僕と精霊〜The last magic〜

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エピローグ

第218話 思い残す事

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2月 龍神学園

 表彰式から早2ヶ月、あの一件はしばらく新聞の表紙を飾った。僕は無事に退院をして学園に戻る事ができた。悪魔がいなくなった事で魔獣の発見例がかなり減り、任務もほとんど無くなった。

「えぇ!僕がですか!」
「ああ、急で悪いんだけどお願いできるかな」
「は、はい」
僕は卒業式で卒業生代表として話す事になってしまった。先生からそう告げられた。例年だと生徒会長がやる事になってるけど、アドロンが僕を推薦したらしい。

「悪いなジャン」
「あ、うん」

卒業...いつまでも続くものだと思ってたけど、やっぱり何事にも終わりはあるんだな。

「何か分からないことがあれば、私に聞いても良いし、みんなに頼っても良いぞ」
「はい」

放課後

 僕ら教室に残って残り少ない時間を楽しんでいた。僕はザルと一緒に卒業スピーチに向けた原稿作りをしていた。

「どうだジャン、なんか纏まったか?」
「いや全然、ダメだ。何も思い浮かばない」
「はぁ...それにしても、もう卒業か...ジャンは卒業したらどうするんだ?」
「そうだなぁ...そういえば何も考えてなかったな」

「おいおい、それで一家を支えていけるのかよ..まぁ、正直そんな事を考える時間無かったしな」
「ジャンは私が養うから良いもーん。ねぇ~」
白夜もジャンの肩に手を置いて、会話に参加をする。

「かぁ~金持ちは良いねぇ..」
「ザルはどうするの?」
「俺?俺は教師になりてぇな」
「教師か、良いね!ザルは頭も良いし、絶対良い先生になれるよ」
「よせよ」
ザルは少し嬉しそうに照れていた。


「アドロンさんは何か夢でもあるんですか?」
「俺は孤児院を作る...私達みたいな身寄りの子達に世界は美しいんだって教えたいんです」
「素敵ですね!私にもぜひ協力させてください」
「良いぜ、人手が多いほど助かるからな...ウリエラとならきっと上手くいくよ!」


「でさ~!白夜の子供が男の子だったら~」
「ローズ、お前が1番楽しみにしているみたいだな」
「メイデンも同じ立場になったら分かるわよ」
「ルナさんと仲良くなってもらいたいですね」
「そうか、俺達親戚になるのか!」
「そうね」

「良いなぁ~リベラも..そろそろ種を作ろうかなぁ」
「リベラの場合は一気に大家族ね」
「うん」
それぞれが卒業後の事についてを話題に盛り上がっていた。

 それからしばらくしていると1人の教員が教室に入ってきた。
「ジャン・バーン君、ちょっといいかな?」
「え、あ、はい」
「おいおい、なんかやらかしたのか?」
「まさか!ちょっと行ってくる」
ジャンは教室を出る。

「君、卒業式で話すんだろ?大変だねぇ」
「は、はぁ..」
見覚えのない先生だ。新任かな?なんか嫌な予感

「これ、考える大変だろうから原稿をあげるよ」
「え?」
先生はそのまま原稿を僕に押しつけて何処かへ行ってしまった。

「お、戻ってきた。なんだったんだ?」
「なんか原稿渡された」
「原稿?見ても良いですか?」
「うん」
クラス全員で原稿を見る事にした。

 アドロンの表情が死んでいた。ザルは鼻で笑った。白夜は呆れていた。リベラは困惑、ウリエラは不快な思いをしたのだろう。精霊達は怒っていた。

「なんだよこの鼻につく文」
「最悪」
「最低だ」
「不快です」
「おいジャン、こんなの読むなよ」
「はぁ...」
「ジャン..どうしたの?」

 ジャンは原稿をクシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てた。
「僕ちょっと職員室に行ってくる」
そのままジャンは教室を出て行く。

「あらら、ありゃキレたな」
「無理もありませんよ、あんな事が書いてあったら」
「ちょっと様子見てくる」
「あ!アドロンさん!」
「待てよアドロン!」
教室を飛び出すアドロンに続いて全員で職員室へ向かった。

 ジャンは既に先ほどの教員と話をしていた。
「おっと、さっきの原稿はどうだい?完璧だったろ」
「失礼ですけど余計な事をするのはやめてもらえませんか」
「何?」
ジャンは言葉を選びながらも沸々と怒りを漏らしている。

「大分失礼だね、僕は君を思って」
「気持ちだけで十分です。ハッキリ言いますけど、あの文..バカにしてますよね」
「まさか!君の事なんて」
「僕じゃない、パンプの事だ❗️」
ジャンの怒鳴り声は職員室に響き、他の教員達は驚いていた。

「だって君の精霊は死んだんだろ?君のその精霊石が確たる証拠じゃないか」
「違う、アイツは死んでなんかない。確かに精霊石の色は無くなったけど、アイツは生きているんだ!」
「そう思いたい気持ちは分かるよ。でも現実を見ようよ。君は大人になるんだ。いつまでもそんな事、気にしてちゃ」
先生のふざけた答弁に外から聞いていたアドロンは痺れを切らした。

「ふざけるなよテメェ」
「おっと生徒会長、教師に向かってその言葉遣いは」
「教師じゃないでしょう」
ジャン達の担任教師も乱入する。

「ケンナリ先生!?」
「ジャン君、すまない。私が目を離した隙に...まったく君は!教育自習生という自覚を持たないか!」
「す、すみません」
「教育自習生?」

「ほらジャン君に謝りなさい!」
「ですが僕はこの子の為に」
「教員を目指すのであれば生徒のメンタルケアぐらい意識しなさい!話を聞いていたが君は生徒にエゴをぶつけて傷つけているだけだ」
「なっ!?」
ケンナリは教育自習生の頭を無理矢理下ろす。

「ジャン君、本当にすまない。どうか彼が言っている事は気にしないでくれ..」
「あ、はい」
「帰るぞジャン」
「うん」
僕はアドロンに手を引かれて教室に戻った。

「はぁ...」
ジャンはパンプの事を思い、大きなため息を吐く。
「あの野郎、余計な事しやがって」
「この傷は時間でも解決できるものではありませんからね」

「ねぇジャン、記憶は戻ったんでしょ?2人が何処にいるか分かるんでしょ」
「うん、でも今の僕らじゃ到底手が届かない」

「何処なんだそりゃ」
「悪魔界、マモンがそう言ってた」
「悪魔界!?確かにそれは困難ですね」

「そんなに大変なの?龍神様にお願いすれば精霊界みたいに行けるんじゃないの?」
「一応、お願いしてみたんだけどダメだった。精霊界と悪魔界とじゃ全然違うんだって」
「そっか...」
教室に重い空気が流れる。

「...よしっ!なぁみんな、せっかくだしなんか食って帰ろうぜ」
「ザル様、ですが」
「俺らが一緒に居られる時間ももうほとんど無い。最後くらい笑おうぜ。な?」
「確かに..パンプは心配だけど、アイツにはアスモンが付いてる。ひとりぼっちじゃない、2人なら大丈夫だろうし。僕がウジウジしてたらダメだ。何食べる?」
「よーし、行くか!どうだ?他に行くヤツは?手挙げろ」
当然皆、手を挙げた。

 その日はみんなで楽しんだ。食事をして、買い物をしてちょっと帰りが遅くなってアドロン達と一緒に怒られて...パンプ、お前はきっと楽しくやってるんだろな。少し分かれ道だ。また会える日までお互いに楽しもうな。








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