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帰郷から帰京

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翌日の朝、僕は福岡発の飛行機に乗って東京へと戻った。
いろいろと収穫の多い有意義な帰郷だった。
あれだけ僕を見下してきていた連中が、僕が今では立派な帝大生だと知った途端に態度をコロッと変えたのには、胸がスッとした。
これから先、僕の未来は輝いている。
大学を卒業したら、次は超一流企業に就職して、そしたらまた皆んなを驚かせてやるんだ。
それから先は、政治家に転身して総理大臣にでもなってやろうか。
ふっふっふっ、今から楽しみだ。
「おーい!浩介、おかえりー!」
ゲートを出た途端、空港中に響き渡るかのような大声で堀田が出迎えた。
えー!?何で堀田がいるの?なぜ、乗ってる便がわかったの?これから帰ります、としか教えなかったのに!?
とりあえずここは他人のふりをしよう。
「何、無視してんだよ!会いたかったー、浩介も俺に会いたかっただろ?」
堀田は人目も憚らず、大勢の公衆の面前で僕に駆け寄り力一杯抱きしめた。
「な、何で乗ってる便がわかったの?」
おろおろする僕に堀田が教えてくれる。
「たいしたことないよ、浩介が福岡に行く前日に、GPSのアプリをインストールさせてもらっただけだから」
おい!聞いてないぞ、そんなこと。大したことあるわ!それよりも、早く離れてくれ。
「それにしても、浩介、酒臭いぞ」
堀田が僕を抱きしめたまま、鼻をくんくんさせてくる。
「うん、同窓会でも飲んで、その後に親戚の集まりでも飲まされて、今も二日酔いが酷いんだ」
「そうか、じゃあ俺たちもこれから乾杯しようか!」
こいつ、人の話しを聞いているのか?これ以上飲ませて僕を殺す気か!?
二日酔いでおぼつかない足どりの僕は、ただ堀田のなすがままに引き摺られて一緒に帰った。

「浩介、成人おめでとー!」
堀田がクラッカーを鳴らし、僕はケーキに立てられた20本の蝋燭の火を吹き消した。
う~ん、ここまで祝ってくれるのは嬉しいんだけど、よく考えたら先月に20歳になった誕生日をお祝いしてもらったばかりだし、よくよく考えたら堀田も同い年なんだから、堀田の成人祝いもしないとおかしいよね?
「堀田も同い年なんだから、堀田も成人おめでとうだね」
「そう言われてみれば、それもそうだな。じゃあ、お互いに成人おめでとう!」
僕たちはシャンパンで乾杯した。
「森田さん、成人の抱負は?」
堀田がチキンをマイク代わりにインタビューしてきた。
「えーと、そうだなー・・・堀田を幸せにしたい」
いつも僕をこんなに楽しませてくれている堀田に、これくらいのことは言ってあげないとダメだよね。ありがとう、堀田。
「う~。何てかわいい奴なんだ、浩介は~。浩介、これからも愛してる」
堀田が僕を抱きしめる。ふと、2人の視線が交差して、堀田が顔を近づけてくる。キスだ。僕もそっと目を閉じる。とんでもない奴でもあるけど、こんなにも愛されるなんて、僕は堀田と付き合えて良かったよ。
と、その時、僕達の唇が交わる寸前、テーブルの上の僕のスマホが激しく震えた。
「も、もぅ~いいところだったのに」
僕は平静を装いながらスマホを手に取った。
RINEは檜山からだった。
『東京の夜景を一望できるホテルを予約したいんだけど、いつがいい?』
・・・。
「誰?こいつ?」
堀田がわかりやすく不機嫌になる。
「あっ、こいつは中学の時の同級生で・・・」
再び着信。
『今度、東京で試合あるからメシでも食いに行こうぜ』
今度は黒田からだった。
「えっと・・・中学の時の同級生で、今はプロバスケの」
再び着信。
『浩介君、今度二丁目デートしようよ』
今度は江崎君から。
「これも中学の同級生で・・・」
再び着信。
『昨日は会えて楽しかったよ!おやすみ~♡』
今度は菅野から。
堀田の顔に、あからさまに苛立ちの感情が浮かび上がる。
再び着信。
『昨日はゆっくり話せなくてごめん。次は2で積もる話しをしよう』
今度は道端先生からまで。
僕と堀田の間に沈黙が流れる。堀田、けっこう嫉妬深いからなぁ~、大丈夫かなぁ?疑われないかなぁ?いや、大丈夫、きっと僕たちの愛はこの程度のことで揺らぐなんてことはないはず!
「何、この人たち。もしかして浮気?」
だいじょばなかった~!!
「そ、そんなことあるわけないじゃないか!僕には堀田だけだよ!」
「ふ~ん。まぁ、いいや。とりあえず寝るわ、おやすみ」
すっかり機嫌を損ねた堀田は、テーブルの上もそのままに自分の部屋へ引き篭もってしまった。
嗚呼、どうしよう。何でよりにもよって5連続でRINEが来るんだよ。しかも紛らわしい内容ばかり。
堀田、傷ついちゃったかなぁ?明日、ちゃんと謝らないと。





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