僕と精霊〜A journey of heroes〜

一般人

文字の大きさ
上 下
146 / 150
旅の終わり編

思い出の結晶

しおりを挟む
「もう8年前か...」
ラートは首飾りを握って公園の中に入る

 ラートはベンチの雪を払い落として座ってみる
「はぁ...変わんないなこの公園もあの時と一緒だ」

 意外と静かなもんだな、平日の午前中なんてそんなもんか、みんな学校に行って、授業を受けて友達とくだらない事をやって、俺自身もそうだ。そのはずなのだが、俺は今何故か此処に居る。

「ねぇ1人なの?私と遊んでくれる」
ラートの前には小学生ぐらいの女の子が立っていた
「お嬢ちゃんも1人?」

「うん!でもね友達を待ってるの!」
休校日なのだろうか女の子は誰かを待っているようだ
「そうか、じゃあ友達が来るまでお兄ちゃんが遊んであげるよ」
女の子はラートの手を引っ張って広い方へ行く

「じゃあね一緒に雪だるま作ろ!」
女の子は素手で一生懸命雪玉を転がし始める
「つめてっ」
ラートは雪を触って手を引く

「あははお兄ちゃん変なの、雪は冷たいんだよ」
ラートは女の子に笑われる
「そ、そうだね、お兄ちゃんなんか雪が久しぶりな感じがして...」

「変なのいつも触ってるのに」
女の子は雪玉を転がし続ける
「?」
ラートは一瞬だけ何か違和感を感じたが負けじと雪玉を転がし始める

「お嬢ちゃんのお友達はいつ頃になったら来るんだい?」
ラートの雪玉は女の子のよりも大きくなっていく
「分からない、ずっと待ってるんだけど来てくれないんだ」
女の子はラートの雪玉に自分の雪玉を乗せる

「え?それってちゃんと約束はしたのかい?」
「うん!ちゃんとしたよ、嘘ついたら針千本飲ませるぞって」
女の子は小指を出しながら言う

「えっとね、友達の名前はラート君って言うの」
女の子の言葉がラートの頭の中をぐちゃぐちゃにする
「それは酷い友達だね...」

「ううん!きっと何か理由があるんだよ、ラーちゃんは今まで約束破った事無いもん、それにね!初めて私にできた友達なの!」
女の子の嬉しそうな顔を見てラートは確信と共に膝から崩れ落ちる

「ごめんねシャーナ...」
ラートは涙を流しながら首飾りを差し出す
「このネックレス...そっか私、ラーちゃんにプレゼントして死んだんだった...」
女の子の足が少しずつ透けてきた

「ごめん、ずっと俺の事を此処で待っててくれたんだね」
ラートはシャーナの小さな肩を掴む
「でもラーちゃん来てくれた、約束守ってくれたんだね」
シャーナがニッコリ笑うのを見てラートは罪悪感に蝕まれる

「でも俺のせいでシャーナは...」
「私嬉しかったな、そのネックレスをずっと大事に持っててくれたなんて、私ラーちゃんが大好き!」
シャーナはラートの頬にキスをする

「俺も大好きだよ、だからプレゼント...俺にとってとっても大切な宝物...」
ラートは首飾りをシャーナの首にかける
「ありがと、私生まれ変わったらラーちゃんのお嫁さんになるね」
シャーナはそう言いながら首飾りと一緒に消え去る

 そっか..今まで待っててくれたんだね。お盆でも会えなかったから嫌われたと思ってたけど、俺はなんて鈍感で馬鹿なヤツなんだ...

 ラートはベンチに再び座ってしばらく真っ白な空を見続けた














しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...