僕と精霊

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暗躍する狂気編 5月2日〜5月10日

第25話 Bad Birthday

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 ジャン達の死闘から3日が経った。また、ジャンは日常へと戻る。いつも通りジャン達は学園に向かう。

「じゃあねパンプ、しっかり授業を受けるんだよ」
「おう」
ジャンとパンプはそれぞれの教室に向かう

 ジャンが1-Aに入ると教室はいつもより騒がしかった。

「アドロンさん!保健室に行った方が良いですよ」
ウリエラが大きな声でアドロンに言う。
「いいよ!こんぐらいほっといてくれ...ご、ごめんなさいウリエラさん心配しているっていうのに」
アドロンの顔や腕には傷が沢山あった。しかし、血は一滴も流れていなかった。

「わぁ大変だアドロン、今パンプを呼んでくるよ」
「いや、別に..」
アドロンはジャンを止めようとしたがジャンは既にパンプの呼びに行ってしまった。

 ジャンはパンプと一緒にツイスターとスカルドを連れてきた。
「よーし、ヒーリングジュエル!」
パンプはアドロンの傷を治す。
「けっ、余計なことを」
アドロンはそっぽを向く

「アドロンさん、ちゃんとお礼を言わなきゃダメですよ」
ツイスターがアドロンに注意する

「ご、ごめんない、ほらお兄ちゃんも...ロアが言うなら...あ、ありがとよ」
アドロンは急に態度を変え、ジャンに礼を言う。
「あのアドロンさん、以前も言っていたとは誰なんですか?あなたのそのしゃべり方にも関係があるのですか?」
ウリエラがグイグイ聞く

「アドロンもう言ってもいいんじゃねーか」
スカルドがアドロンを説得する
「まぁいいか、みんなとは仲良くなってきたし隠す必要もないか、みんなの精霊達にも聞かせてやるよ」
教室に1-Aと1-Asの生徒達が先生を含め集まり、アドロンは語り出す。


 今から10年前、ロンとロアという双子の兄妹が居た。二人はとても仲が良く、いつも外で遊んでいました。

 いつも通り二人は公園でおままごとをしていました。

「はい、お茶ですよ」
「うわぁーすっごく美味しい!」
「はい、ドロシーにも」
ロアには大切にしている人形があった。それがドロシーである。

 しかし、おままごとをいつも途中で終わってしまいます。なぜなら

「おいお前、男のくせにおままごとなんて気持ち悪いな」
ロン達は小学生のいじめっ子3人組にいつもいじめられているのです。

「痛いよ、やめて、助けてお兄ちゃん!」
ロアは泣きながらロンに助けを求めます。
しかし、ロンは手も足もでずロアと一緒にボコボコにされてしまいました。

 夕方になり、ボロボロになった二人は家に帰らなくてはいけません。だけど、二人は家に居ることが大嫌い。理由はいつもお父さんに殴られるからです。お母さんが見ていない所で二人は虐待を受けているのです。

 二人は家に帰ると突然、パンッとクラッカー🎉の音がしました。
「お誕生日おめでとう、二人とも❗️」
お母さんが二人を笑顔で迎えてくれた。

「私達、今日から6歳になるの?」
ロアが聞くとお母さんは優しく答えた
「ええ、そうよあなた達は6歳になったのよ来年からはいよいよ小学生よ、さぁケーキを作ったから、ちゃちゃっとお風呂に入ってきなさい」

 ロアはドロシーを母に預けてロンと一緒に風呂へ向かった。
しかし、風呂には既に父が入っていた。二人は最初は戸惑ったが母を待たせる訳にはいかないので勇気を出して風呂に入る。

「チッ、なんだテメーらか」
父は不機嫌そうに二人を迎えたが二人のボロボロの体を見てニヤリとする。

「おお、怪我をしているじゃないか洗ってやるよ」
父は二人の傷口をゴシゴシと乱暴に洗った。

「あ"あ"ぁ!イ”ダイ“」
「やめてよ!お父さん!」
ロアが父の手をパシッと叩く

「ガキの癖に生意気だな❗️クソ‼️」
父は二人の頭を思い切り殴る。

 母は風呂場から大きな音がするのを聞き、駆けつける。
「ちょっとあなた、何してるの❗️」
母は父に対して激怒をし、ロンとロアをすぐに風呂から上がらせ、傷の手当てを始めた。

