21 / 43
第2章 敏腕プロデューサーと売れっ子アイドル
20 僕だけなんだ
しおりを挟む
リカリカチャンネルはこの1年間で劇的な変化を遂げた。
【リカリカ】がウィーチューバーとして活動を始めたのはおよそ2年前。彼女が高校生になって間もない頃だった。
チャンネル開設当初の名前は《RikaRika Live》としており、美容やゲームなど、自分が興味のあるものをテーマにしながら不定期にライブ配信を行っていた。当時はまだウィーチューバーと呼べるほど本格的な活動はしてなかった。
活動開始から1年が経った頃のチャンネル登録者数は約9000人。まだまだ知る人ぞ知るという感じのしがない女子高生ウィーチューバーだった。
しかし、この頃から彼女のチャンネルは劇的な変化を遂げていく。
正式なチャンネル名を現在の《RikaRika Channel》に変更してから僅か半年の間に、チャンネルは早くも当初の年間目標に掲げていた登録者10万人を突破した。
その後も破竹の勢いは留まることを知らず、9ヶ月後には20万人を突破。この頃からファンの間で〝リカナー〟という、いわゆる推し名が浸透し始めた。ラジオ番組などの聴者を指す〝リスナー〟と【リカリカ】の名前をブレンドして生み出された造語である。
そして心機一転から1年後、チャンネル開設2周年を迎える直前に、チャンネル登録者はついに50万人を超えた。この数字は事務所に所属してない個人のウィーチューバーとしては相当なものだろう。
以上が、今日に至るまでのリカリカチャンネルの大まかな沿革である。
この1年間の彼女の急成長ぶりは、まさに鯉が滝を登る勢いだ。さしずめ彼女の場合は華やかな錦鯉といったところか。
彼女と出会って間もない頃の僕は、まさか【リカリカ】がこれほどの大躍進を遂げるとは思ってなかった。
無論これほどの成功をもたらした要因はいくつも挙げられる。動画のクオリティが高かったとか、ターゲットである同年代の若年層にうまく刺さったとか、益体もないことを言えば単純に運が味方してくれたとか。しかし一番の成功要因は【リカリカ】のアイドルとしての天性の素質と、それを引き出すための企画や演出が上手くマッチしたことだろう。加えるなら、SNSなどを利用した拡散効果が大きく貢献したという点も個人的に譲りたくないところだ。
今や彼女はウィーチューブ界の中でも名の売れた存在となりつつある。まさに名実共に女子高生アイドルウィーチューバーだ。この勢いで成長していければ、もしかすると近いうちに本格的なビジネス案件が舞い込んでくるかもしれない。企業から広告のオファーを受けたり、ウィーチューバーのイベントへの出演を依頼されたり。そうなると個人でのマネジメントは難しくなるから、どこかのウィーチューバー事務所に籍を置くことも視野に入れる必要があるだろう。そこまで行けば【リカリカ】もいよいよ本物のタレントの仲間入りだ。
すごいな、夢はどんどん広がっていく。
栄光へと続く架け橋を、彼女は今まっすぐに駆け上がっている。まさに順風満帆。彼女の顔と名前がお茶の間に浸透する日が来るのも近いかもしれない。
そんな彼女のリアルを知っていることが、なんだか誇らしくなってくる。
——そう、僕だけなんだ。彼女の正体を知っているのは。
世間の人間は他に誰も知らないのだろう。
彼女が都内にある西南高校という学校に通っていることも。
自宅が杉並区の住宅街にあるということも。
本名を緑川エリカということも。
知らないのだ、誰も彼も。僕だけが彼女のすべてを知っている。
なんだか不思議だ。そんなことを考えていると、自分が選ばれし特別な人間のように思えてくる。別に彼女の素性を知っていたところで、僕にとっていかなる利益にもならないのだけど。
でも〝特別〟って言葉の響きには、やっぱりなんかぞくっと来るものがあるんだ。
【リカリカ】がウィーチューバーとして活動を始めたのはおよそ2年前。彼女が高校生になって間もない頃だった。
チャンネル開設当初の名前は《RikaRika Live》としており、美容やゲームなど、自分が興味のあるものをテーマにしながら不定期にライブ配信を行っていた。当時はまだウィーチューバーと呼べるほど本格的な活動はしてなかった。
活動開始から1年が経った頃のチャンネル登録者数は約9000人。まだまだ知る人ぞ知るという感じのしがない女子高生ウィーチューバーだった。
しかし、この頃から彼女のチャンネルは劇的な変化を遂げていく。
正式なチャンネル名を現在の《RikaRika Channel》に変更してから僅か半年の間に、チャンネルは早くも当初の年間目標に掲げていた登録者10万人を突破した。
その後も破竹の勢いは留まることを知らず、9ヶ月後には20万人を突破。この頃からファンの間で〝リカナー〟という、いわゆる推し名が浸透し始めた。ラジオ番組などの聴者を指す〝リスナー〟と【リカリカ】の名前をブレンドして生み出された造語である。
そして心機一転から1年後、チャンネル開設2周年を迎える直前に、チャンネル登録者はついに50万人を超えた。この数字は事務所に所属してない個人のウィーチューバーとしては相当なものだろう。
以上が、今日に至るまでのリカリカチャンネルの大まかな沿革である。
この1年間の彼女の急成長ぶりは、まさに鯉が滝を登る勢いだ。さしずめ彼女の場合は華やかな錦鯉といったところか。
