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暗躍する狂気編
第10話 科学の影
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魔獣の襲撃から約2週間が経った。龍神学園の2年生のほとんどが行方不明になり、1週間休校になった。結局、2年生達は見つかることなくいつも通りの日々が帰ってきた。そんなある日、悲劇が起きた。僕にとっては忘れられない1日だった。
「「行ってきます」」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ」
僕達はいつも通り学園へ向かった。
ジャンとパンプが出会ってから何やかんやで2週間が経った。魔獣の襲撃があった日から凶暴化した魔獣が増え、その度に2人は戦い、絆を深めた。
「よしジャン!学園まで競争だ」
「今日は負けないよ」
これも僕達にとっては日課になった。おかげで僕も少しずつ体力がついてきた。
「あら、ごきげんようお二人さん」
「おはよう、白夜さん」
白夜さんが僕達に挨拶をし、僕らも挨拶を返して走り去る。これも日課だ。
「もうアイツらガキなんだから」
「いいじゃない元気で、なんか良いよね」
「それじゃあ私達も競争する?」
「もーそういう事じゃないのに」
白夜はローズを抱えながら歩く。
「ハァハァ..よーし、今日は僕の勝ちだね」
校門の前でジャンは軽く拳を握りしめる。
「くそー負けたー!」
パンプは足をパタパタさせながら悔しがる。
「おう、またやってるねぇ」
ザルがカバンをジャンの頭に置く。
「ザル君、おはよう」
「今日はどっちが勝ったんだ?」
ラートがジャン背中をポンと叩く。
「ラート君もおはよう、今日は僕が勝ったよ。あれ、レート君は?」
「ああ、レートなら先に行ったぞ」
「そっか」
ジャン達は1-Aへ、パンプ達ら精霊は1-Asへ
「パンプ、真面目に授業を受けるんだよ」
「わかってるよ」
「いつも寝てるか遊んでるかだろ」
「ウケケ」
ジャン達が教室に着くとウリエラ達が会話で盛り上がっていた。
「おはよう、どうしたのみんな?」
「あ、ジャンさんおはようございます」
ウリエラは丁寧に人数分の挨拶をすると新聞を取り出した。
「この前の新聞に載っていた精霊の奇跡について話していたんですよ」
「あ、ああ..そういえば最近一面に乗ってるね...」
「あのニュースの続きが今日の新聞に載ってましてね、精霊の特徴が描かれていたんですよ!」
レートは新聞に掲載されていた絵をジャンに見せる。
「!?」
ほぼパンプじゃないか!
「やっぱりこれ、パンプさんなんですか?そうでしょジャンさん」
ウリエラがジャンにグイグイ質問をする
「い、いや..それは...」
まずいなぁ..このことはパンプの為にもあまり口外するなってセバスに言われてるしなぁ。まぁもうザル君やレート君にはバレてるし、いいかな..思い切って話すか。
「そうだよパンプの力で町を元に戻したんだよ。でもあんまり人には言わないでね」
ジャンが話し終えるとウリエラ達はさらに盛り上がる。
「やっぱりそうだったんですね私感激しました!」
ウリエラが目を輝かせながジャンの手を掴みブンブン振りまわす。
「あ、ありがとうウリエラさん、パンプにも伝えておくよ」
「よーしみんな席に着け~」
ケンナリ先生が声をかけると皆席に着き、HRが始まった
「ジャン君、学園長がお呼びなのでHRが終わったら精霊の間までパンプ君と一緒に行ってくれ」
「はい」
「それじゃ今日も真面目に授業を受けてくれ、以上」
そう言うと先生は急ぎ足で教室を出る。
「ジャンく~ん、学園長直々に呼び出しなんて、何かやらかしたのか?」
ザルがジャンを冷やかす。
「なんも心当たりがない..何かやらかしたか..?」
なんか変な汗が出てきた。とりあえずパンプを迎えに行かなきゃ。
「パンプ、学園長の所に行くよ」
「うん!それじゃあウィリム先生行ってくるぞ」
「はい、無礼には気をつけるのですよパンプさん」
パンプはウィリムに手を振り教室を去る。
ジャン達が精霊の間に行くと学園長に龍神、ケンナリがいた。
「失礼します!」
「おぉ来たかまぁそこの椅子に座ってくれ、ジャン君」
「はい」
ジャンは学園長に指示に従い着席し、肩にパンプを乗せる。
「君とパンプ君の活躍はモニー君から聞いているよ、町のためによくやってくれた」
「スゴイだろ!」
「パンプ君、礼節を」
「すみません」
