僕と精霊〜The last magic〜

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エピローグ

最終話 僕らと精霊達

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 早いものですね。私達が人間界に来てから13年が経ちました。私達にとっては些細なものですが、人間にとっては発展の連続でした。この龍神町も今や魔法と科学が入り乱れた町になりました。

 今日はとても特別な日です。なんとジャンさんが受賞する事になったんです!魔法を使えなくなってから、魔法や精霊についての論文をまとめた本の内容が素晴らしいものだったとの事です。なので今夜は皆さんと一緒に式典会場に行きます!


バーン家

「ツイスター!ツイスター!見てー!」
「おかえりなさいルナさん」
「ただいま!見てこれ!」
ルナが100点満点のテスト用紙を掲げながら帰ってきた。

「凄いですよルナさん!」
「えへへ、ツイスターが一緒に勉強してくれたおかげだよ」
「これで連続28回ですね!」
「うん!」
ツイスターはルナから受け取った答案をいつも通り、額縁に飾る。

 ルナさんも気付けばもう小学5年生です。11歳ですよ!夢だったアイドルに最年少でなったそうです!やっぱりルナさんは凄いんですよ!学校でも友達いっぱいの人気者、この前なんて山ほどのラブレターを!この話はまた今度しますか。

「そうだ!今夜の準備しなきゃ!いっぱいして!お兄ちゃん達を驚かせるんだ!」
「いいですね!どんな格好にします?私はやっぱりファーストライブの衣装がいいと思いますよ」
「うん!そうする!」

「おかえりなさいませ、ルナ様」
「今から着替えるの!エッチ」
「なっ!」
「すみませーん、さぁルナさん着替えますよー!」
2人は部屋に篭り支度を始める。



ジャン宅

 緊張、彼を襲う悍ましいほどの圧はとても強い。ジャンは今日も見えぬものと戦っている。
「父ちゃん緊張してる~!」
「変な顔~!」
「水持ってきてくれない?ヤバいかも」
「「ははははっ!」」

「こら2人ともパパをからかわないの、それより今日のテストはどうだったの?」
スフールが赤ん坊を抱えながら部屋に入ってきた。

「げっ...」
「ロクスはダメだったけど、僕は満点だよ!」
「あ!おいスプリ!」
「あ、ごめん」
やんちゃ坊主のロクスとスプリも小学生3年生、相変わらずの素行で良く学校を騒がせてはスフール達を驚かせている。

「ロクスはおやつ抜きかなぁ」
「そ、そんなぁ」
「コラァ❗️アンタらまたアタシのパンツ盗んだわね!」
「「やべっ!」」
今日も今日とて、2人のイタズラがローズの逆鱗に触れる。

「待ちなさーい!」
「「捕まえてみろ~!」」
「はぁ...2人ともおやつ抜きね」
「ははは...」

 今が幸せだ。僕は最近、そう思うようになった。でもなんか違う...僕の理想の幸せとは少し違う、原因は分かってる。あぁ...パンプ、お前は元気にやってるのか?

 夢を見るんだ。あの占いで見たパンプとアスモンの姿が...2人に会いたいけど、それはまた新しい厄災の始まりなんじゃって頭から離れない。

 僕にはもう戦う力が無い。魔法が無くても大丈夫、口で言うのは簡単だけど...いざとなると僕は...

「ジャン?考え事?」
「あ.あぁごめん、スー..なんか急に自信が持てなくなってきた」
「大丈夫、あなたは強いんだから。ねぇアカメちゃん」
「うぅ!」
僕には新しい家族がまた増えた。アカメ、家の可愛い長女で末っ子。この前、やっとハイハイができるようになったんだ。

「アカメちゃんもパパがんばれーってしようね」
「ぱー」
「ん?今、パパって言った!?」
「言ってないよね~先に言うのはママだもんね~」
「まーぱー」
今はパパとママ、どっちを先に呼んでくれるかを勝負している。

「白夜様!白夜様!ジャン様のお迎えに参りました」
「ヤバっもう来たの!?」
「頑張ってね、私達も準備が出来たら行くから」
「うぅ...行きたくないよぉ」
「はいはい行った行った!」
スーに背中を押され、僕は迎えの車で会場へと向かった。

