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 ユウヤ再び

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ゆきちゃんとはときどきEメールのやり取りをした。内容は、クラスメイト、テレビタレントに関する噂話や、食べ物の話、それにゆきちゃんのクラブ活動についての話だったように思う。何度か話題にのぼったのが、あたしが家を出ている理由について。

ゆきちゃんは母にも訊いているだろう。そのうえであたしに訊くということは、母は何も答えていないということだ。

あたしは答えないつもりでいた。まずは母が向き合う問題だと思っていたからだ。あたしは曖昧な返事をしておいた。

ほとんどの場合、あたしはユウヤの部屋でEメールを打っていた。携帯電話に向き合って指をせわしなく動かすあたしの姿を見ていたのだろう、ユウヤはあたしに言った。

「誰とメールしてんの?」

妹だと、あたしは答えた。

すると、ユウヤは矢継ぎ早に質問をした。

「歳は? 名前は? 顔は? 怜佳に似てる? 体形は? 彼氏はいる?」

ユウヤの目は興味に溢れていた。それを見て、あたしは警戒心を持った。連れておいでよ、などと言われると、返事に困るからだ。

あたしは、ゆきちゃんの歳と名前を答え、テニスをやっていて、男子には興味がないみたいだと嘘を言った。さらに、ユウヤの興味を削ぐたに、あたしと違ってお転婆てんばで、男女問わずよく喧嘩をする。ときには取っ組み合いだってする、とも言った。

「あたしは妹とは対照的。あたしの子どものころは……」

あたしは自分の話にすり替えた。ユウヤは少し乗ってきた。けれども、わずかに話しただけで、すぐにゆきちゃんの身のうえに話を戻してきた。

「で、妹は怜佳に似てるの? きょうだいだもんな、似てるか」

ユウヤはさも世間話をしているかのような口調で言った。しかし、その表情にはオンナに対する興味の陰が見え隠れしていた。

あたしは警戒心を解けなかった。

「似ているかどうか、ちょっと分かんない。でも、全然モテないから、ブスなんじゃないかな。ブスだけど、あたしにとっては世界一可愛い妹」

ユウヤはあたしの目をじっと見つめた。探りを入れているようだった。

「写真ある? ブスとか言ってるけど、怜佳に似て美人なんじゃないの」

ある、と反射的に答えてしまいそうになった。

「写真……。写真はないよ」

ユウヤの表情は緩んだ。ふーん、と言って、横を向き、テレビを見始めた。

どうだろうかと、あたしは思った。あっさりしすぎているように見えた。噓が功を奏したのか、手応えがなく、よく分からなかった。

あたしは、念のため、携帯電話からゆきちゃんの写真をすべて削除することにした。キーを操作しているとき、後ろ髪を引かれる思いだった。
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