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バディ
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俺が川口青年の教育係に任命されたため、俺たち2人はしばらく一緒のシフトで働くこととなった。
幸いなことに、高田部長が言ったとおりで川口青年は優秀で、飲み込みが早くて指示した仕事はすぐに覚えるし、機転もきいた。
仕事の引き継ぎに1ヶ月くらい必要かと思っていたが、思いの外早く、川口青年は俺の手を離れて自立していった。
業務にも余裕ができたおかげで、仕事中に軽い雑談をするようになった。
聞けば川口青年は今年24歳になるとのことで、11歳年上の俺はさすがに年齢差に衝撃を隠せなかった。
そうか、俺、いつまでも気持ちは20代のつもりでいたけど、実際に本物の若者を前にするとそんなに離れていたんだな。結構ショックデカいわ。どんなに若いつもりでいても、本物の若者には勝てないわな。
しかし、そんな俺のショックをよそに、川口青年と俺は次第に親しい間柄になっていく。
いつからか、一緒に休憩中にコーヒーを飲んだり、弁当を食べながら他愛もない雑談をしては笑い合ったりしていた。
「川口君、すっかり福山さんに懐きましたね」
「そうか?」
狭山にそう言われて、俺は改めてその事実に気付かされた。
「最初は歳の差が開きすぎてて、うまく打ち解けられるのかわからなかったけど、さすが福山さんは若いことの接し方が上手いね」
そうか?俺のおかげというよりは、川口青年の人柄に助けられているような気もするが。
まぁ、周りから見ても、俺たちが上手くいっていると認められているのならそれでいいか。
そんなある日の昼休み。
俺はいつもと同じく川口青年と一緒に、食堂で弁当を食べながら談笑していた。
「福山さんは、恋人いないんですか?」
唐突だなぁ。まぁ、若い子にとっては、恋話は重要な問題なのだろう。
「いや、いないよ」
「そうなんですか?福山さん、モテそうなのに。どれくらい彼女いないんですか?」
「最後の彼女と別れてから、もう4年になるかな。川口君は?彼女いるのか?」
「あー、その質問、セクハラですよ」
「何だよ、お前が聞いてきたんだろが」
俺たちは声をあげて笑った。いつの頃からか、俺たちはこんな掛け合いをするようになっていた。
「僕も今はいませんよ。大学出て就職してからは誰とも。もう、2年も誰とも付き合ってないですね」
「なんだよそれ、若いのに勿体無いな」
そうか、うちの会社、社員をこき使うからな、忙しくて彼女なんか作っている暇なんかないんだろうな。
「お前、モテそうだから作ろうと思えばすぐにできるだろ」
「そんなことないですよ、全然モテないですよ」
「どんな女がタイプなんだ?」
「言ったら紹介してくれるんですか?」
「するわけないだろ、まず自分の彼女を探すわ」
「それもそうですね。うーん、そうだなぁ。年上の人がいいかな」
「あぁ、そんな感じするわ」
「そうですか?」
「お前、すごい甘えそうだからな」
俺が川口青年を茶化すと、川口青年は明らかに不服そうな顔をした。
「そんなことありませんね。僕、リードするタイプなんで」
はいはい、わかったわかった。
俺が信じてないのが伝わったのか、川口青年はその仕返しとしてなのか、俺の弁当から海老天を取り上げてパクリと頬張った。
幸いなことに、高田部長が言ったとおりで川口青年は優秀で、飲み込みが早くて指示した仕事はすぐに覚えるし、機転もきいた。
仕事の引き継ぎに1ヶ月くらい必要かと思っていたが、思いの外早く、川口青年は俺の手を離れて自立していった。
業務にも余裕ができたおかげで、仕事中に軽い雑談をするようになった。
聞けば川口青年は今年24歳になるとのことで、11歳年上の俺はさすがに年齢差に衝撃を隠せなかった。
そうか、俺、いつまでも気持ちは20代のつもりでいたけど、実際に本物の若者を前にするとそんなに離れていたんだな。結構ショックデカいわ。どんなに若いつもりでいても、本物の若者には勝てないわな。
しかし、そんな俺のショックをよそに、川口青年と俺は次第に親しい間柄になっていく。
いつからか、一緒に休憩中にコーヒーを飲んだり、弁当を食べながら他愛もない雑談をしては笑い合ったりしていた。
「川口君、すっかり福山さんに懐きましたね」
「そうか?」
狭山にそう言われて、俺は改めてその事実に気付かされた。
「最初は歳の差が開きすぎてて、うまく打ち解けられるのかわからなかったけど、さすが福山さんは若いことの接し方が上手いね」
そうか?俺のおかげというよりは、川口青年の人柄に助けられているような気もするが。
まぁ、周りから見ても、俺たちが上手くいっていると認められているのならそれでいいか。
そんなある日の昼休み。
俺はいつもと同じく川口青年と一緒に、食堂で弁当を食べながら談笑していた。
「福山さんは、恋人いないんですか?」
唐突だなぁ。まぁ、若い子にとっては、恋話は重要な問題なのだろう。
「いや、いないよ」
「そうなんですか?福山さん、モテそうなのに。どれくらい彼女いないんですか?」
「最後の彼女と別れてから、もう4年になるかな。川口君は?彼女いるのか?」
「あー、その質問、セクハラですよ」
「何だよ、お前が聞いてきたんだろが」
俺たちは声をあげて笑った。いつの頃からか、俺たちはこんな掛け合いをするようになっていた。
「僕も今はいませんよ。大学出て就職してからは誰とも。もう、2年も誰とも付き合ってないですね」
「なんだよそれ、若いのに勿体無いな」
そうか、うちの会社、社員をこき使うからな、忙しくて彼女なんか作っている暇なんかないんだろうな。
「お前、モテそうだから作ろうと思えばすぐにできるだろ」
「そんなことないですよ、全然モテないですよ」
「どんな女がタイプなんだ?」
「言ったら紹介してくれるんですか?」
「するわけないだろ、まず自分の彼女を探すわ」
「それもそうですね。うーん、そうだなぁ。年上の人がいいかな」
「あぁ、そんな感じするわ」
「そうですか?」
「お前、すごい甘えそうだからな」
俺が川口青年を茶化すと、川口青年は明らかに不服そうな顔をした。
「そんなことありませんね。僕、リードするタイプなんで」
はいはい、わかったわかった。
俺が信じてないのが伝わったのか、川口青年はその仕返しとしてなのか、俺の弁当から海老天を取り上げてパクリと頬張った。
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