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侮蔑
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全く、警察の連中は無能な奴らばかりだ。
あんな能無しどもの給料を払うために、決して多くはない収入から税金を納めなければならないなんて、なんて馬鹿らしいことだろう。
あの程度の質問さえ、まともに答えられず言葉に詰まるなんて。
「あの、北島さん。」
「あ、なんでしょうか?」
「私達、捜査協力しませんか?」
「それはつまり、手を組む、ということですか?」
月島は、少し前のめりになって頷く。
(やれやれ、少々面倒なことになってきたな・・・いや、待てよ。もしかしたらこの女、使えるかもしれない。たしかに、手分けして調べた方が効率的とも言える。手駒は多いに越したことは無い。)
「わかりました。私もあなたのような人と組む方が心強い。よろしくお願いします。」
私が心にも無いことを笑顔で返事をすると、女の顔から安堵と喜びが溢れた。
「私の方こそ、どうぞよろしくお願いします。!」
バカな女だ、利用されるだけとも知らないで。
「それで、今後の方針ですが、どのように役割分担しますか?」
私が尋ねると、女は「そうですね」と少し考えて口を開いた。
「北島さんが会見で情報を得て、私が足で裏付けを取る、というのはいかがでしょうか?」
「それはまたどうして?」
「私、思ったんですけど、先程の会見での北島さんの鋭い質問が私は不得手なんです。男の人達の中に、私のような小さい女がいても埋没するだけですし。だから、会見には北島さんに出てもらった方がいいと思うんです。」
「なるほど、そして私が得た情報をもとに、月島さんが裏付けを取るというのですね。わかりました、私もこの仕事は初めてで勝手がわかりません。月島さんの協力が不可欠です。是非よろしくお願いします。」
そういうことか、自分ではまともに男達と渡り合えないから私を利用しようということか。それもいい。こちらもせいぜい私の手足として利用させてもらおう。
「わかりました。では、早速ですが今日の会見で得た情報をもとに何ができるか検討しましょう。」
「でも、今日の会見でも特にこれといって目新しい発表はありませんでした。どうしたらいいでしょう?」
「そうですね。とりあえず、月島さんは現場付近の聴き込みと、被害者について見落としが無いかを調べてみてはどうでしょう。私は次の会見のための質問を考えます。」
「わかりました、では、早速取材に行ってきます。」
そう言うが早いか、月島は請求書を握ってレジへ向かう。
「月島さん、私も払いますよ。」
「いえ、いいんです、どうせ会社の経費で落とせるので。あと、これからお世話になるお礼も込めて。」
呑気な女だ。まぁ、それなら金銭面でも利用させてもらうか。
店の前で月島と別れた後、私は根城としているホテルへと向かった。
次の会見で質問することをまとめよう。
発言する機会が巡ってくることはあまり無い。
いかに他の連中と違う、核心を突く質問をして、有益な情報を手に入れなければならない。
あと、警察に揺さぶりをかける為にも、次の作戦も検討しなければならない。
そんなことを考えながらエレベーターに乗り込むと、締めかけた扉の隙間に腕を挿しこんで強引に男が乗り込んで来た。
「すいません。」
男は軽く会釈をして謝る。
「何階ですか?」
私が聞くと、男はエレベーターの階数ボタンをチラリと見た。
「8階で。」
同じフロアか。
エレベーターが8階で止まると、男は開くボタンを押して私に先に降りるように譲った。
私は軽く会釈して、小さな声で「ありがとうございます。」と呟いてエレベーターを降りる。
まずは、無能な警察の連中に、今回の事件がただの模倣犯であることを知らしめた方がいいかもしれない。
その為には、次の人柱が必要だろう。
少し休んだら、次のターゲットを探しに行こう。
あんな能無しどもの給料を払うために、決して多くはない収入から税金を納めなければならないなんて、なんて馬鹿らしいことだろう。
あの程度の質問さえ、まともに答えられず言葉に詰まるなんて。
「あの、北島さん。」
「あ、なんでしょうか?」
「私達、捜査協力しませんか?」
「それはつまり、手を組む、ということですか?」
月島は、少し前のめりになって頷く。
(やれやれ、少々面倒なことになってきたな・・・いや、待てよ。もしかしたらこの女、使えるかもしれない。たしかに、手分けして調べた方が効率的とも言える。手駒は多いに越したことは無い。)
「わかりました。私もあなたのような人と組む方が心強い。よろしくお願いします。」
私が心にも無いことを笑顔で返事をすると、女の顔から安堵と喜びが溢れた。
「私の方こそ、どうぞよろしくお願いします。!」
バカな女だ、利用されるだけとも知らないで。
「それで、今後の方針ですが、どのように役割分担しますか?」
私が尋ねると、女は「そうですね」と少し考えて口を開いた。
「北島さんが会見で情報を得て、私が足で裏付けを取る、というのはいかがでしょうか?」
「それはまたどうして?」
「私、思ったんですけど、先程の会見での北島さんの鋭い質問が私は不得手なんです。男の人達の中に、私のような小さい女がいても埋没するだけですし。だから、会見には北島さんに出てもらった方がいいと思うんです。」
「なるほど、そして私が得た情報をもとに、月島さんが裏付けを取るというのですね。わかりました、私もこの仕事は初めてで勝手がわかりません。月島さんの協力が不可欠です。是非よろしくお願いします。」
そういうことか、自分ではまともに男達と渡り合えないから私を利用しようということか。それもいい。こちらもせいぜい私の手足として利用させてもらおう。
「わかりました。では、早速ですが今日の会見で得た情報をもとに何ができるか検討しましょう。」
「でも、今日の会見でも特にこれといって目新しい発表はありませんでした。どうしたらいいでしょう?」
「そうですね。とりあえず、月島さんは現場付近の聴き込みと、被害者について見落としが無いかを調べてみてはどうでしょう。私は次の会見のための質問を考えます。」
「わかりました、では、早速取材に行ってきます。」
そう言うが早いか、月島は請求書を握ってレジへ向かう。
「月島さん、私も払いますよ。」
「いえ、いいんです、どうせ会社の経費で落とせるので。あと、これからお世話になるお礼も込めて。」
呑気な女だ。まぁ、それなら金銭面でも利用させてもらうか。
店の前で月島と別れた後、私は根城としているホテルへと向かった。
次の会見で質問することをまとめよう。
発言する機会が巡ってくることはあまり無い。
いかに他の連中と違う、核心を突く質問をして、有益な情報を手に入れなければならない。
あと、警察に揺さぶりをかける為にも、次の作戦も検討しなければならない。
そんなことを考えながらエレベーターに乗り込むと、締めかけた扉の隙間に腕を挿しこんで強引に男が乗り込んで来た。
「すいません。」
男は軽く会釈をして謝る。
「何階ですか?」
私が聞くと、男はエレベーターの階数ボタンをチラリと見た。
「8階で。」
同じフロアか。
エレベーターが8階で止まると、男は開くボタンを押して私に先に降りるように譲った。
私は軽く会釈して、小さな声で「ありがとうございます。」と呟いてエレベーターを降りる。
まずは、無能な警察の連中に、今回の事件がただの模倣犯であることを知らしめた方がいいかもしれない。
その為には、次の人柱が必要だろう。
少し休んだら、次のターゲットを探しに行こう。
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