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【30話】魔力量を増やしていたら、変な気分になってきました
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談話室の一角に陣取り、ノアはロイルに手を握られていた。
傍から見れば、いちゃついているようにも見えるかもしれない。だがこれは、二人にとって必要不可欠な行為である。
「それじゃあ、今日は少しずつ起こすよ」
「……うん、お願い」
初日は魔力量をゼロから十マナまで増やした。
そして昨日、二日目は、そこから一気に増やそうとして、二十マナまで到達したところで中断してしまった。
だがこれによって、一度に増やせる魔力量をある程度は把握することが出来るようになった、とロイルは考えている。
「【魔眼】発動……」
ロイルの目が白く染まる。
誰にも見えない位置だからか、ロイルは【隠蔽】を使わなかったのかもしれない。最初はそう思った。だが、
「【魔眼】を使う時、別のスキル……つまり【隠蔽】を同時に発動するとさ、自分の魔力の流れだったりも意識しちゃって、上手く掴めなかったんだと思う。だから今日は、このままやってみるよ」
ノアの他に、ロイルは【魔眼】を使って誰かの魔力を眠りから呼び覚ましたことは一度しかない。それは自分自身である。
勿論その際に【隠蔽】を使用することはなく、【魔眼】によって自分の魔力の流れを理解した上で、強引に引っ張り出したのだ。
ただその際、副作用を感じることはなかったので、ノアに対しても初回から気にせず増やそうと試みた。
しかしノアは自分とは違うし、生まれ持った魔力総量も異なる。
だからこそ、ロイルはノアに合ったやり方を試すことを決めた。
「一マナずつ、ゆっくりと……するよ?」
ぞわり、とした。
魔力の流れを掴んだロイルが、ノアの中で眠っている魔力を一マナだけ起こしてあげたのだ。それも強引にではなく、そっと、優しく語り掛けるかのように……。
「ノア、いい?」
「うん……昨日と比べると全然きつくない」
「そう? それならもう一つ」
大丈夫と知り、ロイルはまた一つ、魔力を呼び起こす。これでノアが使える魔力量は二十二マナへと増えた。その数値は、既にエリーザを超えている。
「ロイル、この感じなら何度でもいけそう……だから、もっとして」
「慌てないでも、午前中はずっとしてあげるから」
「……ん、んっ、ありがと、ロイル」
一つ、一つと、魔力量が上がっていく。
その度にゾクゾクと体が震えるが、我慢出来ないものではない。
むしろ、もっと欲しい、もっともっとして欲しいと思ってしまうほどだ。
「ノア」
「……ぁ、……うん?」
「今、凄くいい顔してる」
「ふぁ……っ」
そう言われて、ノアは自分が目をうつろにさせ、口を半開きの状態にしていることに気付いた。
心ここにあらずといった様子であり、我に返ったノアは、恥ずかしそうに口を閉じるが、けれどもまた流れてくる。眠っていたはずの魔力がゆっくりと目覚め、自分の身体の一部となる感覚に震えてしまう。
「う、うぅ……ロイルぅ、これ……くせになるかも……」
「なっていいんだ。じゃないと、魔力量を増やせないんだからさ」
「ううう……いじわる」
意地悪なロイルに対し、ノアは赤くなった顔を隠すのに必死だった。
傍から見れば、いちゃついているようにも見えるかもしれない。だがこれは、二人にとって必要不可欠な行為である。
「それじゃあ、今日は少しずつ起こすよ」
「……うん、お願い」
初日は魔力量をゼロから十マナまで増やした。
そして昨日、二日目は、そこから一気に増やそうとして、二十マナまで到達したところで中断してしまった。
だがこれによって、一度に増やせる魔力量をある程度は把握することが出来るようになった、とロイルは考えている。
「【魔眼】発動……」
ロイルの目が白く染まる。
誰にも見えない位置だからか、ロイルは【隠蔽】を使わなかったのかもしれない。最初はそう思った。だが、
「【魔眼】を使う時、別のスキル……つまり【隠蔽】を同時に発動するとさ、自分の魔力の流れだったりも意識しちゃって、上手く掴めなかったんだと思う。だから今日は、このままやってみるよ」
ノアの他に、ロイルは【魔眼】を使って誰かの魔力を眠りから呼び覚ましたことは一度しかない。それは自分自身である。
勿論その際に【隠蔽】を使用することはなく、【魔眼】によって自分の魔力の流れを理解した上で、強引に引っ張り出したのだ。
ただその際、副作用を感じることはなかったので、ノアに対しても初回から気にせず増やそうと試みた。
しかしノアは自分とは違うし、生まれ持った魔力総量も異なる。
だからこそ、ロイルはノアに合ったやり方を試すことを決めた。
「一マナずつ、ゆっくりと……するよ?」
ぞわり、とした。
魔力の流れを掴んだロイルが、ノアの中で眠っている魔力を一マナだけ起こしてあげたのだ。それも強引にではなく、そっと、優しく語り掛けるかのように……。
「ノア、いい?」
「うん……昨日と比べると全然きつくない」
「そう? それならもう一つ」
大丈夫と知り、ロイルはまた一つ、魔力を呼び起こす。これでノアが使える魔力量は二十二マナへと増えた。その数値は、既にエリーザを超えている。
「ロイル、この感じなら何度でもいけそう……だから、もっとして」
「慌てないでも、午前中はずっとしてあげるから」
「……ん、んっ、ありがと、ロイル」
一つ、一つと、魔力量が上がっていく。
その度にゾクゾクと体が震えるが、我慢出来ないものではない。
むしろ、もっと欲しい、もっともっとして欲しいと思ってしまうほどだ。
「ノア」
「……ぁ、……うん?」
「今、凄くいい顔してる」
「ふぁ……っ」
そう言われて、ノアは自分が目をうつろにさせ、口を半開きの状態にしていることに気付いた。
心ここにあらずといった様子であり、我に返ったノアは、恥ずかしそうに口を閉じるが、けれどもまた流れてくる。眠っていたはずの魔力がゆっくりと目覚め、自分の身体の一部となる感覚に震えてしまう。
「う、うぅ……ロイルぅ、これ……くせになるかも……」
「なっていいんだ。じゃないと、魔力量を増やせないんだからさ」
「ううう……いじわる」
意地悪なロイルに対し、ノアは赤くなった顔を隠すのに必死だった。
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