ケンナリがパンプに注意し、ジャンが頭を下げる。
「ホホッパンプ君は元気で良いな」
学園長は微笑みながらパンプの頭を撫でる。
「それでだな、今回はお主達にお礼を言いたかったのと少し悪い知らせがあってな」
「悪い知らせとは何ですか?」
学園長は真剣な顔になって話す。
「休校中に魔獣の襲撃について調査をしておったんだが、どうやら今回の件に科学軍が絡んでいるようなんだよ」
学園長の衝撃の発言にジャンは言葉が出ない。
「だか、まだ決定的な証拠を掴めていない。そして更に問題があってな」
「問題?」
学園長は話しを続ける。
「来週は科学軍の代表生徒達とこの学園で一緒に授業をすることになっている」
「ガクエンチョー、何でそんな奴らと一緒に授業をするんだ?やっつければいいじゃん」
パンプが不思議そうな顔をしながら答える。
「今、科学軍に勘づかれるのは少しマズいからな」
「何故このことを僕達に伝えたのですか?」
ジャンは学園長に聞く。
「それは、科学軍の代表生徒の中に君の親戚がいるらしいのでな。確か君の従兄弟の」
「っ!?まさか、シュン兄が!?」
「シュンニイ?誰?」
「僕の従兄弟、あとで説明するよ」
「分かった」
「君は生まれも珍しいハーフだ。これまで多くの差別を受けたと重々承知している。都合の良い事を言っているようで申し訳ないが魔法軍と科学軍を繋ぐ架け橋になってもらいたい。それを頼む為に呼ばせてもらった」
「そういうことですか、できるだけの事は尽くします」
「ありがとう、それでは教室に戻って良いぞ」
「はい、失礼しました」
「バイバ..えっと、失礼しました」
僕達は教室へ戻り、授業を受けた。でも、あまり集中出来なかった。科学軍のこと、シュン兄さんのこと、自分が架け橋という重要な役割になった事、まだ頭の整理が追いつかない。
そして、放課後ジャン達はいつも通り白夜達と家に帰っていた。
「ジャンさん、教室に戻ってからずっとボッーとしているようですが何があったのですか?」
白夜がジャンを心配している。
「気にしないで、ちょっと考え事」
「パンプはいつも通り、授業中に遊んでウィリム先生に注意されたもんね」
ローズはあえて大きい声で言う。
「だって、体を動かさないとつまんないんだもん...ってあれ?ジャン怒らないの?」
「うん、そうだね」
ジャンはボッーとしながら適当に返事をする。
「ジャーン!」
パンプはジャンの耳元で叫ぶ。
「うわぁ、パンプか」
やっと気づいたのかジャンは驚いて尻もちをつく。
「やっぱり、ジャンさんおかしいですわ」
「そうかなぁ」
ジャンは通りかかった公園の方を眺めていると傷だらけの少年が泣いていた。
「泣いてる」
「ジャンさん?」
ジャンは少年に駆け寄ってハンカチを差し出す。
「どうしたんだい君?」
「ほっといてくれよ」
少年はジャンと手を強く払う。
「ジャン、こいつ嫌やヤツだな」
パンプは少年を威嚇する
「よせよパンプ、とりあえずこの子怪我治せる?」
「まぁジャン言うなら...」
パンプは少年に緑の宝石を打ち込んで怪我を治す。
「うわぁ、怪我が治ってる!?」
「どう、体は動く?」
少年は立ち上がって体を動かす。
「うん、ちゃんと動く、あ、あの..ありがとうございます」
少年は2人にお辞儀をする。
「良かった、ところでどうしてこんな所で泣いていたんだい?」
「な、泣いてないやい、ちょっとあれだ友達と遊んでだけだ」
ジャンの問いに少年は顔を真っ赤に強がりながら答える。
「本当かしら?あなたからは凄い憎しみを感じるわ」
「白夜さん、そんなこともわかるの?」
「ええ、呪術を使うためには人の怨念などを感知できるようにならなくてはいけませんからね。負の感情はより鋭く感じますわ」
白夜は少年の顔をまじまじと覗き込む。
「どうせ、イジメられてたんでしょ。ひょろっちぃし」
「ローズ..初対面の方に失礼ですわ」
「笑いたきゃ笑えよ」
「イジメって!凄い怪我だったじゃないか、誰にやられたんだい」
ジャンが真剣な顔になって少年に聞く。
「1つ上の学年の奴だよ、お兄さん達名前なんて言うの?」
「僕はジャン・バーン、ジャンって呼んで」
「わたくしはスフール・白夜」
「オレはパンプ」
「私はローズ」
「俺はグース・ギャング」
「グースは何でイジメられてんだ?」
パンプが聞くとグースは転がっていた石ころを蹴り飛ばす。
「理由はないよ、アイツらは中学校でも有名な不良で憂さ晴らしで俺をイジメてくるんだ、とんだ迷惑だよ。いつかアイツらはボコボコにしてやりたいぜ」
