魔力ゼロと判明した途端、婚約破棄されて両親から勘当を言い渡されました。でも実は世界最高レベルの魔力総量だったみたいです

ひじり

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【29話】どうやら見抜かれてしまったようです

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「あっ、おはようノア。起きたんだ?」

 宿部屋の扉が開く。
 どうやらロイルは、早々に起床し外に出ていたようだ。

「……お、おは、よう」
「? まだ眠たい? 二度寝する?」
「しっ、しない! しないから!」

 自分の許からいなくなってしまったのかと焦り、それが違っていたことに胸をなでおろす。
 この二日間、ノアはロイルと行動を共にしていたので、傍にいないと分かり不安になってしまったのだ。

「そう? それならいいけど……朝食は入る?」
「うん、大丈夫」

 ロイルは、ボドとエリーザとは違う。
 自分に荷物持ちなんてさせないし、何も言わずに離れて行くようなこともない。
 だがそれでも、過去の経験から不安になるのは仕方のないことだ。

 ここまで考えて、ノアはあらためて実感する。
 出会ってからまだ二日間。この僅かな時間で、ロイルのことを信頼し切るほど依存しているということに。

「ノア、心配しなくても僕はいなくならないよ」
「……どうしてそんなに勘が鋭いの」

 しかしロイルは、ノアの不安をすぐに見抜いてしまったようだ。
 優しく笑いかけ、ロイルはベッドの端に腰掛ける。

「ノアは表情に出やすいからなあ。ころころ変わるから、見ていて全然飽きないし」
「うっ、やっぱりロイルは意地悪……」
「ごめんごめん。今みたいな表情もいいけど、ノアは笑ってる顔が好きだな」
「ッ」

 可愛い、と面と向かって言われてしまい、ノアは顔を背けた。堂々と言い切れるのが、ロイルのいいところでもあり、逆に悪いところでもある。
 余りの恥ずかしさに、ノアはこの場から今すぐ逃げ出してしまいたかった。

 だが、そんなことはしない。
 恥ずかしさよりも嬉しさの方が圧倒的に勝っているから。

 もっと、この時間が続けばいいのに。
 そんな甘いことを考えてしまうのは、やはり意識せずにはいられないからだろうか。

「も、もう……早く行こう!」
「え? でも着替えは? それに顔洗ったり……」
「するから!」

 慌てて支度を済ませ、ノアは自らロイルの手を引っ張り部屋を出る。これも照れ隠しだ。
 まずは屋台で朝食を買い、ギルドの談話室で食べよう。それから今日の計画を立てる。
 午前中は魔力量の底上げを再び試してみて、午後は新しいクエストを受注だ。
 人気のクエストはすぐに無くなってしまうので、魔力を眠りから起こし次第、クエスト掲示板を確認する必要があるだろう。

 色々と、すべきことがある。だが同時に、時間もたっぷりある。
 故に、その一つ一つをロイルと二人で消化していこう。ノアはそう思うのであった。
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