彼女と出会って間もない頃の僕は、まさか【リカリカ】がこれほどの大躍進を遂げるとは思ってなかった。
無論これほどの成功をもたらした要因はいくつも挙げられる。動画のクオリティが高かったとか、ターゲットである同年代の若年層にうまく刺さったとか、益体もないことを言えば単純に運が味方してくれたとか。しかし一番の成功要因は【リカリカ】のアイドルとしての天性の素質と、それを引き出すための企画や演出が上手くマッチしたことだろう。加えるなら、SNSなどを利用した拡散効果が大きく貢献したという点も個人的に譲りたくないところだ。
今や彼女はウィーチューブ界の中でも名の売れた存在となりつつある。まさに名実共に女子高生アイドルウィーチューバーだ。この勢いで成長していければ、もしかすると近いうちに本格的なビジネス案件が舞い込んでくるかもしれない。企業から広告のオファーを受けたり、ウィーチューバーのイベントへの出演を依頼されたり。そうなると個人でのマネジメントは難しくなるから、どこかのウィーチューバー事務所に籍を置くことも視野に入れる必要があるだろう。そこまで行けば【リカリカ】もいよいよ本物のタレントの仲間入りだ。
すごいな、夢はどんどん広がっていく。
栄光へと続く架け橋を、彼女は今まっすぐに駆け上がっている。まさに順風満帆。彼女の顔と名前がお茶の間に浸透する日が来るのも近いかもしれない。
そんな彼女のリアルを知っていることが、なんだか誇らしくなってくる。
——そう、僕だけなんだ。彼女の正体を知っているのは。
世間の人間は他に誰も知らないのだろう。
彼女が都内にある西南高校という学校に通っていることも。
自宅が杉並区の住宅街にあるということも。
本名を緑川エリカということも。
知らないのだ、誰も彼も。僕だけが彼女のすべてを知っている。
なんだか不思議だ。そんなことを考えていると、自分が選ばれし特別な人間のように思えてくる。別に彼女の素性を知っていたところで、僕にとっていかなる利益にもならないのだけど。
でも〝特別〟って言葉の響きには、やっぱりなんかぞくっと来るものがあるんだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
私の話を聞いて頂けませんか?
鈴音いりす
青春
風見優也は、小学校卒業と同時に誰にも言わずに美風町を去った。それから何の連絡もせずに過ごしてきた俺だけど、美風町に戻ることになった。
幼馴染や姉は俺のことを覚えてくれているのか、嫌われていないか……不安なことを考えればキリがないけれど、もう引き返すことは出来ない。
そんなことを思いながら、美風町へ行くバスに乗り込んだ。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
瑠璃色たまご 短編集
佑佳
青春
企画に寄稿した作品がきっかけで、機に乗じて短編を作り続けていたら、短編集になってきました。
時系列順になってます。
ちょっとえっちもあります。
蟬時雨あさぎさん主催『第一回ゆるプロット交換会』『第二回ゆるプロット交換会』参加作品です。南雲 皋さま、企画主・蟬時雨あさぎさまのゆるプロットを元に執筆した作品たちです。
『ゆるプロット交換会』について詳しくは以下リンク▽から。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860507898558
©️佑佳 2016-2023
あまやどり
奈那美
青春
さだまさしさんの超名曲。
彼氏さんの視点からの物語にしてみました。
ただ…あの曲の世界観とは違う部分があると思います。
イメージを壊したくない方にはお勧めできないかもです。
曲そのものの時代(昭和!)に即しているので、今の時代とは合わない部分があるとは思いますが、ご了承ください。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
僕らの10パーセントは無限大
華子
青春
10%の確率でしか未来を生きられない少女と
過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと
やたらとポジティブなホームレス
「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」
「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」
もし、あたなら。
10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と
90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。
そのどちらを信じますか。
***
心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。
追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。
幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる