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怒涛の入学編 

第3話 僕らはパートナー

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 僕とパンプは気がつくと見知らぬ場所にいた。
「あれ?ここ何処どこだ?」
「イテテ、龍神様が言ってた試練を受ける部屋とかじゃないか?」
「でもこの場所、部屋っていうより外だぞ。ここにシレンってのがあるんだな」
ジャンはパンプを抱え上げ、辺りを見て驚いた。

「砂漠!?なんで!?」
暑い日差し、砂の感触、間違いなく此処ここは砂漠だ。

「ここで試練を受けるのか?」
「じゃあここで魔獣と戦うのか!オレ魔獣早く見たい!」
「嫌だな...僕まだ、実戦なんてしたこと無いのに..上手く戦えるかな」
「大丈夫、オレに任せろ!オレ強いんだぞ!」
「頼もしいね、パンプは戦いは得意?」
「うーん...分かんない!戦った事ないし!」
「あらら、とりあえず移動するか」
ジャンはパンプを肩に乗せて、広大な砂漠を歩き始めた。

「ブモォォォォ!!」
「なんだ!?」
勇ましい雄叫びが聞こえた瞬間、砂漠の砂が吹き荒れ広いアスファルトの地面が現れた。咲き上がる砂嵐の中から巨大な斧を持った牛の魔獣がいた。

「お前が魔獣か」
「そうだとも!この俺様が魔獣ミノタウロスのアクセル様だ」
ジャンの問いに壁のような巨体を持つ魔獣は答えた。
「やいやい、魔獣さっさとオレとジャンと戦え!」
パンプが魔獣を煽ると突風のように荒い鼻息が飛んできた。
「ブハハハ!赤ん坊が相手か!だが手加減はせん!試練を始める!俺様に傷をつけれたら合格だ。何処からでも掛かってこい!!」

「それじゃいくよ」
ジャンが手をかざすと炎の球が生成される。
「うわぁ!火だ!」
「ファイアボール!」
ジャンは炎の球を魔獣目掛けて投げつける。

 炎の球の着弾と同時に爆発が起きた。
「すごいすごい!ジャンつよーい」
「ふふん!これだけじゃないよ!連射だ!」
更にジャンは無数の火球で追い打ちをかけ、爆風が巻き上げる。

「どうだ」
「かっこいい!なんだか楽勝だったな。オレ何もできなかったけど」
「うわぁ!」
油断をしていると、爆風で上がった煙から勢いよく、巨大な斧が飛んできた。

「ぐっ!」
「ジャン!」
躱しきれなかった!ち、血だ!
ジャンの腹部に傷を負い、軽い出血を起こす。
「なかなかやるじゃねぇか小僧」
魔獣は毛並みすら崩れていなかった。
「ゲッ!?無傷かよ」
「やっぱりジャンよわーい」
「言ってる場合か..くっ..どうするか」
「ガッハッハ!これは試練だ!お前らが力を合わせなきゃ俺様には勝てんぞ」
魔獣の言葉を聞き、2人はハッと思考を切り替えた。

「そうか!パンプ、お前には何ができる?」
「おう、任せろ!」
パンプの両手からキラキラと光が溢れ始めた。

「ブーストジュエル!」
パンプが叫ぶと赤い宝石が作り出され、ジャンの体に入り込んだ。

「うぎっ!?何したのパンプ」
宝石を打ち込まれたジャンの髪の色が赤くなる。
「ジャンもう1回さっきのヤツやって!」
「え、分かった」 
再びジャンは火球を作り出す。火球は先のものに比べ、大きく、そして火力が上がっていた。

「ファイアボール!!」
最初に打ったときとは、比べ物にならない威力のファイアボールが放たれた。
「ブギャャャーー!み、見事!」
まともにファイアボールを食らった魔獣は爆発に呑まれた。

「ハァ..ハァ..これでどうだ!」
満身創痍のジャン、そんなジャンを絶望させるかのように魔獣は立っていた。

「これでもダメか、ごめんパンプ」
「ジャンあれ見てよ」
パンプに言われ、ジャンが顔を上げると傷だらけの魔獣が見えた。

「き、傷..合格..」
そう言い残すとジャンは倒れた。腹部の傷口が広がっていた。
「あー!ジャン!ジャン!しっかりしろ」
「うぅ~もうダメ..死ぬ」

「ガッハッハ、よくやったぞ小僧共、俺様の試練をよく乗り切った」
魔獣は満面の笑みで拍手をしていた。
「お前、魔獣で悪いヤツじゃないのか」
パンプは困惑している。

「俺様が魔獣だと言うのは嘘だ」
「え~!」
「俺様は試験官として、龍神様に作られた精霊だ。おっと、長話をしている場合では無いな。精霊の間まで送る」

僕は安心して、気を失ってしまった。

.
.
.


