上 下
40 / 131
暗躍する狂気編 

番外編3 Bad Birthday

しおりを挟む
 今から10年前、ロンとロアという双子の兄妹が居た。兄のロンと妹のロアはとても仲が良くいつも公園で遊んでいました。

 この日は2人の誕生日。いつも通り2人は公園でおままごとをしていました。

「はい、お茶ですよ」
「うわぁーすっごく美味しい!」
「ドロシーにも」
ロアには大切にしている人形があります。それがドロシーです。

 しかし、おままごとはいつも途中で終わってしまいます。なぜなら
「おいお前、男のくせにおままごとなんて気持ち悪いな」
「こっちは気持ち悪い人形、お似合いだな」
ロン達は小学生のいじめっ子3人組にいじめられているのです。

「痛いよ!やめて!助けてお兄ちゃん!」
「ロアをいじめるな!」
ロアは泣きながら兄に助けを求めます。しかし、ロンは手も足もでず、妹と一緒に殴る蹴るの暴行をくわえられてしまいました。

 日も暮れ、ボロボロになった2人は家に帰らなくてはいけません。だけど、2人は家に居ることが大嫌い。いつもお父さんに殴られるからです。お母さんが見ていない所で2人は虐待を受けているのです。

 2人が家に帰ると突然、パンッと何かの破裂音がしました。
「お誕生日おめでとう、2人とも!」
母が2人をクラッカーの祝砲で迎えてくれました。

「ロア達、今日から6歳になるの?」
「そうよあなた達は6歳になったの。来年からはいよいよ小学生、さぁケーキ作ったからパパとお風呂に入ってきなさい。ドロシーはお母さんが持っててあげる」 
「う、うん..」
ロアの問いに母は優しく答えてくれました。

 ロアはドロシーを母に預けて兄と一緒に風呂へ向かった。しかし、風呂には既に父が入っていたのです。2人は最初は戸惑いましたが母を待たせる訳にはいかないので勇気を出して風呂に入る事にしました。

「チッ、なんだテメーらか」
父は不機嫌そうに2人を迎えたが2人のボロボロの体を見て何か不穏な事を思いつく。
「おお、怪我をしているじゃないか洗ってやるよ」
父は2人の傷口をゴシゴシと乱暴に洗った。

「あ"あ"ぁ!イ”ダイ“」
「やめてよ!パパ!いたい!!」
痛みに耐えきれずにロアが父の手を叩いてしまいました。

「てっ!生意気だな!クソ!」
父は2人の頭に拳を振り下ろしました。

 母は風呂場から大きな音がするのを聞きつけてやって来ました。
「ちょっとあなた、何してるの!まさかまた子供達に!」
母は父に対して激怒をし、ロンとロアをすぐに風呂から上がらせ傷の手当てを始めました。

「ごめんなさい、2人とも私が気づいてあげられなくて」
母は泣きながら謝っていましたが2人にはよく分かりませんでした。

 次の瞬間、2人の顔に血がべっとりと垂れてきました。父が包丁で母を殺してしまったのです。母は血まみれになって倒れ込んでしまいました。

「俺に逆らうからいけないんだ...」
完全に狂っているその男は包丁で何度も何度も母を刺し続けた。

「ロア...逃げよう!」
「ママ..!ママ!」
「ロア!」
ロンは震える妹の手を引きながら家を飛び出す。

「おい、どこに行った!ガキ共!」
男は実の子である、ロンとロアを殺そうと家具を蹴り飛ばしながら探し始めた。

「ロア泣くな、逃げるぞ」
ロンは泣きそうな声で妹の手を強く握る。
「ママ..いやっ!ドロシーも助けなきゃ」
しかし、ロアがその場にしゃがみ込んで泣き続ける。

「お兄ちゃんがドロシーを取りに行ってあげるから、ロアはここで待ってろ。良い子だから」
ロンは優しく妹を説得するがなかなか泣き止んでくれない。
「1人はイヤ!ロアも連れてって」
「危なくなったらすぐ逃げるんだぞ」
「うん」
ロアは涙を拭いて兄の手を掴む。

 2人は再び家に戻り、母の亡骸からドロシー人形を救出する事ができた。
「すぐに逃げるぞ」
「うん!」
ロアはドロシーを抱きしめながら兄と一緒に走って、家を出ようとしたがダメだった。
「みぃつけた!」

 ロンとロアは無惨に殺された。バラバラだった。玄関は血まみれになり、2人の人生はここで終わった。2人の誕生日だというのに...確かに2人は死んだはずだった。

 神の悪戯なのか、漂う2人の魂が深い兄妹愛と強い怨みによって混ざり合い、ドロシー人形に宿ったのだ。






「ひっ!ば、バケモノ!?」
男は突然動き出した人形に腰を抜かす。
「...っ!」
「は、離せ!ま、待っ!」 
玄関はさらに血で染まった。


 ジーナス家、一夜にして家族全員が死亡したと一時期話題となったこの家庭。中には殺人鬼を見たという者もいた。殺人鬼の特徴は子供ぐらいの背丈だったとか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis
ファンタジー
【注意!!】 途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。 内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。 ※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。 ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。 生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。 色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。 そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。 騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。 魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。 ※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。 小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。

ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ
ファンタジー
ドラゴンに襲われてOLに転生してしまったおっさん魔術師リアムと、電車に撥ねられそうになって魔術師に転生してしまったサツキの転生TSラブコメ 呪文がやたらといっぱい出てくるので、冒頭に呪文集を置いておきます。 なろう/カクヨムで完結済です。(全728話・約90万字。なろうで33万PVとなりました)

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

主人公に殺されないと世界が救われない系の悪役に転生したので、気兼ねなくクズムーブをしていたのに…何故か周りの人達が俺を必死に守ろうとしてくる

あまonた
ファンタジー
 岸山鳴海は、前世で有名だった乙女ゲームに登場する悪役――シセル・ユーナスに転生してしまっていた。  原作主人公に殺されて世界が救われるというストーリーだけは知っている。  シセルには、寿命で死んだり、主人公以外の誰かに殺されてしまうと、その力が暴発して星ごと破壊されるというトンデモ設定があった。  死ななければならない……そう理解した鳴海は『流石の主人公も普通に生活しているだけの人間を殺そうだなんて思わないだろう』などという考えから、自身が思い付く限りの悪事を行う事で、自分の命と引き換えに世界を救おうとする。  しかし、クズムーブをしているはずの鳴海の周りには何故か……この男を未来の脅威から守ろうと必死になる者達ばかりが集まっていたッ!

処理中です...