魔力ゼロと判明した途端、婚約破棄されて両親から勘当を言い渡されました。でも実は世界最高レベルの魔力総量だったみたいです

ひじり

文字の大きさ
上 下
33 / 42

【33話】ロイルの冒険者としての腕前を拝見することになりました

しおりを挟む
「さあ、これで足元も天井も、ちょっと先の暗闇まで、全部見通せるよ」

 特に気にした風もなく、ロイルは灯りをもたらす魔道具をノアに渡す。
 洞窟内を先行するのはロイルだが、自分よりもノアを優先させているのが分かる。

「ロイルは大丈夫なの?」
「僕にはこれがあるからね」

 ノアの問いに、ロイルは自分の瞳を指さし微笑む。
 その目は【魔眼】によって白に染まっていた。

「【魔眼】を使えば、全ての魔力の流れを把握することが出来る。つまり、不意打ちは絶対に喰らわないってこと」

 暗闇の奥や岩陰に潜み、冒険者の様子を窺う魔物が居たとしても、その魔物たちは体内に魔石を持っており、魔力によって生きている。つまり、【魔眼】で魔力の流れを読み取り、どこにいるのか把握することが可能だ。
 危険な場所に足を踏み入れることなく、安全にロックアントを倒せるのだ。

「……止まって。少し離れた場所に魔物を見つけた」

 躊躇せずに洞窟内を進むロイルの背を追いかけるノアは、その言葉に立ち止まる。
 どうやら獲物を見つけたらしい。

「灯りを塞いで」
「うん」

 言われたとおりに、ノアは魔道具の蓋をする。
 すると先ほどまで明るかった洞窟内は真っ暗闇へと姿を変える。だが、ロイルにとってこの状況は何の問題もない。
 周辺にいる魔物の数は一体のみ。【魔眼】を欺くことは決して出来ない。

 灯りを消し、敵が近づいていることを悟らせず、ノアをその場に待機させた後、ロイルはゆっくりと慎重に暗闇の中を進む。そして、

「――ッ!!」

 何かが弾ける音が、洞窟内に響いた。

「……ノア、灯りを」
「ッ、うん!」

 遠くからロイルの声を耳にして、ノアは再度魔道具の蓋を外し、洞窟内に灯りを生み出す。
 それから急いでロイルの許へと駆け寄る。

「これで討伐完了だね」

 ロイルは、討伐対象であるロックアントの首を手に持っていた。
 足元には、ぐちゃぐちゃになった胴体部がある。

「どうやって倒したの?」
「うーん……引かない?」
「え? 引くようなことしたの?」
「普通の戦い方じゃないからなあ……」

 暗闇での攻防だったので、ノアはロイルがどのように戦い、ロックアントを倒したのか見ていない。
 胴体部がぐちゃぐちゃになっているが、一体どうすればこのような状態にすることが出来るのか。

 ロイルが持つ得物は、短剣のみ。盾は持たず、動きやすさに重きを置いていた。
 しかしその得物だけでは、短時間でロックアントの胴体部を壊すに至らないだろう。

「ロイルが大丈夫なら、教えてほしいな」

 二人は背を任せ合う仲間だ。教えてくれるのであれば、その全てを受け入れるつもりだ。
 だからノアは訊ねた。

「……【魔眼】で弄ったんだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。

克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。 「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。 コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後

柚木ゆず
恋愛
 ※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。  聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。  ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。  そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。  ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

処理中です...