを制した。
「当インターネットフルダイブ式製造規約、精神管制式バーチャルリアリティワールド管理規定、緊急措置法第129条、緊急時のユーザー精神の保護に基づく保管要項に従い、現時点で精神体、所謂フラクトプラズムをデータ化し、ネット上に滞在していたユーザーのフラクトプラズムを保護し、国家機密ネットワールド特措待避用データワールドに転送しました」
「そ、それって、どういう…?」
「…」
シャイニードはただ黙って聞いているが、ユーリには何がなんだか解らない。
得も知れない不安が、ユーリの中で込み上げる一方だ。
ユーリの投げ掛ける疑問を他所に、エリーゼは更に続けた。
「尚、当データワールドは、背景データ等基盤のデータベースをユーザーのソフトよりバックアップし、進行中のソフトのバーチャルリアリティワールドを、当データワールドデータベース内にて復元、皆様のフラクトプラズムを保管する事となります…」
「…???」
「…なるほど…」
「な、何がなるほどなんだ?」
「まあ、平たく言えば、俺達がやってたハザードトゥダイが、国家保有のデータベースに移されて、そこでハザードトゥダイの世界が作り直されて、その世界に俺達の魂、精神が隔離、保管されてるって事だな」
「…なっ!?なんだよソレ!!」
フラクトプラズムとは、一言で言えば魂の事を言う。
かつてプラズマと称されたソレを、プラズマと称した科学の力で解析し、6年前、とうとう解明されたのだ。
科学界にて、それをフラクトプラズムと命名した。
解析内容を簡単に説明すると、脳内の伝達信号に個体其々の規則性を見いだし、その規則プログラムを個性と仮に位置付け、記憶細胞内の記憶と規則プログラムに変化を与える記憶の優劣性(鮮烈さやインパクト等数項目に渡る)の再現、伝達信号の伝達経路の構成とその優劣性(太さ、光子の透過性、実質流量等)の再現、さらにはその経路を辿る光子、量子の解析と信号動力(血液の様なポンプ的エネルギーなのか自立動性の場合のエネルギー源等)の解析、再現、受動的インプット経路の優劣性(感受性とされる外部からの印象を分類し、分類毎のインプットされやすさやインパクトによる作用程度等)など、考え方や価値観、感性、記憶等に関する、個人を特定し得る魂と呼ぶべき事象を一式丸ごと、細胞組織から光子の伝達領域全てをワンセットにした、範囲的量子集合体を、魂と断定し、フラクトプラズムと言う。
その解明発表はニュースでも盛大な盛り上りを見せ、社会現象的に世界中を沸かせた。
今や一般常識になっている程だ。
だが、ユーリは少し世情に乏しい所があり、エリーゼの話は尚更理解に苦しむ。
しかし、ユーザー2人のやり取りには尚も気に掛ける様子もなく、話が続きそうなエリーゼを見て、再びシャイニードがユーリの口を塞ぐ。
「また、現実世界の身体については、被災地で発見された身体のDNA等情報と、このデータワールドに保管されたユーザーの個人情報とを照合ののち、身分が一致したもののみ、損傷箇所の可能な限りの治療を施行。最大限完治復元ののち、検査に移行。これをクリアした身体のみ返還する予定となります。また、返還時には精神をデータ信号から当データベース接続の有機波信号変換デバイスを通して有機波へと返還、異常の有無を確認後、身体に戻す手筈となっております。尚、現実世界において皆様の身体は安全に保管、精密医療の髄を尽くし復元致しますが、損傷状態により、四肢等の欠損などその他重傷の復元等はできませんので、予めご了承下さいませ…」
「良かった。身体は欠損箇所を除いて損傷を完治させてくれるみたいで、治ったら精神も戻して現実生活に戻れるらしい」
「本当か!?んじゃ、それまで死ぬほど遊びまくって待ってりゃ良いって事だな!?」
ユーリの喜びも束の間。
続くエリーゼの言葉に、その喜びは一瞬で消し飛ぶ。
「但し、データワールドにて精神体、謂わばその人の魂と呼べるフラクトプラズムに損傷が生じると、例え現実世界の身体を完治させても現実で意識を取り戻す事が不可能となる場合があります。特に精神世界で死を体験すると、肉体に戻してもそのまま生命活動を停止するか、意識の無い植物状態で生を長らえるか、何れにせよ現実での復帰が完全に不可能となりますので、傷つけ合う様なアクションを含むゲーム等の世界に保管された方々は、特にお気をつけ下さい。また、そうでない世界に保管された方も、転ばれて亡くなられる等の不慮の事故等にも十分にご注意下さい」
女性のNPCが最後に補足した説明は、優耶と光輝にはすんなりと受け入れられるものではなかった。
特に優耶は頭の整理もつかず、光輝と2人で立ち尽くすのだった。
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