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【42話】どうやらゴブリンの上位種が潜んでいるようです
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洞窟の近くまで来た二人は、足を止める。
ロイルが【魔眼】で魔力の流れを視ることで、魔物の位置と数を把握するためだ。
その結果、分かったことが二つ。
洞窟内に潜む魔物の数が二十五体であることと、そのうちの三体の魔力がゴブリンのそれよりも明らかに大きいこと。
「この魔力量……ゴブリンよりも強い魔物と戦うことになるかも」
「ゴブリンよりも?」
「うん。恐らくだけど……上位種が三体いる」
ゴブリンの魔力量は五マナ前後と言われているが、その中でも更に力を付けたものは上位種と呼ばれるようになる。
たとえば、ゴブリンファイター。格闘技術に特化したゴブリンの上位種には、ファイターの名が付けられる。魔力量は二十から三十マナ程度だ。以前、二人が狩ったウォーウルフの魔力量が十マナ前後なので、その倍以上はあるということになる。
魔法の類を使うことはないが、代わりに身体強化スキルで一時的な底上げをすることがあるので、戦闘時は注意しなければならない。もし、スキルを使われてしまった場合、ゴブリンファイターの魔力量は銀等級にも届きうる。
故に、ゴブリンファイターと対峙した際は、スキルを使わせる前に倒すのが最善の策と言えるのだが、そんなに上手く事が運ぶわけもなく、冒険者たちは苦戦を強いられているのが現状だ。
そして、ゴブリンファイターと同じ格の魔物として、ゴブリンメイジが存在する。
ゴブリンメイジはその名の通り、魔法スキルに特化したゴブリンだ。
攻撃魔法を使うことがほとんどで、支援系のスキルは滅多に使用しない。だが、戦闘では何が起こるか分からないので、油断は禁物だ。攻撃魔法自体はノアも使える【ファイアーボール】を唱えることが多く、仲間のゴブリンを囮に攻撃してくることもあるらしい。
通常のゴブリンよりも身体能力は低く、また魔力量も十マナ前後とゴブリンファイターに比べると半分以下なので、こちらも魔法スキルを使わせる前に倒しておきたいところだ。
当然のことながら、ゴブリンの上位種以外が潜んでいる場合も考えられる。
オークやトロルといった怪力系の魔物が、ゴブリンを手足として利用している場合もあるので、実際には洞窟内に入って遭遇してみるまで、何が出るかは分からない。
たとえ、ロイルの【魔眼】で魔力の流れを視ることが出来るとはいっても、それが何の魔物なのかを知るすべはないから仕方ない。
「勝てるかな……わたしたちで」
「今のノアに勝てる人って、ほとんどいないと思うよ?」
「え、そんなに……?」
ただ、二人は強い。
魔力量がゼロだったノアは、今では五百マナに達している。油断さえしなければ、複数の上位種が相手でも後れを取ることはないだろう。
上位種との戦闘経験の少なさが弱点ではあるが、それはロイルが助けてくれるので問題はない。
「僕が保証するよ。だからささっと倒して、あの人たちの安否を確認して、王都に戻ろう」
油断しているわけではない。しかしそれでも、ロイルのいつも通りの態度が、ノアの緊張を解してくれる。だから、ノアは力強く返事をする。
「うん……行こう!」
そして二人は、ゴブリンが巣食う洞窟へと足を踏み入れるのだった。
ロイルが【魔眼】で魔力の流れを視ることで、魔物の位置と数を把握するためだ。
その結果、分かったことが二つ。
洞窟内に潜む魔物の数が二十五体であることと、そのうちの三体の魔力がゴブリンのそれよりも明らかに大きいこと。
「この魔力量……ゴブリンよりも強い魔物と戦うことになるかも」
「ゴブリンよりも?」
「うん。恐らくだけど……上位種が三体いる」
ゴブリンの魔力量は五マナ前後と言われているが、その中でも更に力を付けたものは上位種と呼ばれるようになる。
たとえば、ゴブリンファイター。格闘技術に特化したゴブリンの上位種には、ファイターの名が付けられる。魔力量は二十から三十マナ程度だ。以前、二人が狩ったウォーウルフの魔力量が十マナ前後なので、その倍以上はあるということになる。
魔法の類を使うことはないが、代わりに身体強化スキルで一時的な底上げをすることがあるので、戦闘時は注意しなければならない。もし、スキルを使われてしまった場合、ゴブリンファイターの魔力量は銀等級にも届きうる。
故に、ゴブリンファイターと対峙した際は、スキルを使わせる前に倒すのが最善の策と言えるのだが、そんなに上手く事が運ぶわけもなく、冒険者たちは苦戦を強いられているのが現状だ。
そして、ゴブリンファイターと同じ格の魔物として、ゴブリンメイジが存在する。
ゴブリンメイジはその名の通り、魔法スキルに特化したゴブリンだ。
攻撃魔法を使うことがほとんどで、支援系のスキルは滅多に使用しない。だが、戦闘では何が起こるか分からないので、油断は禁物だ。攻撃魔法自体はノアも使える【ファイアーボール】を唱えることが多く、仲間のゴブリンを囮に攻撃してくることもあるらしい。
通常のゴブリンよりも身体能力は低く、また魔力量も十マナ前後とゴブリンファイターに比べると半分以下なので、こちらも魔法スキルを使わせる前に倒しておきたいところだ。
当然のことながら、ゴブリンの上位種以外が潜んでいる場合も考えられる。
オークやトロルといった怪力系の魔物が、ゴブリンを手足として利用している場合もあるので、実際には洞窟内に入って遭遇してみるまで、何が出るかは分からない。
たとえ、ロイルの【魔眼】で魔力の流れを視ることが出来るとはいっても、それが何の魔物なのかを知るすべはないから仕方ない。
「勝てるかな……わたしたちで」
「今のノアに勝てる人って、ほとんどいないと思うよ?」
「え、そんなに……?」
ただ、二人は強い。
魔力量がゼロだったノアは、今では五百マナに達している。油断さえしなければ、複数の上位種が相手でも後れを取ることはないだろう。
上位種との戦闘経験の少なさが弱点ではあるが、それはロイルが助けてくれるので問題はない。
「僕が保証するよ。だからささっと倒して、あの人たちの安否を確認して、王都に戻ろう」
油断しているわけではない。しかしそれでも、ロイルのいつも通りの態度が、ノアの緊張を解してくれる。だから、ノアは力強く返事をする。
「うん……行こう!」
そして二人は、ゴブリンが巣食う洞窟へと足を踏み入れるのだった。
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