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リアルパイナップルさん
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「どうでしょう?」
「逆に本当にいいんですか?」
「何がでしょうか?」
俺は、パインさんの言う"逆に"という言葉の意味が分からなかった。
「僕は、福山さんのファンでもありますけど、後輩君のファンでもあるんですよ。それはお二人に会えるのなら嬉しいですけど、そんな簡単に了承して大丈夫なんですか?」
あぁ、そういう気遣いをしていたのか。
ファンだなんて大袈裟だな、芸能人でもあるまいし。
「こちらは彼も乗り気なので大丈夫ですよ」
10数秒、パインさんは唸っていたが、最終的には俺の申し出を喜んで受け入れてくれた。
「それで、会うのはいいんですけど、いつどこで会いましょうか?そういえば、パインさんがどちらに住んでいるのかすら知りませんし」
「福山さんたちはS県ですよね。僕はC県のK市なんです」
「あっ!思ったよりも近いですね。車で1時間くらいですね。そうしたら、俺が車を出しますよ」
話しはとんとん拍子で決まっていく。
俺たち3人は、2週間後の土曜日にパインさんの住むK市で会うこととなった。
その事を川口青年に伝えると、彼は素っ気なく「わかった」と一言だけ返事をした。彼に確認しないで話しを進めた事を良く思っていないのだろうか?それとも本心は気が乗らないのだろうか?
それから2週間後の約束の日。
俺たちはパインさんの住むK市へ向かった。
俺たちはパインさんに指定されたK駅前のロータリーで、パインさんが現れるのを待っていた。
「そういえば、俺、パインさんのことあまり知らないんですけど、どんな人なんですか?」
「あぁ。パインさんはゲイの人だよ。年は30才だって言ってたな。普通の会社員で、話した感じオネエでもないし、とても温厚そうな人だな」
「福山さん、その人のこと好きなんですか?」
「好きだよ。嫌いなら会うわけないだろ」
「ふーん」
「え?まさか好きって、恋愛感情のことじゃないよな?まさか!俺はゲイじゃないし、男はお前のことしか好きじゃないし」
「それならいいんですけど」
川口青年は、嬉しそうに笑みを堪えているようだ。
なんだ、そういうことか。彼は俺とパインさんの仲を疑っていたのか。それじゃあ、今日一緒に来たのは俺たちを監視するためってことか?
「なんなんだよ、まったく」
俺も川口青年の真意を知って、込み上げる笑みを堪えるのに必死だった。
「お待たせしました」
そこへ長身で細身の男が現れた。身長は、川口青年よりも高そうだ。細身のせいもあってか、身長が余計に高く見えるのかもしれない。
「福山さんと後輩君ですよね?初めまして、パイナップルこと秋山です」
「あっ、どうも、福山です。そしてこっちが」
「後輩君こと、川口です」
「初めまして。後輩君・・・いえ、川口さん。凄いイケメンですね」
「どうも」
「こんな所で立ち話もあれですし、少し早いけどお店に行きましょうか。美味しいと評判の串カツ屋があるんですよ」
俺たちは店の近所にある駐車場に車を停め、秋山の案内で串カツ屋に入った。小さくて歴史を感じさせる佇まいだった。
俺たちは飲み物と、いくつかの食べ物を注文して、出会いを祝して乾杯をした。
やがて酒が進むにつれて、初めは堅かった空気も打ち解けてきて、川口青年と秋山は驚くほど打ち解けて話に華が咲いていた。
「福山さん、あっきー超いい人、俺楽しいです!」
あっきーって・・・。
「会うまでは心配もあったけど、思い切って会いましょうって言ってみて良かったです」
まぁ、川口青年も秋山さんも馬があって良かった。何しろ川口青年が楽しんでくれたのが、俺は嬉しかった。
楽しい時間ほど早くすぎるもので、気がつけば4時間も飲み明かしていた。
すっかり秋山さんに懐いてしまった川口青年も、名残惜しそうにしている。
「よかったら、私と連絡先交換しませんか?」
秋山さんが川口青年に言う。
「でも・・・」
川口青年は、俺の方を見て返事を求めた。
「いいじゃないか、交換しなよ」
俺はこの時、何の気もなく返事をした。彼の交友範囲が広がることはいいことだし、束縛をしたくもない。そんな狭量な男では無いのだから。この時は、そう思っていた。きっと川口青年も俺に気を遣っているのだろう。その程度にしか思っていなかった。
「それじゃあ」
2人は連絡先を交換して、この日はお別れした。
帰りの車の中でも、川口青年は今日のことを何度も反芻するように楽しそうに語っていた。
こんなに喜んで楽しんでくれたなら、秋山さんに思い切って会って良かったな。
と、少し嫉妬を感じながらも思った。
「逆に本当にいいんですか?」
「何がでしょうか?」
俺は、パインさんの言う"逆に"という言葉の意味が分からなかった。
「僕は、福山さんのファンでもありますけど、後輩君のファンでもあるんですよ。それはお二人に会えるのなら嬉しいですけど、そんな簡単に了承して大丈夫なんですか?」
あぁ、そういう気遣いをしていたのか。
ファンだなんて大袈裟だな、芸能人でもあるまいし。
「こちらは彼も乗り気なので大丈夫ですよ」
10数秒、パインさんは唸っていたが、最終的には俺の申し出を喜んで受け入れてくれた。
「それで、会うのはいいんですけど、いつどこで会いましょうか?そういえば、パインさんがどちらに住んでいるのかすら知りませんし」
「福山さんたちはS県ですよね。僕はC県のK市なんです」
「あっ!思ったよりも近いですね。車で1時間くらいですね。そうしたら、俺が車を出しますよ」
話しはとんとん拍子で決まっていく。
俺たち3人は、2週間後の土曜日にパインさんの住むK市で会うこととなった。
その事を川口青年に伝えると、彼は素っ気なく「わかった」と一言だけ返事をした。彼に確認しないで話しを進めた事を良く思っていないのだろうか?それとも本心は気が乗らないのだろうか?