グースは地面に拳を叩きつける。
「ボコボコじゃそいつらと同じじゃないか、まぁでも抵抗をする力はつけた方がいいね」
「力をつけるってどうするんだよ!」
グースの声には力がこもっていた。
「そうだな、中学生ならこれだな」
ジャンはそう言い、指から魔法で小さい球を作り出す。
「これは?なんだ魔弾かよ」
「結構おすすめの魔法だよ。威力はあまりないけど自分を守るには十分」
ジャンは指から魔弾を飛ばし、近くにあった石ころに当てる。
「初心者魔法じゃないか。もっと凄い魔法を期待したんだけどな」
グースは少しガッカリしている。
「まぁ中学生ならこのぐらいで十分だよ。だいたい中3になるまで発射タイプの魔法は習わないだろ」
「そうだけど..」
ジャンは笑顔でグースの肩をポンと叩く
「分かったよ、やるよ。教えてくれよ」
ジャンはグースと魔弾の練習を始めた。パンプ達その光景をベンチに座りながら眺めていた。
「クソ、ダメだ!意外と難しいな」
「ドンマイ、少しずつ飛距離が伸びてきてるよ」
グースは並べた石ころにビー玉サイズの魔力の塊をデコピンで飛ばすが上手く届かない。
「もう1回お手本見せてくれよ」
「はいはい、いいかい最初はどの指でもいいから1本に魔力を集中させて、魔弾を作る」
ジャンの人差し指の先から綺麗な球体の魔力の塊が作り出される。
「そして狙いを定めて、魔弾に『ブッ飛べ!』ってイメージを込める」
魔弾は勢いよく石ころを貫く。
「うおっ!威力すごっ!」
「なーんだ簡単そうね。あの子センスないんじゃないの?」
「意外と難しいのよ。わたくしだってあんな安定した魔弾は放てません」
白夜は少し不安定だが、ローズに魔弾を披露して見せた。
「へー!白夜はセンスがないのか?」
「アンタは黙ってなさいよバーカ!」
「ぐぎゃ..言った..のローズ...ぐるじい」
白夜を侮辱され怒ったローズはパンプの首を持ち上げてブンブン振り回す。
「なんだよ、ジャンの魔力が高いだけじゃないか」
「慣れれば誰でもできるようになるよ、今やってるのができたら次はコレ」
ジャンは右手の5本指から同時に魔弾を作り出して同時に発射する。
「その次がコレ」
続けてジャンは左手から野球ボール程のサイズの魔弾を作り出す。
「よく見る魔弾だ」
「そうだね、そしてこのサイズが作れるようになったらイメージの応用だよ」
ジャンの魔弾は火球に変化した。
「ファイアボール、僕の得意な魔法だよ」
「おお!」
「他にもアクアボールに..サンダーボール、これはちょっと苦手だから威力はかなり落ちるけど。そして、ファイアボールを強化させたフレイムボール。これは10回に1回は作れる。僕は今これを練習してるよ」
ジャンは火球を水の球、電気の球に変化させて再び火球に戻す。
「魔弾が使えるようになったら色々できるようになるって事か!」
「そう!グースの魔力だとサンダーボールが良いと思うよ」
「なんかやる気出てきた!」
それからも2人の練習は続く、グースは魔弾をすぐにマスターする勢いで成長していった。そして、気づけば日が暮れていた。
「よし、最後にこの石を投げるから当ててみてよ」
「ハァ...ハァ..、よし、来い!」
ジャンが石を投げ、グースは飛んでくる石を魔弾で撃ち落とす。
「凄いよ、たった1日でここまでできるようになるなんて、才能あるよ」
ジャンが褒めるとグースは照れながら礼を言う。
「あ、ありがとよ、俺に才能があるなんて言ってくれたのはアンタだけだよ」
「もう日が暮れてしまいましたので帰りましょう、グースさんご自宅までお送りしますわ」
「おう!ありがとう!」
みんなで帰ろうとしたその時、パンプとローズの顔が青ざめ、体を震わせた。
「ジャン!ヤ、ヤバイぞ!ヤバいのが来る!!」
パンプは危険信号のように額の宝石を点滅させて慌てる。
「白夜、まずいは今までと何か違う!」
ローズの体は震えが止まらない。
「どうしたパンプ!」
「ローズ、何が来るの?」
「グォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ン!!」
新月の夜、魔獣の雄叫びが鳴り響く
「「行ってきます」」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ」
僕達はいつも通り学園へ向かった。
ジャンとパンプが出会ってから何やかんやで2週間が経った。魔獣の襲撃があった日から凶暴化した魔獣が増え、その度に2人は戦い、絆を深めた。
