上 下
82 / 131
英雄誕生伝編

番外編8 仲直り

しおりを挟む
 ジャンが居なくなってから1週間程経った。そんな中、初めて迎えた休日の出来事。

【早朝 白夜家】

「ふわぁ....よく寝た、おはようローズ...あれ?ローズ?あら?」
いつもより少しゆったりとした目覚め、新鮮な空気と共に新たな朝を迎える。でもローズがいなかった。


【バーン家】

「パンプちゃん起きれる?」
「んー..もう少しだけ...」
1階からのアミィの声でパンプは目を覚ましたが布団に包まる。

「ローズちゃんが遊びに来てるわよ、パンプちゃんの事起こしてきて良いわよ」
「お邪魔します」
「ローズ?」
部屋にローズがやって来た。

「パンプ...その遊びに行くわよ」
「今遊ぶ気分じゃない」
「良いから行くわよ!」
「うわっ!」
パンプはローズに手を引かれ、無理矢理寝癖を治され、家を飛び出た。
「いってらっしゃい」


 それからローズはパンプをファミレスに連れて行った。
「ここ何?」
「ファミレス、人間が食事をする場所よ。私もこの前初めて来たけど色々料理があるのよ、ほらコレ」
ローズはパンプに色んな料理の絵が書いてあるメニュー表を渡す。

「オレ今腹減ってない!シャクヨクが無いもんシャクヨクが!」
「アンタ、それを言うなら食欲。強がり言ってもお腹が鳴ってるし」

「うぅ...そんな事は..」
「ヨダレもだらだら」
「ぐぐぐ...」

「お金は私が払うから好きなの食べても良いわよ」
「うぅ...」
「さぁさぁ!」
「文字が読めるけど意味が分からない...コレなんだ?お、おむらいす?」

「ああオムライスね。アンタなら好きよコレ、赤い米を卵焼きで包んでるの」
「卵焼き!それが良い!」
「はいはい...私はっと....」
2人は注文をし、しばらく沈黙、そして料理が運ばれてきた。

「うわぁ...コレがおむらいす」
「どう?美味しそうでしょ」
「うぅ..ふんっ!アミィの卵焼きの方が....っ!」
疑心を抱きながらも一口、パンプの口の中に新鮮な味が広がる。

「良いじゃない、どっちが美味しくたって..ふふ、がっついちゃって」
初めてのオムライスをパンプは黙々と食べ、すぐに完食してしまう。

「満足そうね」
「ふふ~ん...はっ!全然!」
「ほっぺにケチャップ付いてるわよ」
「本当か?ありがと...っ!ありがとじゃない」
明らかに不機嫌だが不機嫌になりきれないパンプの様子にローズは笑ってしまった。

「あー!笑うな」
「ごめんごめん」
「なんか今日のローズ変」
「そう?」
「変だ!」
パンプはローズにそっぽを向いてしまう。

「何処が変なの?」
「なんかいつもより優しい...どうすれば良いのか分からない」
「それはお互い様よ」

「どういう事だ?」
「アンタも変」
「嘘だ!変じゃない」
「変よ、暗いし」
「それは...」
パンプは精一杯、声を出そうとしたが上手く言葉がまとまらない

「分かってる。私達の事は嫌いになっても良い、でもアンタが暗いのは見てられないのよ」
「...ぶぅ」
「アンタみたいな赤ん坊にこんな思いさせたくなかった、ジャンを探すなら私も協力させて」

「...分かった、ごめん」
「え?」
「オレ、ジャンが居ないのに笑うみんなが嫌だった..だからヤなヤツになってた。だからオレが悪かった」
「そう、私もごめん」

「ご注文のスペシャルパフェでーす」
しんみりとした2人の空間に店員が最後のデザートをテーブルに置いた。

「コレなんだ?良い匂いだ」
「パフェよパフェ、美味しんだから。ほらアーン」
ローズはスプーンで掬ったパフェをパンプの口へ運ぶ。

「っ!...ほわぁ...」
「どう美味しいでしょ」
「おう!美味いぞコレ!」
「ほらほらもっと食べて食べて」
甘いクリームにアイス、イチゴにジャム様々な甘味がパンプに新鮮な刺激を与える。

「うぅ...うみぁいじょこれぇ」
「あれ?パンプ?ちょっと、おーい」
「ろーずがいっぱい」
先程までパフェを頬張っていたパンプの顔が真っ赤に湧き上がり、フラフラと倒れてしまった。


【バーン家】

 倒れたパンプをソファに寝かせた。
「あらら、間違ってイチゴを食べちゃったのね」
「イチゴ、ダメだったんですか?」

「そうよ。パンプちゃん達カーバンクルはね、イチゴを食べるとすっごく酔っ払っちゃうの」
「...ごめんなさい..私が」
ローズは涙を流して膝から崩れ落ちる。

「泣かないの、知ってる人も少ないからしょうがないわよ。それよりパンプちゃんの事、元気にしてくれようとしたのね」
「で、でも...」

「ろーず、これなんら~?」
「ふふ、夢を見てるみたいね。ローズちゃんの名前呼んでるわよ」
「うう..お邪魔しました!」
嬉しさ半分悔しさ半分、ローズは家から飛び出してしまった。

「パンプちゃんも良い友達が出来たわね」
「もぅたべりゃない...」


【夜 白夜家 スフールの部屋】

 2人は寝る前に少し話をしていた。
「ローズ、今日はパンプさんと遊んでたのね」
「なっ!なんでそれを」
「精霊石からダダ漏れ」
「あ..」

「言ってくれれば私も行ったのに」
「ダメよ、アイツの事は私だけで」
「どうして?」

「だ、だって...」
「好きなの?」
「違うわ!...ただアイツを見てると死んだ弟を思い出すのよ。アイツみたいにいつもヘラヘラしてて、なんだが周りも明るくしてくれる感じが..でも私...」
昔の事を思い出し、ローズは白夜に飛びつく。

「何、どうしたの?」
「私、ちゃんとアイツを励ませたかな?」
「泣かないの大丈夫だから」
「本当?」
「うん、大丈夫だから安心して」
白夜はローズの頭を撫でて慰める。

 いつもはパンプを赤子扱いをしているローズだが、彼女もまだまだ子供だ。不器用なりにも2人は仲直りが出来たのだろう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと59隻!(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。  ●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...