それから2週間後の約束の日。
俺たちはパインさんの住むK市へ向かった。
俺たちはパインさんに指定されたK駅前のロータリーで、パインさんが現れるのを待っていた。
「そういえば、俺、パインさんのことあまり知らないんですけど、どんな人なんですか?」
「あぁ。パインさんはゲイの人だよ。年は30才だって言ってたな。普通の会社員で、話した感じオネエでもないし、とても温厚そうな人だな」
「福山さん、その人のこと好きなんですか?」
「好きだよ。嫌いなら会うわけないだろ」
「ふーん」
「え?まさか好きって、恋愛感情のことじゃないよな?まさか!俺はゲイじゃないし、男はお前のことしか好きじゃないし」
「それならいいんですけど」
川口青年は、嬉しそうに笑みを堪えているようだ。
なんだ、そういうことか。彼は俺とパインさんの仲を疑っていたのか。それじゃあ、今日一緒に来たのは俺たちを監視するためってことか?
「なんなんだよ、まったく」
俺も川口青年の真意を知って、込み上げる笑みを堪えるのに必死だった。
「お待たせしました」
そこへ長身で細身の男が現れた。身長は、川口青年よりも高そうだ。細身のせいもあってか、身長が余計に高く見えるのかもしれない。
「福山さんと後輩君ですよね?初めまして、パイナップルこと秋山です」
「あっ、どうも、福山です。そしてこっちが」
「後輩君こと、川口です」
「初めまして。後輩君・・・いえ、川口さん。凄いイケメンですね」
「どうも」
「こんな所で立ち話もあれですし、少し早いけどお店に行きましょうか。美味しいと評判の串カツ屋があるんですよ」
俺たちは店の近所にある駐車場に車を停め、秋山の案内で串カツ屋に入った。小さくて歴史を感じさせる佇まいだった。
俺たちは飲み物と、いくつかの食べ物を注文して、出会いを祝して乾杯をした。
やがて酒が進むにつれて、初めは堅かった空気も打ち解けてきて、川口青年と秋山は驚くほど打ち解けて話に華が咲いていた。
「福山さん、あっきー超いい人、俺楽しいです!」
あっきーって・・・。
「会うまでは心配もあったけど、思い切って会いましょうって言ってみて良かったです」
まぁ、川口青年も秋山さんも馬があって良かった。何しろ川口青年が楽しんでくれたのが、俺は嬉しかった。
楽しい時間ほど早くすぎるもので、気がつけば4時間も飲み明かしていた。
すっかり秋山さんに懐いてしまった川口青年も、名残惜しそうにしている。
「よかったら、私と連絡先交換しませんか?」
秋山さんが川口青年に言う。
「でも・・・」
川口青年は、俺の方を見て返事を求めた。
「いいじゃないか、交換しなよ」
俺はこの時、何の気もなく返事をした。彼の交友範囲が広がることはいいことだし、束縛をしたくもない。そんな狭量な男では無いのだから。この時は、そう思っていた。きっと川口青年も俺に気を遣っているのだろう。その程度にしか思っていなかった。
「それじゃあ」
2人は連絡先を交換して、この日はお別れした。
帰りの車の中でも、川口青年は今日のことを何度も反芻するように楽しそうに語っていた。
こんなに喜んで楽しんでくれたなら、秋山さんに思い切って会って良かったな。
と、少し嫉妬を感じながらも思った。
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