「調子はどうですか?ジャンさん」
「どうもこうもないよ、表情があるならもっと早く教えてよ。3日前に急に言われても困るよ」
「すみません。こちらも中々ぎゅうぎゅうなスケジュールでして」
「うい、うぃ」
ジャンは窓から外の景色を眺めながら仮眠をとる。

 また夢を見てしまった。いつもの夢だ、うんざりするが目を覚ましたくても夢が終わってくれない。


 数時間後、会場に到着した僕は楽屋で支度をして、表彰に赴いた。

「ツイスター!お兄ちゃんまだー?」
「もう少しですから我慢ですよ我慢」
「まだかなぁ」

「ローズ、父ちゃんまだかな?」
「すぐに始まるわ。あ、そうだ言い忘れてたけど、アンタら絶対に此処でイタズラとかしないでよね」
「「しない、しない!」」
「約束よ。破ったら首の骨、へし折るから」
「「は、はい...」」
ロクスとスプリはローズに手を握られて大人しくなる。

「よ!スフール、元気だったか?」
「ごきげんよう」
「あら、ザル!それにメイデンも久しぶりね。前にあったのは...」
「去年の同窓会以来だな、お前酒飲みすぎだぜ」
「やめてよもー」
「へっ!..あ、そうだアドロン達はどうした」
 
「アドロン達なら施設の子達とみんなで見に行くって言ってたわね。どこかに居るんじゃない?」
「ま、そのうち会えるか」
「そうね」

「ほら2人とも、ザルとメイデンに挨拶しなさい」
ロクス達はローズに頭を押し付けて、無理矢理お辞儀をさせる。

「相変わらずローズに虐められてんな!チビ助ども」
「チビじゃない!」
「じゃない!」
「ハハハ!息ぴったりな所も変わらないな」
2人はザルに頭をワシャワシャと撫でられる。

『ご来場の皆様、本日は遠い中の参加、誠にありがとうございます。これより、名誉国民ジャン・白夜への受賞を行います』
式場内にアナウンスが流れ、照明が暗くなる。

「ルナさん!始まりますよ」
「え?うん...」
「どうしたんですか?」
「なんか嫌な気配がする」
ルナのキラキラした表情が深刻な顔に変わる。

「嫌な気配?」
「うん、あの辺りから...ねぇツイスター、ルナに入れる?」
「ええ、問題ないですよ」
とりあえずツイスターはルナの体に入り込んだ。

「どうしたの2人とも、トイレ?」
「ローズ、なんか危ない感じがする」
「ビリビリ変な感じ」
「何言ってるの?」
ロクスとスプリも微かに魔力を練り始める。

 ルナ達が何かに警戒している間にジャンの表彰が終わり、質疑応答が始まっていた。

「おぉ、ルナ姉ちゃんも気付いてたんだ」
「当たり前でしょ。下手したらお兄ちゃんの命に関わってんだから」
(えぇ~!?そうなんですか!)
「でも僕らでどうするんだよ」
「そりゃドカンと魔法を」
「やっぱそうだよね」
式場の異変に気付いていたのは3人だけだった。そして、異変は現実に式場に銃声が響いた。

「ツイスター!羽!」
(はい!)
ルナは背中から天使のような翼が生えるのと同時に目にも止まらぬ速さで飛び出し、ジャンの胸元へと届こうとしていた弾丸を掻き消した。

 式場は困惑の声で溢れかえる。
「ルナ、どうしたんだ?」
「ツイスター!居た!アイツだ!」
(はい!懲らしめちゃいましょう!)
「うぎゃあああ❗️」
ルナは銃を構えていた男に電撃を放つ。

「よし!」
「ルナ!危ない!」
「え?」
死角から弾丸が飛んできた事に気づいたジャンはルナを突き飛ばし、弾丸を腹にくらう。

「ぐっ...」
「お兄ちゃん!」
式場の声が悲鳴に変わる。同時にセバスやロクス達による敵対勢力の殲滅が始まる。

『皆様、直ちに避難をお願いします。これは訓練ではありません。ただちに避難をお願いします』
「お兄ちゃん!今治すから!」
ルナはジャンの傷口に回復魔法を流し込む。しかし、傷が塞がらない。

