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英雄誕生伝編

第44話 パンプの悩み

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【龍神町】

 休日だが今日も朝からパンプは、サラに修行をしてもらっている。
「ハァハァ、これでどうだ!」
泥まみれのパンプはサラに笑顔で聞く。
「良いねぇ!私もここまでやってくれる弟子ができるなんて思わなかったよ。はっきり言ってセバスよりも素質があるよ」


「ぶぇっくしゅん!」
「あらセバスさん、風邪?」
「いえ、大丈夫です」
「そう?」
アミィはセバスを少し心配していると呼び鈴が鳴った。
 
「はーい、今行きまーす」
アミィは玄関は向かい、ドアを開ける。

「あらどうも」
家に来たのは学園長だった。
「すみません、朝早くに」
学園長はお辞儀をする。

「良いんですよ。お茶を準備するので上がってくださいな、セバスさーん!」
「はい!アミィ様!」
「では、お言葉に甘えて」
アミィは学園長を客間まで案内する。

「粗茶ですが」
セバスはお茶をテーブルに置く。
「すまないねぇ」
学園長はお茶を飲む。

「学園長が来るなんて珍しいですね。どのようなご用事でこんな所までいらしたんですか?」
アミィは椅子に座り尋ねる。

「パンプ君に伝えなければならない事がありましてね。アミィさんにも」
学園長は湯呑みを置く。

「パンプちゃんが!?まさか授業態度に問題でも!?」
「いえいえ、パンプ君は元気に授業を受けていますよ」
学園長はアミィを落ち着かせる。

「そ、そうですか。ではパンプちゃんを呼んで参りますね」
アミィは修行中のパンプを呼び出した。

 泥だらけのパンプは客間に入る。
「あっ!学園長だ!」
「こらパンプちゃん..申し訳ございません、こんなに汚れた姿で」
アミィは頭を下げる。

「大丈夫ですよ、それでは本題に入りましょう」
学園長は真剣な顔になる。
「ジャン君は明日帰ってくるという事です」
学園長の言葉にアミィとパンプは驚く,

「何!?」
セバスはドアの隙間から学園長の話を盗み聞きしている。
「セバス!どうした!」
サラはセバスの背中を叩く
「サ、サラ様!」
セバスは驚いた勢いでドアを突き破ってしまう。
「ありゃりゃ...」
サラは手を顔に当てて首を振る。

「コラ!セバスさん、盗み聞きなんてお行儀が悪いですよ!」
「も、申し訳ございません!」
セバスは土下座する。

「まぁまぁそれにしてもセバス君にサラ君久しぶりですね」
「学園長もお元気そうで」
セバスはお辞儀する
「げっ!客人って学園長の爺さんかよ!まだ生きてたのかよ!」
サラは少し引く。

「お姉ちゃん!」
アミィは恥ずかしそうに怒鳴る。
「ほほほ、相変わらず元気そうだね。ちょうど良いので皆に聞いてもらいたい」

 そう言い、学園長はパンプ達に幼少期、150年前にジャンとユウスケに出会った事自分が2人に助けられた事を話す。

「あの、それとジャンが帰ってくるのが関係あるのでしょうか?それにユウスケさんも生きているという事なのですか?」
アミィは食いつくよう質問をする。

「確かにあの時、ジャン君は魔銃マガンを持っていましたし、パンプ君のお話をしていました。そして、あの時ジャン君達が元の世界に帰ったのが丁度150年前の明日になるのです」
パンプは嬉しそうな顔をする。

 学園長がそう言うとサラ頭にハテナを浮かべて質問をする。
「でもよ、いくら150年前の明日にジャンが帰ったとしても現代の明日に帰ってくるとは限らないじゃないか?それに昔に戻ったり未来に行ったりなんて出来るのか?」

「それについての説明もある。龍神の話によると最低でも2回は150年前と現代の時空の歪みが発生しているようでな。時間の流れが固定されてしまったようでな」
学園長の説明を理解している者は居なかった。