「よしジャン!学園まで競争だ」
「今日は負けないよ」
これも僕達にとっては日課になった。おかげで僕も少しずつ体力がついてきた。
「あら、ごきげんようお二人さん」
「おはよう、白夜さん」
白夜さんが僕達に挨拶をし、僕らも挨拶を返して走り去る。これも日課だ。
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「いいじゃない元気で、なんか良いよね」
「それじゃあ私達も競争する?」
「もーそういう事じゃないのに」
白夜はローズを抱えながら歩く。
「ハァハァ..よーし、今日は僕の勝ちだね」
校門の前でジャンは軽く拳を握りしめる。
「くそー負けたー!」
パンプは足をパタパタさせながら悔しがる。
「おう、またやってるねぇ」
ザルがカバンをジャンの頭に置く。
「ザル君、おはよう」
「今日はどっちが勝ったんだ?」
ラートがジャン背中をポンと叩く。
「ラート君もおはよう、今日は僕が勝ったよ。あれ、レート君は?」
「ああ、レートなら先に行ったぞ」
「そっか」
ジャン達は1-Aへ、パンプ達ら精霊は1-Asへ
「パンプ、真面目に授業を受けるんだよ」
「わかってるよ」
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「ウケケ」
ジャン達が教室に着くとウリエラ達が会話で盛り上がっていた。
「おはよう、どうしたのみんな?」
「あ、ジャンさんおはようございます」
ウリエラは丁寧に人数分の挨拶をすると新聞を取り出した。
「この前の新聞に載っていた精霊の奇跡について話していたんですよ」
「あ、ああ..そういえば最近一面に乗ってるね...」
「あのニュースの続きが今日の新聞に載ってましてね、精霊の特徴が描かれていたんですよ!」
レートは新聞に掲載されていた絵をジャンに見せる。
「!?」
ほぼパンプじゃないか!
「やっぱりこれ、パンプさんなんですか?そうでしょジャンさん」
ウリエラがジャンにグイグイ質問をする
「い、いや..それは...」
まずいなぁ..このことはパンプの為にもあまり口外するなってセバスに言われてるしなぁ。まぁもうザル君やレート君にはバレてるし、いいかな..思い切って話すか。
「そうだよパンプの力で町を元に戻したんだよ。でもあんまり人には言わないでね」
ジャンが話し終えるとウリエラ達はさらに盛り上がる。
「やっぱりそうだったんですね私感激しました!」
ウリエラが目を輝かせながジャンの手を掴みブンブン振りまわす。
「あ、ありがとうウリエラさん、パンプにも伝えておくよ」
「よーしみんな席に着け~」
ケンナリ先生が声をかけると皆席に着き、HRが始まった
「ジャン君、学園長がお呼びなのでHRが終わったら精霊の間までパンプ君と一緒に行ってくれ」
「はい」
「それじゃ今日も真面目に授業を受けてくれ、以上」
そう言うと先生は急ぎ足で教室を出る。
「ジャンく~ん、学園長直々に呼び出しなんて、何かやらかしたのか?」
ザルがジャンを冷やかす。
「なんも心当たりがない..何かやらかしたか..?」
なんか変な汗が出てきた。とりあえずパンプを迎えに行かなきゃ。
「パンプ、学園長の所に行くよ」
「うん!それじゃあウィリム先生行ってくるぞ」
「はい、無礼には気をつけるのですよパンプさん」
パンプはウィリムに手を振り教室を去る。
ジャン達が精霊の間に行くと学園長に龍神、ケンナリがいた。
「失礼します!」
「おぉ来たかまぁそこの椅子に座ってくれ、ジャン君」
「はい」
ジャンは学園長に指示に従い着席し、肩にパンプを乗せる。
「君とパンプ君の活躍はモニー君から聞いているよ、町のためによくやってくれた」
「スゴイだろ!」
「パンプ君、礼節を」
「すみません」
ケンナリがパンプに注意し、ジャンが頭を下げる。
「ホホッパンプ君は元気で良いな」
学園長は微笑みながらパンプの頭を撫でる。
「それでだな、今回はお主達にお礼を言いたかったのと少し悪い知らせがあってな」
「悪い知らせとは何ですか?」
学園長は真剣な顔になって話す。
「休校中に魔獣の襲撃について調査をしておったんだが、どうやら今回の件に科学軍が絡んでいるようなんだよ」
学園長の衝撃の発言にジャンは言葉が出ない。
「だか、まだ決定的な証拠を掴めていない。そして更に問題があってな」
「問題?」
学園長は話しを続ける。
「来週は科学軍の代表生徒達とこの学園で一緒に授業をすることになっている」
「ガクエンチョー、何でそんな奴らと一緒に授業をするんだ?やっつければいいじゃん」