「あれ?」
「やったー!ジャン起きた!」
目をさますとパンプが嬉しそうに叫んでいた。
「良かった目を覚ましたんですね、ジャン君」
ケンナリ先生がホッとしていた。僕はどのくらい気を失ってたんだ?
「あなたが大怪我をして帰ってきたときは、びっくりしましたよ」

「一応怪我をしていた箇所は回復しておきましたが、まだ痛む所はありますか。」
「大丈夫ですよ、ほら体はもうピンピンですよ」
ジャンは腕をブンブン回す
「イテッ」
「まだ、動いちゃダメですよ、私の魔法は傷を治せても疲れまでは取れませんから」

「お主らの戦いぶり、ミノタウロスの目を通して見させてもらったぞ」
「見ていたのですか、龍神様」
「ああ、見ていた。そして、今もレート、グライド、白夜、ローズの戦いを見ている。」
「では、他の人達はどうなったのですか」
「すでに教室に戻っている。お前達も戻ると良い」
「はい!行こパンプ..どうしたの?」
ジャンが精霊の間を後にしようとしているとパンプは頬を膨らませて龍神を睨んでいた。

「やいやい!お前のせいでジャンが死にかけた!謝れ!」
パンプは龍神の顔にしがみついて暴れ回る。

「パ、パンプ君!やめなさい!」
「よい、下がれケンナリ。赤子にムキになるな」
「べー!」
パンプは龍神に向かって舌を向ける。

「悪かった手荒な事をして謝罪する」
「シャザイなんて要らない!謝れ!」
「パンプ!もういいから!僕の為にありがとう。龍神様、すみません」
「なんでジャンが謝るんだよ!ジャンは悪くないのに」
「良いの、それでは失礼しました!」
ジャンはパンプの口を抑えながら抱える。

「待て、これを」
龍神のが放った光がジャンとパンプの胸を貫いた。
「「!?」」

 2人は状況を理解できずに少し胸の痛みに苦しむ。
「何すんだよ!龍のおじさん!」
「パンプ君!」
「よいケンナリよ、それよりお主ら胸を確認してみよ」

「何だこれ!?石が埋まってる」
ジャンとパンプの胸には同じ形をした石が埋まっていた。
「それは精霊石、その石がお主らの絆をさらに深めてくれるだろう」
「とりあえず、ジャン君、パンプ君試練合格おめでとう。教室に戻ってみんなと待っていてくれ」

「はい、失礼しました」
ジャンはお辞儀をして、精霊の間を後にした。

「なぁジャン!キョウシツってなんだ?どこにあるんだ?おんなじ部屋がいっぱいあって分かんない」
「この部屋、全部が教室だよ」
「えぇー!スゴイ!」
パンプは初めての学園にワクワクしている。

 ジャン達が教室に着くとザル達がそれぞれの精霊達と会話をしていた。
「おう、お前も試練を合格したんだな」
「うん、ザル君も合格したんだね」
「たりめーよ。俺が1番目..と言いたいが4番目の合格者だ」
「ザル君で4番目!?」
「ああ、1番目はウリエラ、2番目がリベラ、3番目がアドロン、そして俺だ」

「オイオイ、オレを忘れてもらっちゃ困るぜ」
「ラート君」
「君はやめろ、ラートで良いぞ」
ザルが説明しているとラートも会話に参加した。

「おう、改めてよろしくなジャン」
「うん、よろしく」
「オレはパンプ、お前強いのか?」
「おっ!お前はジャンのパートナーだな。俺強いよ」
「ウケケ、俺とご主人のペアは最強ですぜ」
ラートの精霊、ボノムも会話に参加した。

「君がボノムだね」
「ウケケ、よろしくお願いしますぜ、ジャンの旦那」
「うん、よろしく..意外とひんやりする」
「俺のボディはカチコチですぜ、ウケケケケ!」
2人は握手する。

「お待ちください、最強は私達でございます」
「君はザル君の...」
「メイデンと申します」
「どうよ、俺の精霊はカッコいいだろ」
「うん、カッコいいね。でもパンプも負けてないよ」
ジャンはパンプを前に掲げる。
「えっへん」
パンプは鼻を高くしている。

「ほう赤子ですか」
「アカゴじゃない!パンプ!龍のおじさんも間違えてた!」
「ウケケ、コイツは賑やかな子ですわ」

 それから少し談話をしているとみんな戻ってきた。
「よし、みんな席に着け」


「試練合格おめでとう。今日は疲れただろうからしっかり休んでくれ、それとパートナーとは仲良くするんだぞ」 
簡易的なHRが終わり、帰宅の準備を始める。

「よし、帰るよパンプ」
「え、精霊界に!?」
「違うよ僕の家」
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