「おいウリエラ、スカルド、子供達を避難させろ。俺は敵をしばいてくる」
「はい!皆さん!避難しますよ。いつもの訓練を思い出してください!」
「こっちだ!こっち!」
「「「「「「わあぁぁぁ❗️」」」」」」
ウリエラとスカルドは一緒に見学に来ていた子供達を連れて避難を始める。

「おいアドロン、こりゃどういうこった」
「俺が聞きたいぜ、まったく...乱暴なのは久しぶりだけど、やるしかないね」
ザルとアドロンは銃を持つ者達を無力化させていく。

「どうして!?ツイスター!治らないよ!」
(どうやら魔力を拒絶しているようです!)
「無駄だぞガキ!あの弾丸は魔力を無効化する。その傷はお前らに治すことは出来ないぞ!ハハハッ!死ね!ジャン・バーン!」
「居た!アイツだ!」
「「死ねぇ!」」
「ぎゃあああ‼️」
弾丸を放った男はロクスとスプリの本気の魔法をくらい、消滅する。
「父ちゃんの敵は僕達の敵」
「全部倒す」

「アンタ!目的は何?3秒以内に答えないと首をへし折るわよ」
ローズは最初に銃を構えていた女の胸ぐらを掴む。
「ひっ!私達はただあの男に復讐を...」
「復讐?」
「ジャン・バーンは悪魔の...」
女は全て話し終える前にローズに首をへし折られる。

「スフール!コイツらあの時の派閥よ!容赦する事ないわ」
犯人はジャンを憎む暴徒達だ。あの頃の思想は醜く大きなものとなり、ジャンに対する殺意が生まれていた。

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!しっかりして!」
「ルナ..兄ちゃん、ダメかもしれない...危ないから、早く兄ちゃんから...離れるんだ」
ジャンは血を吐きながらルナの顔に手を当てる。

「やだ!お兄ちゃん死んじゃ嫌!ルナが治すから!何でもするから元気になってよ❗️」
(ルナさん!後ろ!)
「うおぉぉぉ❗️」
ジャンは気合を振り絞り、ルナの前に立って銃弾を浴びる。

「お兄ちゃん❗️」
(ジャンさん!)
「「父ちゃん❗️」」
「ジャン❗️」
スフール達はすぐに血まみれのジャンの下へと駆けつける。

「みんな...ごめん...」
ジャンはそう言い残して心臓の動きが止まる。
「...っ!」
「「父ちゃん...」」
「ぱー、ぱー」
「うぅ...」
子供達は言葉を失い、スフールはアカメを抱きしめながら涙を流す。

「クソッ...胸糞悪いわね!」
ローズが怒りに任せて最後の銃を持った男の頭を潰すと同時に突如として、空間に禍々しい穴が現れる。

 穴から黒い羽を背中に生やした少女が出てくる。
「あれは...」
「おいおいマジかよ。こんな時、悪魔かよ」

「んー?おいそこのお前!此処が人間界なのです?」
「あ?何が目的だお前?」
アドロンは少女に警戒をする。

「なるほど!なるほど!パパ!ママ!人間界だって!」
少女は穴に顔を突っ込んで叫ぶとまた新しい悪魔が現れる。

「なんなんだよ」
「うぉほん!人間ども!今より魔王様の来るぞ!跪け!」
穴から大量の悪魔が現れ、自らの体を使って魔王が通る為の道を作る。

「こんな時に...アミィさん」
「えぇローズちゃん、やるしか...ちょっと待って」
アミィは戦闘体制を解いて微笑む。

「ちょっとアミィさん!何やってるんですか!」
「お兄ちゃんの精霊石が光ってる!」
ルナの声にみんな驚いた。色と輝きを失ったはずのジャンの精霊石が赤く輝いていた。

 温かい...僕は、死んだのか...いや、違う..懐かしい、この感じは...

