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フレンチトースト
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翌朝、俺はカーテンの隙間から挿し込む朝日に目を射抜かれて目を覚ました。
昨日のことがまるで夢のようだった。
実際、やけにリアルな夢を見たような、どこまでが現実でどこからが夢なのか、境界線が曖昧な心地だった。
しかし、寝ぼけ眼で目を凝らして見ると、やはりそこは川口青年の部屋で、昨日の出来事が決して夢や幻ではなく、現実の続きてあることを教えてくれる。
「あっ、起きましたか?」
声のする方を見ると、そこにはキッチンに立つ川口青年がいた。
「すぐ朝ごはんにしますね。たいしたものは作れないけど」
そう言うと、川口青年は鼻唄を歌いながら、何かを調理していた。とても香ばしい、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「何を作ってるの?」
俺はベッドから起き上がると、キッチンに立つ上半身裸の川口青年を背後から軽く抱きしめた。
「フレンチトーストです」
「随分と洒落たもの作るんだな」
「あと、目玉焼きを焼きますね」
「卵ばかりじゃないか」
俺は、そんな川口青年が愛おしくて、彼の首筋にキスをした。
「髭がくすぐったいです。用意できるまで顔でも洗ってきてください」
「はーい」
俺はもう一度、彼の首筋に軽くキスをしてから、洗面台で顔を洗い、髭を剃って、歯を磨いた。
なんか、まるで新婚夫婦の朝みたいだな。ふと、そんなことが頭をよぎって、俺は鏡の中の自分の顔を見て吹き出しそうになった。
なぜなら、そこには幸せに緩んだだらしない表情の自分がいたからだ。
部屋に戻ると、ちょうど朝食が出来上がったところで、テーブルの上には、フレンチトースト、目玉焼き、サラダ、スープ、トーストが置かれていた。
「美味そうだな。朝からかなりのボリュームだな」
「俺の家、母さんが小学生の時に離婚していなくなっちゃったんで、俺がご飯作ってたんですよ」
「そうなんだ。ところでこれ、フレンチトーストとトーストって、どっちもパンだよな?」
「いいじゃないですか、別に。たくさん並んでた方が賑やかで」
そういう問題か?と、口に出しそうになるのをグッと堪えて、俺は食卓についた。
いただきます。
俺はさっそく、彼自慢のフレンチトーストを頬張ってみた。
中まで卵が染み込んでいて、噛むごとにジュワッと甘い卵が滲み出てくる。川口青年が、俺をもてなすために丹精込めて焼いてくれたと思うと、一際味わい深いものがある。
「たしかに美味な、このフレンチトースト」
「でしょ!子供の頃、毎朝これ作ってたんですよ、美味しくないわけがないじゃないですか」
川口青年も俺の反応を確認した後、自分でもフレンチトーストを頬張って、自画自賛するように「美味い」と嬉しそうに食べていた。
彼のそんな顔を見ていたら、こちらも自然と笑顔が溢れてしまう。
なんて幸せな食卓なんだろう。これからずっと、こんな幸せな時間を共有できるのだろうか。
「なぁ」
「はい、なんですか?あっ、スープおかわりします?」
「一緒に暮らそうか?」
「それいいですね、そうしましょう」
えっ!?即答?
「冗談じゃないぞ」
「今、俺も言おうと思っていたんで」
マジか。いや、お前もそう思ってくれていたのなら、それは嬉しいことなんだが。
「楽しみですね」
そうだな、そうしたら、毎朝このフレンチトーストが食べられるんだからな。
「じゃあ、次の一緒の休みの時にでも、一緒に暮らす家を探しに行こうか」
目の前の川口青年は、まるでハムスターのように口いっぱいに頬張っていて、顔だけでなく、体いっぱいを使って頷いてきた。
昨日のことがまるで夢のようだった。
実際、やけにリアルな夢を見たような、どこまでが現実でどこからが夢なのか、境界線が曖昧な心地だった。
しかし、寝ぼけ眼で目を凝らして見ると、やはりそこは川口青年の部屋で、昨日の出来事が決して夢や幻ではなく、現実の続きてあることを教えてくれる。
「あっ、起きましたか?」
声のする方を見ると、そこにはキッチンに立つ川口青年がいた。
「すぐ朝ごはんにしますね。たいしたものは作れないけど」
そう言うと、川口青年は鼻唄を歌いながら、何かを調理していた。とても香ばしい、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「何を作ってるの?」
俺はベッドから起き上がると、キッチンに立つ上半身裸の川口青年を背後から軽く抱きしめた。
「フレンチトーストです」
「随分と洒落たもの作るんだな」
「あと、目玉焼きを焼きますね」
「卵ばかりじゃないか」
俺は、そんな川口青年が愛おしくて、彼の首筋にキスをした。
「髭がくすぐったいです。用意できるまで顔でも洗ってきてください」
「はーい」
俺はもう一度、彼の首筋に軽くキスをしてから、洗面台で顔を洗い、髭を剃って、歯を磨いた。
なんか、まるで新婚夫婦の朝みたいだな。ふと、そんなことが頭をよぎって、俺は鏡の中の自分の顔を見て吹き出しそうになった。
なぜなら、そこには幸せに緩んだだらしない表情の自分がいたからだ。
部屋に戻ると、ちょうど朝食が出来上がったところで、テーブルの上には、フレンチトースト、目玉焼き、サラダ、スープ、トーストが置かれていた。
「美味そうだな。朝からかなりのボリュームだな」
「俺の家、母さんが小学生の時に離婚していなくなっちゃったんで、俺がご飯作ってたんですよ」
「そうなんだ。ところでこれ、フレンチトーストとトーストって、どっちもパンだよな?」
「いいじゃないですか、別に。たくさん並んでた方が賑やかで」
そういう問題か?と、口に出しそうになるのをグッと堪えて、俺は食卓についた。
いただきます。
俺はさっそく、彼自慢のフレンチトーストを頬張ってみた。
中まで卵が染み込んでいて、噛むごとにジュワッと甘い卵が滲み出てくる。川口青年が、俺をもてなすために丹精込めて焼いてくれたと思うと、一際味わい深いものがある。
「たしかに美味な、このフレンチトースト」
「でしょ!子供の頃、毎朝これ作ってたんですよ、美味しくないわけがないじゃないですか」
川口青年も俺の反応を確認した後、自分でもフレンチトーストを頬張って、自画自賛するように「美味い」と嬉しそうに食べていた。
彼のそんな顔を見ていたら、こちらも自然と笑顔が溢れてしまう。
なんて幸せな食卓なんだろう。これからずっと、こんな幸せな時間を共有できるのだろうか。
「なぁ」
「はい、なんですか?あっ、スープおかわりします?」
「一緒に暮らそうか?」
「それいいですね、そうしましょう」
えっ!?即答?
「冗談じゃないぞ」
「今、俺も言おうと思っていたんで」
マジか。いや、お前もそう思ってくれていたのなら、それは嬉しいことなんだが。
「楽しみですね」
そうだな、そうしたら、毎朝このフレンチトーストが食べられるんだからな。
「じゃあ、次の一緒の休みの時にでも、一緒に暮らす家を探しに行こうか」
目の前の川口青年は、まるでハムスターのように口いっぱいに頬張っていて、顔だけでなく、体いっぱいを使って頷いてきた。
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