「難しい...師匠は分かるのか?」
「え?あ、あー...もちろんだ!」
「サラ様嘘は」
「嘘じゃねぇよ!」
サラはセバスの口を握り潰す。

「とりあえず、大丈夫だと言う事で理解してもらいたい。そこでパンプ君の協力が必要で今日は来た訳です」
「え、オレに何かできるのか!」
パンプは今にも破裂しそうなくらいワクワクする。

「なぁ!オレは何をすれば良いんだ?」
パンプは学園長の肩に乗る。
「コラパンプちゃん、学園長さんの服が汚れちゃうでしょ」
アミィはパンプを学園長から引き離す。

「気にするな。パンプ君には精霊石を最大限利用してもらいたい」
「精霊石を最大限使う?」
パンプは自分の精霊石を見て言う。

「そう、記憶が正しければ空に150年前と現在を結ぶ穴が生まれる。パンプ君はジャン君を全力で精霊石越しに呼んで欲しい」
「分かったぞ!」
学園長は立ち上がる。

「それでは要件を伝えたので今日は帰らせていただきます」
学園長はそう言い、お辞儀する。
「いえいえ、こちらこそこれからもうちの息子達をよろしくお願いします」
アミィもお辞儀をし、学園長を見送る

「やったな!アミィ!ジャンが帰って来るぞ!」
「ええ、それにユウスケさんも生きているかもしれないって」
アミィとパンプは喜びながら抱き合う。

「明日は我々もサポートしますよ」
セバスはパンプに言う。
「え、私も?」
サラはとぼける。

「当たり前です!貴方はパンプさんの師匠なんですから」
「パンプちゃんに嫉妬してる、セバス?」
「揶揄わないでください!」
「わーってるって行くよ。冗談冗談」
笑うサラを見てセバスは手を顔に当てる。

「ジャンに会える!ジャンに会える!」
パンプは夜になるまでずっと喜んでいた、風呂に入っている時もご飯を食べている時もずっと喜んでいた。しかし、ふとある事に気付き不安にもなった。

「ゔわーん!あ"あ"ーん!」
夜遅い時間にパンプは泣き始めた。

「どうしたの!パンプちゃん!」
急にパンプの泣き声がしたのでアミィ達は慌てて部屋に駆け込んだ。

「オ"レ"、バガだ!」
パンプは泣き続ける。
「ほらほら、泣かないの、どうした?私に言ってごらん」
アミィは赤子をあやすように泣きじゃくるパンプを抱き抱える。

「オ"レ、オレ"、ジャンがいない間も楽じんじゃっだよ」
「良いじゃないの」
アミィはパンプに優しく言う。

「良ぐない!だっで!ジャンがいなくても楽しんじゃったら、ジャンが要らなくなっちゃう!オレやだよ!ジャンに帰ってきて欲しいのに!」
パンプは蹲って泣き続ける。

「おバカね、ジャンが帰ってきたら今よりも楽しくなるに決まってるじゃないの」
アミィはパンプを撫でながら言う。
「そうなのか?」

「そうよ、パンプちゃんは優しいから少し悩んじゃったんだね」
「だって...」
「大丈夫、大丈夫。ねぇみんな」

「ジャンが帰ってきたら久しぶりに私の弟子にしようかな。ジャンと一緒に修行が出来るなんて楽しみだろ?」
「うん..」
パンプは涙を拭う。

「そうですよ、ジャン様が帰ってきたら、またこの家が賑やかになるんですよ」
セバスもパンプを励ます。

「本当?」
「ええ、本当よ。だからパンプちゃんはなんにも心配しなくて良いの」
アミィはさらにパンプを撫でる。

「そうか...なら安し...ん...」
「あら、寝ちゃったわ」
アミィはパンプをベッドに寝かせて、ほっぺにキスをする。

「さぁ私達も寝ましょうか」
アミィ達は部屋の明かりを消し、寝る準備をする。

「パンプちゃんも意外な理由で悩むんだね」
サラは歯を磨きながら言う。
「パンプちゃんはまだ赤ちゃんだから仕方ないわ。最近色々あったし」

「それにしても、まだ20才だと言うのにたくましいですね」
「アンタは気弱だったからね~」
サラはセバスを揶揄う。
「ほっといてくださいよ!」

「うふふ、懐かしいわね」
3人は笑い合う。

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