パンプが不思議そうな顔をしながら答える。
「今、科学軍に勘づかれるのは少しマズいからな」
「何故このことを僕達に伝えたのですか?」
ジャンは学園長に聞く。
「それは、科学軍の代表生徒の中に君の親戚がいるらしいのでな。確か君の従兄弟の」
「っ!?まさか、シュン兄が!?」
「シュンニイ?誰?」
「僕の従兄弟、あとで説明するよ」
「分かった」
「君は生まれも珍しいハーフだ。これまで多くの差別を受けたと重々承知している。都合の良い事を言っているようで申し訳ないが魔法軍と科学軍を繋ぐ架け橋になってもらいたい。それを頼む為に呼ばせてもらった」
「そういうことですか、できるだけの事は尽くします」
「ありがとう、それでは教室に戻って良いぞ」
「はい、失礼しました」
「バイバ..えっと、失礼しました」
僕達は教室へ戻り、授業を受けた。でも、あまり集中出来なかった。科学軍のこと、シュン兄さんのこと、自分が架け橋という重要な役割になった事、まだ頭の整理が追いつかない。
そして、放課後ジャン達はいつも通り白夜達と家に帰っていた。
「ジャンさん、教室に戻ってからずっとボッーとしているようですが何があったのですか?」
白夜がジャンを心配している。
「気にしないで、ちょっと考え事」
「パンプはいつも通り、授業中に遊んでウィリム先生に注意されたもんね」
ローズはあえて大きい声で言う。
「だって、体を動かさないとつまんないんだもん...ってあれ?ジャン怒らないの?」
「うん、そうだね」
ジャンはボッーとしながら適当に返事をする。
「ジャーン!」
パンプはジャンの耳元で叫ぶ。
「うわぁ、パンプか」
やっと気づいたのかジャンは驚いて尻もちをつく。
「やっぱり、ジャンさんおかしいですわ」
「そうかなぁ」
ジャンは通りかかった公園の方を眺めていると傷だらけの少年が泣いていた。
「泣いてる」
「ジャンさん?」
ジャンは少年に駆け寄ってハンカチを差し出す。
「どうしたんだい君?」
「ほっといてくれよ」
少年はジャンと手を強く払う。
「ジャン、こいつ嫌やヤツだな」
パンプは少年を威嚇する
「よせよパンプ、とりあえずこの子怪我治せる?」
「まぁジャン言うなら...」
パンプは少年に緑の宝石を打ち込んで怪我を治す。
「うわぁ、怪我が治ってる!?」
「どう、体は動く?」
少年は立ち上がって体を動かす。
「うん、ちゃんと動く、あ、あの..ありがとうございます」
少年は2人にお辞儀をする。
「良かった、ところでどうしてこんな所で泣いていたんだい?」
「な、泣いてないやい、ちょっとあれだ友達と遊んでだけだ」
ジャンの問いに少年は顔を真っ赤に強がりながら答える。
「本当かしら?あなたからは凄い憎しみを感じるわ」
「白夜さん、そんなこともわかるの?」
「ええ、呪術を使うためには人の怨念などを感知できるようにならなくてはいけませんからね。負の感情はより鋭く感じますわ」
白夜は少年の顔をまじまじと覗き込む。
「どうせ、イジメられてたんでしょ。ひょろっちぃし」
「ローズ..初対面の方に失礼ですわ」
「笑いたきゃ笑えよ」
「イジメって!凄い怪我だったじゃないか、誰にやられたんだい」
ジャンが真剣な顔になって少年に聞く。
「1つ上の学年の奴だよ、お兄さん達名前なんて言うの?」
「僕はジャン・バーン、ジャンって呼んで」
「わたくしはスフール・白夜」
「オレはパンプ」
「私はローズ」
「俺はグース・ギャング」
「グースは何でイジメられてんだ?」
パンプが聞くとグースは転がっていた石ころを蹴り飛ばす。
「理由はないよ、アイツらは中学校でも有名な不良で憂さ晴らしで俺をイジメてくるんだ、とんだ迷惑だよ。いつかアイツらはボコボコにしてやりたいぜ」
グースは地面に拳を叩きつける。
「ボコボコじゃそいつらと同じじゃないか、まぁでも抵抗をする力はつけた方がいいね」
「力をつけるってどうするんだよ!」
グースの声には力がこもっていた。
「そうだな、中学生ならこれだな」
ジャンはそう言い、指から魔法で小さい球を作り出す。
「これは?なんだ魔弾かよ」
「結構おすすめの魔法だよ。威力はあまりないけど自分を守るには十分」
ジャンは指から魔弾を飛ばし、近くにあった石ころに当てる。
「初心者魔法じゃないか。もっと凄い魔法を期待したんだけどな」
グースは少しガッカリしている。
「まぁ中学生ならこのぐらいで十分だよ。だいたい中3になるまで発射タイプの魔法は習わないだろ」
「そうだけど..」