「ごめんなさい、二人とも私が気づいてあげられなくて」
母は泣きながら二人に謝る。

 次の瞬間、二人に血が降り注いだ。父が母を殺した。母は血まみれになってそこに倒れ込む。

「俺に逆らうからいけないんだ...」
完全に狂っているその男は包丁で何度も母を刺す。

「ロア...逃げよう!」
「お、お母..さん」
ロアの体は震えていた。ロンはロアの手を引っ張り家から逃げる。

「おい、どこに行った❗️ガキ共❗️」
男は実の子である、ロンとロアを殺そうと探し始める。

「ロア泣くな、逃げるぞ」
ロンは泣きそうな声でロアの手を強く握る。
「お母さん、嫌だ、ドロシーも助けなきゃ」
ロアがその場にしゃがみ込み泣き続ける。

「分かった、お兄ちゃんがドロシーを取りに行ってあげるからロアは此処で待ってろ」
ロンは優しくロアを説得するがロアは泣き止まない
「一人は嫌だ、私も連れてって」
「分かったよ、でも危なくなったらすぐ逃げるよ」
「うん」
ロアは泣き止んだ。

 二人はもう一度、家に戻りドロシーを救出した
「良し、すぐに逃げるぞ」
「うん」
ロアはドロシーを抱きしめながらロンと一緒に走って家を出ようとすると

「みぃつけた❗️」


 ロンとロアは無惨に殺された。バラバラだった。玄関は血まみれになっていた。二人にとっての人生はここで終わった。二人の誕生日だというのに、確かに二人は死んだはずだった。

 漂う二人の魂が深い兄妹愛と強い怨みによって混ざり合い、ドロシーに宿った。





「...そして、俺ことロンと妹のロア、人形のドロシーを混ぜてアドロンになったのさ、人形だからもう血を流すこともない、それが俺らだ」
アドロンの話はこれで終わりだ。

 話を聞いていた者達は何も言えなかった。
ただ健気に生きようとしていた純粋な兄妹の悲劇に涙を流すことしか出来なかった。

「ごめんなさい、お兄ちゃん私のせいで...」
アドロンは左目から涙を流す。
「ごめんなロア、嫌な事を思い出させちゃって」
ツイスターとスカルドがアドロンの頭を撫でる。

「あのアドロンさん、困ったことがあったらいつでも私達に頼っていいんですよ」
ウリエラが言う
「そうだぜ、俺らは友達なんだからさ、二人だけで背負い込むなよ」
ザルが続けるとみんなは笑顔でアドロンを見つめる

「皆さんありがとうございます、これからも兄と私のことをどうぞよろしくお願いします。先生、授業の時間を使ってしまってすみません」
アドロンはケンナリ先生とウィリム先生に向かって、頭を深く下げる。

「アドロンさん、辛い話だと言うのに頑張ってよく言えましたね」
ケンナリ先生はしんみりしながらそう言う

「我々、精霊も貴重なお話を聞けたので構いませんよ」
ウィリム先生は笑顔でそう言う


そして、放課後

「それではアドロンさんお気をつけて」
帰り道でウリエラ達と別れるアドロンとツイスター、スカルド。

「なぁアドロンあの後の話はしなくても良かったのか」
スカルドが訊ねる
「うん、あの続きを話したら流石にみんな私達の前からいなくなっちゃうよ」
アドロンは悲しそうに言う
「コラ、スカルド知らぬが仏ですよ」
ツイスターがスカルドに説教する。
「ごめん、姉ちゃん」
「良いよ、二人ともこれは俺らだけの秘密だぞ」




「ひっ!に、人形が動き出した❗️」
男は突然動き出した人形に腰が抜ける
「死ねっ‼️」 
玄関はさらに血で染まった。








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