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芽生え
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俺が川口青年の部屋に泊まってから、彼は少し俺と距離を置くようになった気がする。
以前みたいに俺の姿を見つけると、屈託の無い笑顔を浮かべて駆け寄ってくることも無くなったし、一緒に弁当を食べようと誘っても断られてばかり。それに、なんかよそよそしい。何がと言われても困るが、笑顔が減った気がする。ただの気のせいならいいのだが、俺は何か彼の気を悪くするようなことでもしたのだろうか?心当たりが無かった。
「福山さん、最近何かありました?」
喫煙スペースで、俺は狭山に話しかけられた。
「いや、特に無いけど何で?」
「なんか、最近考え込むことが増えた気がして。ちょっと前までは、すげー楽しそうにしてたのに」
「そうか?」
「何か悩み事あるなら、俺に話してみてくださいよ」
悩み事か。たいしたことでもないけど、狭山に話すことでこのモヤモヤも晴れるかもしれない。
「実は、最近気になる奴がいて」
「おっ!恋話ですか?」
「ちげーよ、バカ」
「冗談ですよ」
「まったく・・・で、その気になる奴とすげー仲良くなれたんだけど、最近そいつの様子がおかしいんだ。急によろよそしくなって距離を置かれているように感じて。前はもっと俺に笑顔を見せてくれたのに。目が合えば笑ってくれたし、お喋りもネタが尽きないくらいだったのに、最近は目が合っても視線を逸らされるし、会話もあまり続かないんだ。なんか、そればかり気になって仕方ないんだ」
「それ、恋っぽいですね」
「えっ?」
「まるで高校生の恋話ですよ。相手も福山さんも。いい加減、自分の気持ちに気づいたらどうですか?」
そうなのか?この俺が恋?しかも相手は川口青年?まさか、そんなことが本当にあるのだろうか?
狭山に指摘されてから、俺はよりいっそう川口青年のことを意識してしまって、仕事も手につかなくなってしまった。
こう言う時、どうしたらいいのだろう?
俺は、自分の気持ちにまだ明確な自覚症状が無く、もっとたくさんの人に相談したくなった。
しかし、そうは思ったものの、この年になると周りの友人はほとんど結婚してて家庭を持ってて、付き合いも希薄になっていたし、狭山以外に職場の人間に話すのも憚られるし、吐き出す場所が案外無かった。
そんな時、ネットで優しい匿名SNSというのを見つけた。
SNSか。俺とは縁の無い世界だと思っていたが、こういうので呟いたら誰かが聞いてくれないだろうか?
俺は、そんな軽い気持ちでSNSをダウンロードしてみた。
しかし、ダウンロードしてみたのはいいが、何を呟けばいいのだろう?
俺は、とりあえず余計な主観はできるだけ抜きにして、ここ数ヶ月に起きた事実だけを書いてみた。
『数ヶ月前、私の職場に年下の新人が異動してきました。彼と私は共に仕事をするうちに親しくなり、一緒に食事をしたり、仕事の合間にタバコを吸いながらお喋りしたり、仲良くしてきました。ひと月前に彼の歓迎会を私が企画して彼も喜んでくれたと思います。そして、その日の夜、私が彼の部屋に泊まってから、彼が急に距離を置くようになりました。私には心当たりがありません。どうしたら以前のような関係に戻れますか?』
俺は、こんな場所にこんなくだらない、悩みとも愚痴とも取れないようなことを投稿する自分を少々馬鹿らしいと思いながら、どこかでいいアドバイスを貰えないかな、と少し期待してみた。
翌朝、目を覚ましてSNSを開けてみると、いくつかのコメントがついていた。
『恋話ですか?』
『のろけですか?』
そうなのか?他人から見ると、やはりそう見えるのだろうか?