 ジャンの心臓は精霊石の力で再び動き出す。
「我らが悪魔の長!魔王パンプ様が来るぞ!恐れろ人間ども!」
穴からパンプとアスモンが飛び出して来る。

「パン..プ」
「お兄ちゃん!」
「父ちゃん!」
「父ちゃん死なないで~!うわぁん!」
子供達はジャンの心配をしていたが他の者達は魔王の存在に驚いていた。

「うおおおぉ❗️やっと帰ってきたぞ‼️やったぞアスモン!」
「やったのだパンピー!」
あの頃と変わらない。あの2人が帰って来た。

「パパ!パパのパートナーはどこにいるのです?」
「今から探す。近くの人間に聞けば...ってアレ?アドロン達だ!」
「うわぁ!ママ!ボク達人間、初めて見たよ!」
「パンピー!アミィも居るぞ!」

「ちょっと!パンプ❗️アンタねぇ❗️今まで何処ほっつき歩いてたの❗️」
「アレ~?...あっー❗️ローズだ!大きくなってる!」
「いいから..ジャンの怪我...治しなさいよ」

「ジャン?あっー!?ジャン!どうしたんだその怪我❗️」
パンプはジャンを見つけると同時に緑色の宝石を作り出す。

「なんだお前!」
「敵だな!」
「待って2人とも!違うよ!」
パンプを撃ち落とそうとしたロクスとスプリをルナは止める。

「ヒーリングジュエル❗️」
宝石を打ち込まれたジャンの傷が完全に癒える。
「...っ!」
「ジャン!久しぶりだな!」

「パンプ...本当にパンプなのか」
「ああ!」
パンプはポンと自分の精霊石に手を当てる。

「うぅ..本当に...夢じゃない...どんだけ待たせるんだよ」
「ごめん、帰り方が分からなかったから時間が掛かった」
「バカ野郎...寂しかったぞ」
ジャンは泣きながらパンプを強く抱きしめる。

「貴様!魔王様に!」
「別に良いぞ!ほらみんな!紹介するぞジャンだ!」
パンプは悪魔達にジャンを紹介する。

「おお!あのジャンですな!失礼いたしました」
悪魔達はジャンに向かって一礼する。

「パンプって?」
「さぁ?ルナ姉ちゃん知ってる?」
「お兄ちゃんの精霊だよ」
「「えっ!?」」

「おお~!もしやお前、ルナか!」
「アスモンお姉ちゃん!」
ルナはアスモンを強く抱きしめる。

「それにしてもお前、魔王ってなんだよ」
「帰り方を探す為に戦ってたらなんかなってた」
「お前らしいな...」
そういうことかよ。あの占いで映っていたのは厄災なんかじゃなくてパンプが従えてた悪魔かよ。

「そうだ!オレ達の子供を紹介するぞ。おーい!」
パンプに呼ばれ、少女と3人のカーバンクルがやって来る。
「えっと、アスモンに似てるのがジェリーでオレに似てるのがポルパ、ペロア、ピモンだ!お前ら挨拶だ」
「「「「こんにちわ❗️」」」」

「奇遇だね。僕にも子供が居るんだ。そこにいる双子、ロクスとスプリにスーが抱いてる子、アカメだ」
「あれ?もしかして白夜との子か?」
「ああ、そうだ」

「なんかお互いに新しいのかいっぱいだな」
「そうだな」
2人は互いの変化を笑う。


「パンプ!お前随分と待たせたな!」
「寂しかったぜ」
「元気そうで何よりです」
「ふん...心配したのよ。謝って」
精霊達がパンプの下に集まる。

「アミィ様、行かなくてもよろしいのですか?」
「今はいいわ。ジャン達の番でしょ」
「それもそうですね。おや?ユウスケ様、泣いていますか?」
「うるせぇ..言うな」

「ふっ、なんやかんやあったが...ハッピーエンドってヤツかな?」
「おいおい終わらせんなよ」
アドロンとザルははしゃぐジャン達を見ながら笑う。

「ジャン!ただいま!」
「ああ!おかえり!」

 ジャンとパンプ、この2人は人間と精霊の関係を語る上で最も重要な存在なのかもしれない。共に生き、互いを信じ、時に喧嘩もするが最後は笑い合う。生物兵器などではない。精霊は人間にとって友であり、家族なのだ。


 これは僕達と精霊達の物語。これからも僕達の物語は続いていく。でも、とりあえず一旦は終わりかな?
今度、機会があったら僕の子供達の話でもしようかな。

著:ジャン・ビャクヤ 精霊学文書「僕と精霊」より  




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