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 ユウヤ再び

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アパートの周辺に人気ひとけはほとんどなかった。それは車通りに出てもあまり変わりない。


ときどきすれ違う人は、スーツ姿の男性や、買い忘れた食材を手に家路を急いでいるように見える中年の女性だったりした。通学路になっていないせいもあって、あたしと同い年だと思われる子はいなかった。


「塾に通う子がいるにしても、いまは暖かく明るい教室にいるのだろう。家にいる子だって同じだ」


あたしは一抹の寂しさを覚えた。


客の多いほうが長くとどまれるので、あたしは近所のコンビニエンスストアではなく、駅近くのコンビニエンスストアまで歩いた。店に入ると、あたしはファッション誌を手に取った。縁がないと思って眺めているので、さほど熱心に読み込んだりはしなかった。


パラパラとめくっていると、ふと隣の若い女性が目に入った。シルバーのチェック柄のコートに白のタートルニット、黒のスウェードのブーツにお洒落な鞄を持っていた。仕事帰りだと思われるのに、疲れた顔などしていなくて、隙なく化粧されていた。


さっきまで気にならなかった貧素な自分の服装が、店内の明るさのなかではっきりと浮かびあがり、あたしは急に恥ずかしくなった。


改めて店内を注意して見てみると、重たい鞄を肩にさげ、そのせいで着崩れしている男性のスーツまでもが着映えして見えた。


あたしはいたたまれなくなった。雑誌を閉じると、足早に店を出た。


それまで、服装に無頓着とまでは言えないにしても、それほど気にすることはなかった。普段は制服が主であったし、私服であっても、そこは子ども同士、明確な差はなかったから。


スーツ姿の大人を見ても、あたしは彼らをこれから進むであろう世界に住む人たちとして見ていた。比べる人たちではなかった。


ところが、このときのあたしは学校に通っておらず、意識のうえでは子どもの世界から追い出されていた。子どもの世界にいないのなら、次の世界に進まなければならないけれども、服一着も自力で買えない。


子どもの世界にもいられず、大人の世界に入ることもできない。つまり、これがあたしの実情なのだと自覚させられた。


「自分はどこにも属していない」


こんな思いが突然のしかかり、あたしの肩を重くした。


あたしは書店に行くつもりだったけれども、行かないことにした。あてもなく街を歩いた。


すれ違う人の視線を感じた。男性であっても女性であっても、その視線はあたしの胸元に投げられることが多かった。それは以前からのことだった。あたしはそれを卑猥なものに感じることがあった。


しかし、このとき、あたしはそれを憐憫れんびんの情として受け取った。


「哀れだ」


そう思って歩いていると、下腹部に違和感を覚えた。痛みもある。生理だろう。


近くに知っているスーパーがあった。あたしはそこに入った。
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