『お相手の方は少なくともあなたに好意を抱いていると思います。一度、本人の口から直接聞いてみてはどうでしょうか?』
そうだな。川口青年が何を思っているのか聞きもせずに、俺の中で勝手にあれこれ考えるのは違うかもしれない。あまり深刻にならずに気軽に聞いてみたら、案外簡単に誤解が解けるかもしれないな。
以前みたいに俺の姿を見つけると、屈託の無い笑顔を浮かべて駆け寄ってくることも無くなったし、一緒に弁当を食べようと誘っても断られてばかり。それに、なんかよそよそしい。何がと言われても困るが、笑顔が減った気がする。ただの気のせいならいいのだが、俺は何か彼の気を悪くするようなことでもしたのだろうか?心当たりが無かった。
「福山さん、最近何かありました?」
喫煙スペースで、俺は狭山に話しかけられた。
「いや、特に無いけど何で?」
「なんか、最近考え込むことが増えた気がして。ちょっと前までは、すげー楽しそうにしてたのに」
「そうか?」
「何か悩み事あるなら、俺に話してみてくださいよ」
悩み事か。たいしたことでもないけど、狭山に話すことでこのモヤモヤも晴れるかもしれない。
「実は、最近気になる奴がいて」
「おっ!恋話ですか?」
「ちげーよ、バカ」
「冗談ですよ」
「まったく・・・で、その気になる奴とすげー仲良くなれたんだけど、最近そいつの様子がおかしいんだ。急によろよそしくなって距離を置かれているように感じて。前はもっと俺に笑顔を見せてくれたのに。目が合えば笑ってくれたし、お喋りもネタが尽きないくらいだったのに、最近は目が合っても視線を逸らされるし、会話もあまり続かないんだ。なんか、そればかり気になって仕方ないんだ」
「それ、恋っぽいですね」
「えっ?」
「まるで高校生の恋話ですよ。相手も福山さんも。いい加減、自分の気持ちに気づいたらどうですか?」
そうなのか?この俺が恋?しかも相手は川口青年?まさか、そんなことが本当にあるのだろうか?
狭山に指摘されてから、俺はよりいっそう川口青年のことを意識してしまって、仕事も手につかなくなってしまった。
こう言う時、どうしたらいいのだろう?
俺は、自分の気持ちにまだ明確な自覚症状が無く、もっとたくさんの人に相談したくなった。
しかし、そうは思ったものの、この年になると周りの友人はほとんど結婚してて家庭を持ってて、付き合いも希薄になっていたし、狭山以外に職場の人間に話すのも憚られるし、吐き出す場所が案外無かった。
そんな時、ネットで優しい匿名SNSというのを見つけた。
SNSか。俺とは縁の無い世界だと思っていたが、こういうので呟いたら誰かが聞いてくれないだろうか?
俺は、そんな軽い気持ちでSNSをダウンロードしてみた。
しかし、ダウンロードしてみたのはいいが、何を呟けばいいのだろう?
俺は、とりあえず余計な主観はできるだけ抜きにして、ここ数ヶ月に起きた事実だけを書いてみた。
『数ヶ月前、私の職場に年下の新人が異動してきました。彼と私は共に仕事をするうちに親しくなり、一緒に食事をしたり、仕事の合間にタバコを吸いながらお喋りしたり、仲良くしてきました。ひと月前に彼の歓迎会を私が企画して彼も喜んでくれたと思います。そして、その日の夜、私が彼の部屋に泊まってから、彼が急に距離を置くようになりました。私には心当たりがありません。どうしたら以前のような関係に戻れますか?』
俺は、こんな場所にこんなくだらない、悩みとも愚痴とも取れないようなことを投稿する自分を少々馬鹿らしいと思いながら、どこかでいいアドバイスを貰えないかな、と少し期待してみた。
翌朝、目を覚ましてSNSを開けてみると、いくつかのコメントがついていた。
『恋話ですか?』
『のろけですか?』
そうなのか?他人から見ると、やはりそう見えるのだろうか?
『お相手の方は少なくともあなたに好意を抱いていると思います。一度、本人の口から直接聞いてみてはどうでしょうか?』
そうだな。川口青年が何を思っているのか聞きもせずに、俺の中で勝手にあれこれ考えるのは違うかもしれない。あまり深刻にならずに気軽に聞いてみたら、案外簡単に誤解が解けるかもしれないな。
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