ジャンは笑顔でグースの肩をポンと叩く
「分かったよ、やるよ。教えてくれよ」
ジャンはグースと魔弾の練習を始めた。パンプ達その光景をベンチに座りながら眺めていた。
「クソ、ダメだ!意外と難しいな」
「ドンマイ、少しずつ飛距離が伸びてきてるよ」
グースは並べた石ころにビー玉サイズの魔力の塊をデコピンで飛ばすが上手く届かない。
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魔弾は勢いよく石ころを貫く。
「うおっ!威力すごっ!」
「なーんだ簡単そうね。あの子センスないんじゃないの?」
「意外と難しいのよ。わたくしだってあんな安定した魔弾は放てません」
白夜は少し不安定だが、ローズに魔弾を披露して見せた。
「へー!白夜はセンスがないのか?」
「アンタは黙ってなさいよバーカ!」
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白夜を侮辱され怒ったローズはパンプの首を持ち上げてブンブン振り回す。
「なんだよ、ジャンの魔力が高いだけじゃないか」
「慣れれば誰でもできるようになるよ、今やってるのができたら次はコレ」
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「その次がコレ」
続けてジャンは左手から野球ボール程のサイズの魔弾を作り出す。
「よく見る魔弾だ」
「そうだね、そしてこのサイズが作れるようになったらイメージの応用だよ」
ジャンの魔弾は火球に変化した。
「ファイアボール、僕の得意な魔法だよ」
「おお!」
「他にもアクアボールに..サンダーボール、これはちょっと苦手だから威力はかなり落ちるけど。そして、ファイアボールを強化させたフレイムボール。これは10回に1回は作れる。僕は今これを練習してるよ」
ジャンは火球を水の球、電気の球に変化させて再び火球に戻す。
「魔弾が使えるようになったら色々できるようになるって事か!」
「そう!グースの魔力だとサンダーボールが良いと思うよ」
「なんかやる気出てきた!」
それからも2人の練習は続く、グースは魔弾をすぐにマスターする勢いで成長していった。そして、気づけば日が暮れていた。
「よし、最後にこの石を投げるから当ててみてよ」
「ハァ...ハァ..、よし、来い!」
ジャンが石を投げ、グースは飛んでくる石を魔弾で撃ち落とす。
「凄いよ、たった1日でここまでできるようになるなんて、才能あるよ」
ジャンが褒めるとグースは照れながら礼を言う。
「あ、ありがとよ、俺に才能があるなんて言ってくれたのはアンタだけだよ」
「もう日が暮れてしまいましたので帰りましょう、グースさんご自宅までお送りしますわ」
「おう!ありがとう!」
みんなで帰ろうとしたその時、パンプとローズの顔が青ざめ、体を震わせた。
「ジャン!ヤ、ヤバイぞ!ヤバいのが来る!!」
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ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
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Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
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シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
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一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
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日本列島、時震により転移す!
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2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
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