僕と精霊〜The last magic〜

兄弟の絆編

第104話 鬼の涙と最後の嘘

　レートはレヴィアンを倒した。しかし、頭の中はぐちゃぐちゃと気味の悪い思いが駆け巡っていた

「マスター！」
「いけない...ラート❗️」
グライドの言葉で我にかえり、レートはラートの方へふらつきながら走り出す


　木に乗りかかったラートは自分の断面を凍らせて止血をしていたがもう手遅れだ。ほとんど目に光が残っていない
「ラート！今回復を」
「よ、よせ....おれは..もう」

「何言ってんだ！まだなんとかなる！なんとかしてみせる！」
「やめろ...もう分かるんだ」　
ラートは固まった血で染まった手でレートの肩を掴む

「ごめん！僕のせいで！どうかしてたみたいで！」
「気にするな...俺らは....あの悪魔にやられた..ただそれだけだ」

「そうだ！今すぐ病院に行けば！グライド！」
「はい！」
輝きを取り戻した精霊石はグライドを姿を変える

「無茶言うなよ...」
「諦めるなよ！」
レートはラートを背負いグライドに乗り、空を駆ける

「お前...よくやった..悪魔を倒したんだ...兄として誇らしいぜ」
「もう喋っちゃダメだ！」
2人は焦りながら病院へ向かうがラートはただ笑いながら話を続ける

「昔も...よくお前と喧嘩したよな」
「何急に言ってんだよ」

「いつも、俺が勝ってたけどな....ははは、随分強くなったな」
「そんな事...僕は弱いよ、今だって.....」

「.......」
「ラート？ねぇ？」
「........」
ラートはもう何も喋らなかった。体は熱を失っていき、氷とは違う冷たさになっていく


　すまねぇな、ボノム。お前を1人で行かせちまって....こんな不甲斐ねぇパートナーで悪かった....また何処かで会おうぜ


「ウケケ...ご主人は...最後の最後まで...漢おとこらしかったです...z」
森の奥深くで倒れていたボノムはドロドロに溶けて消える

「はっ！....そうか....ボノム....」
グライドは翼を止めて地上に降りる
「ラート❗️ラート❗️死ぬな❗️嫌だ❗️...なんで....」
「マスター...」
グライドは元の姿に戻り、死んだラートをただ見つめていた。

　精霊石はただの石になり、ラートの胸から外れ落ちる
「僕のせいだ....」
「さぁマスター、帰りましょう....」

　2人はもうどうすれば良いのか分からず、とりあえず家に戻った
「レートさん！大変です！」
家に戻るとすぐにウリエラが飛び出してきた

「どうしたの？」
「お母様が！」
「母ちゃんが！？」
すぐレートは今のソファで寝そべっている母の元へ転びながら駆ける

「あ、あのグライド、その抱えているのって...」
「.....」
グライドは何も言わずラートの死体を降ろす
「...！..う、うぅぅ...どうして...」
2人は玄関で涙を流す


「母ちゃん！」
「ああ...その声はレートかい？」
ミールは目を開けているがレートの事が見えていないようだ

「なんだか部屋の明かりが付かなくなっちゃってね、暗いでしょ？」
「え？....そうだね、真っ暗だよ」

「喧嘩はどうだった？」
「今日も負けちゃったよ」
「そう、また負けたのね」
「うん、負けた」

「2人は昔からよく喧嘩してたわよね」
「さっき、ラートにも言われた」

「そう、喧嘩もするけど仲直りもいっぱいしてきたもんね」
「うん....」

「私ね、捨てられてた2人を見た時...私が育てなきゃって思ったの...」
「どうして？」
「分かんない、でも私じゃなきゃできないなって....」
「僕なんか拾わないで、ラートだけ拾えばよかったじゃないか」

「何言ってんだい...あの時、2人で手を繋いで絶対に離れないようにしてたじゃないか、そんな2人を引き剥がすわけないでしょ」
「はは、母ちゃん....ありがと」

「もう良い歳なんだから喧嘩なんてしないでね」
「うん」
「それから....なんだっけ」
「大丈夫...」

　今日で2回目だ。もう何が起きるのか、起きたのか全部分かってた。

　僕は家族を殺した